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第二十七話 ゴブリンは臭いです


 「ゴーゴーゴー!!」


 隊長であるサッシュさんの号令を機に、選りすぐりの3チームの前衛総勢9人が8匹いるゴブリンに突撃。

 

 すぐに相手に気取られることになるが時すでに遅し。

 穴の入り口にこれ見よがしに置いてある警報用の呼び鈴を鳴らされることもなく、迅速に首を刈り取り息の根を止めていく。


 「よっしゃっ」


 作戦が上手くいったことに少し安堵する。


 まぁ、エニグマさん一人でさえゴブリン6匹を相手するのには造作もないのだ。

 いくら殲滅の速さを上げたとて、オーバーキルだったと言っても差し支えないだろう。


 「ほら、いくよ」


 殿で精鋭チームのカバーについていたサッシュさんが正面に注意を向けつつも片手を上げ、『こっちに来い』とハンドサインを送って来る。


 手筈通りここからは俺達も参加だ。

 前にいたナスティーさんに急き立てられ、ぞろぞろと茂みから出てくる冒険者に続き穴を取り囲んでいく。


 穴は上部が大きく膨らんで丘のようになっているため、そこまで中が急勾配になっているということは無かった。

 サッシュさんはポケットから魔石を取り出し、1か所に固めるようにして穴の玄関口にばら撒く。


 「よし、火種の準備は完了した。火属性と風属性の魔法師は前へ。タンクは後ろに控えてろ」


 彼のコールに従い、エニグマさんをはじめとした魔法部隊が魔石に勢いよく火をつけ、出入り口はまるで火事になったかのような体を成す。


 そして、今度は燃焼によって多量に出てくる黒い色の煙をさらに魔法によってどんどん奥に送り込んでいく。

 いくら魔物といえど、空気を失いスチームされたら死滅するだろう。


 惨いが仕方がない。

 こいつ等は人に仇名す害虫だからだ。

 放っておくとゴキブリ並みの生命力で取り返しのつかないことになるまで繁殖することで有名である。

 早め早めの処分が必要なのである。


 これで後はお料理よろしく、中が煮たつまで待つだけである。

 そうされないために内部のゴブリンは死に物狂いで外の魔法使いに対して歯向かってくるかもしれないが。


 ってあれ?


 「ゴブリンが出てくる気配がないな…」


 エニグマさんが私感を述べる。

 他の、今のところ特にやることがないタンクなどの前衛連中もこのおかしさに首をかしげているようだ。


 「あーそうっすね。でもいいことじゃないんですか?」


 「にしてもだろう?」

 

 人間でも建物のエントランスが燃えていて、体に悪そうな煙が入って来たら誰だって避難しようとするだろう。



 入り口が一つしかなければ尚更に…。


 

 嫌な予感がする。


 暫くしてホールの周り、森の至る所で煙が上がる。

 その色彩はここから送り込んでいる色と同じで黒く濁り切っていた。


 「これはまずいぞ。作戦を変更しなければ…。まさか入口がこんなに無数にあったとは」


 「どうするんですか?」


 「恐らく巣は漏斗状になっているに違いない。これだけ煙を手前で逃がされると、奥まで煙がいってない可能性が高い。魔石の残数もあることだし、一時撤退かもしくは…」


 サッシュさんと言葉を交わしていると、突如左端の方で女性の悲鳴が上がる。


 「きゃぁぁぁああああ!!!」


 「何!?」


 「様子を確認しに行こう。君たちは陣形を崩さないでおいて」


 サッシュさんが向こうへ行こうとするのを俺達の前方から振り向いたガビノさんが手を制して止める。


 「どうやらその余裕はなさそうだぜ。ほら」


 腰を落として構えつつ、顎をしゃくり上げ俺達の視線を後ろに促す。

 魔法を使っている者も含めて後方を振り返ると、パーティーの僅かに手前、草むらから身を乗り出しこちらを窺う緑色の何某が複数。


 手には石製だろうか?

 刃先が鋭いナイフが握られている。


 観念したのかこちらの平坦地に出てくる。

 ガット領に移動するときに討伐した奴同様、腰蓑一枚の変質者スタイルで出て来たソイツ、ゴブリンはその素足をペタペタと鳴らし、俺達の真ん前に立つ。


 それを皮切りに周囲の至る所から魔物の気配が。

 どこもかしこも黄色く光る目・目・目。


 森とは言え、光が入り比較的視界が開けていたのに一体なぜここまで取り巻かれたのか。

 また接近されるまで気付かなかったのか。


 恐らく森で生きる彼らにはこのような自らの存在を殺す技術というのは自然と身についているものなのだろう。

 現に歩いてきたコイツの足音は注意して聞かなければこぼれてしまうほどに小さく、環境音に溶け込んでいるように感じた。


 「囲まれているみてぇだが?」


 「あぁ、どうするか…」


 恐らく向こうの叫喚も油断している所、こいつ等に後ろから奇襲を受けたことによって上がったものなのだろう。

 周囲360度すべての方角からゴブリンが際限なしに湧いてくる。


 一体どこまで出てくるのか?

 果たしてこの人数ですべて討伐できるのだろうか?


 「一旦魔法の行使は辞めよう。最悪戦闘も覚悟しておかないとな」


 「もうみんな魔法は使ってないわよ。それにどちらにしろ戦闘はするでしょ?」


 「そうだったな…」


 エニグマさん達魔法師組が前衛組に合流してくる。

 他グループも一時中断、指示を受けずとも独自の判断で陣形を再編しているようだ。


 その間にも未だに増え続けているゴブリン共。

 それに呼応するように段々と生活圏を狭めるが如く、俺達が陣取る半円も心なしかジリジリとコンパクトになりつつあるように感じる。


 そして双方痺れを切らすのではないか?

 そう思われたその時、草むらからやけに装飾を施した、如何にも『私はこいつ等の親玉です』と言わんばかりのゴブリンが現れる。


 他のゴブリンより少し背の高いソイツを通すようにしてゴブリンの群れが割れ、やがては最前線中央サッシュさんの真ん前で立ち止まる。


 わざわざここまで何しに来たんだ?

 まさかこれから戦う敵に啖呵を切りにきたんじゃあるまいな?


 「おいどうするよ隊長さん?やっちまうか?皆お前の判断を目で仰いでるぞ?」


 「分かってる」


 「聞け!これはイレギュラーだ!何かあるかもしれない。向こうから仕掛けてくるまでは静観していろ!!」


 その言葉を契機にザワザワとしていた場が静まり返る。

 

 それを良しとしたのか大仰に呼称、長老ゴブリンが肩で風を切って一歩前に出ると、手をグーにして咳払いをする。


 さっきから思っていたがやけにコイツ人間味があるな…。


 満を持して、このゴブリンが何かする。

 この場の誰しもがそう思ったことだろう矢先。



 ヒュンという風切り音が…。


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