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第二十五話 なぜか緊急クエストという響きに人は心を揺り動かされます

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 「『緊急クエスト』?」


 翌日、俺達はギルドの二階、依頼が張り出されているフロアにいた。

 ギルド入口左手の階段を上って正面、全ての空間がぶち抜かれた大きな一部屋の三面それぞれに、掲示板として難易度順でクエストが掲載されているのだ。

 まぁそこまでぎっしり掲示物で埋まっているわけではないのだが。


 依頼主は商会や領主、あるいは地主などの富裕層や一般層までも含まれるのだろう。

 ありとあらゆる人が、ギルドを通して素材の採取や魔物の討伐を依頼している。


 そんなフロアのど真ん中、クエストを受けるためのカウンターがあるのだが、受付を邪魔するかの如く一面の立て看板が備え付けられていた。


 そしてその一番上に書かれていたのがこの文字列。

 何やら急いで人員を募集したい依頼があるらしいが…。

 

 「どうやら、ゴブリンの巣穴討伐のレイド依頼らしいな。」


 「そういえば、オースに来る時にゴブリン討伐したっすね。あの時の耳ってどうしたんすか?」


 「まだ持ってるが?」


 そう言うと、腰に着けていた巾着袋を目の高さまで持ってくる。


 「うぇ、ばっちい…」


 「だから、そういう考え方は捨てろと言ってるだろうに…。確かに壁の内側でゴブリンを見かけたのはおかしな話だったな。大方数日前から街道沿いでゴブリンを発見した事例があり、壁周りと神淵の森浅層付近の調査を行った結果、巣を発見したのだろう」


 「でー、どうします?これから直ぐに編成隊が組まれて出発っぽいっすけど」


 「無論受けよう。緊急クエストは普段より割高で討伐報酬がもらえる。それにレイドだから私達よりベテランの冒険者が多くいることだろう。安心して狩りをすることが出来るはずだ。」


 俺達は中央の受付に並び、係の人に緊急クエストについて受諾する前提で聞いてみることにした。


 「緊急クエストを受けたいのだが?」

 

 「はいはーい緊急クエストですね~。失礼ですが、ギルドカードの提出と冒険者ランクをお聞かせ願えますかー?」


 茶色の髪を肩まで下ろしたその女性は快活さの中にもしたたかさを含めた笑みを振る舞い、荒くれ者達の応対をしていた。


 「これがギルドカードだ。私達のランクはFランクなんだが…。」


 「え、Fランクですか?ゴブリン討伐は魔物討伐に当たりますし、神淵の森に入るので、Dか少なくともEランクは欲しいところなんですけど」


 「そうなのか…」


 エニグマさんは眉をへの字にし、悲しそうな表情を浮かべる。

 

 「あれ…、でも冒険者さん方!ギルドカードのランクがEランクになってますよ?」


 彼女はエニグマさんと俺が提示したギルドカードを戻し、ランクのところに指を差している。

 あ、ホントだ。

 なんで今まで気が付かなかったんだろう。


 「ん?私達はつい昨日ここで登録したばかりなんだが…?学園の生徒はFランクスタートだと聞き及んでいるぞ?」


 本来冒険者はギルドカードを貰うとGランクから始めることになるらしい。

 Gランクは町の中でお手伝いやお使いクエストのみを受けることが出来る。

 まぁそういう依頼が一定数舞い込むという側面もあるのだが、とどのつまりは下積みを重ねろということだ。


 そこからFランクになり、動物を狩ることが解禁される。

 この近辺でいうと、神淵の森と町とを隔てる草原に立ち入る許可が下りるというわけだ。

 ここで初めて獲物を狩り、その場で解体ないし下処理をし、素材を持って帰るということを実地で体験出来るのだが、学園の生徒は授業で把握している内容である。


 しかし、実際にやってみるとでは感覚が違うことや学園と言っても実力が上から下まで離れていることから学園出身者は一つ上のFランクスタートに留まっているらしい。

 因みに昨日貰った冒険者マニュアル参照である。


 「むむむぅ…?」


 受付嬢が身を乗り出して、こちらを伺ってくる。


 「エニグマ…?あぁ!ギルド長の!」


 「ん?どうかしたのか?」


 「いえ、こちらの話です。それでどうします?受けられますけど?」


 「今はEランクになってる理由とやらが聞きたいが…。受けられるなら受けさせてもらおう」


 「はーい。それではこれから直ぐに討伐隊が組まれますので、3階の集会ホールの方で待機しててくださーい。」


 「ちなみにぃ~、Eランクになった理由ですけどぉ。ギルド側の秘密ということでお願いします!」


 「ぁあ!?」


 目の前の彼女は人差し指を口にあて、ウインクをする。

 軽々しくあざとい仕草ではあるが、その裏に何故か有無を言わせぬ拒絶が感じられた。

 

 それがトリガーになったのか、横で柳眉を段々と逆立てていき、苛立ちが隠せていない者が一人いるが、恐らくもう彼女に何を言っても答えてくれないだろう。

 ここは事を起こさず去るに限る。


 「ほら、いこ。もう用は済んだんだし」


 「アノア!私はまだコイツに言いたいことがっ!」


 「いいから」


 プリプリと怒る彼女を階段まで引きずって行く。

 真面目なエニグマさんに対して、彼女は決して相容れない性格だということが何となく分かった。

 名前は知らないが今後彼女とのやり取りは俺に任せてもらおう。

 そう心の中で決意したのであった。



* * * *


 受付で貰ったクエストの紙を持って、3階に上がる。

 どうやら休憩所のようになっているらしい。

 まるでどこぞの飲食店のように無数の丸椅子とテーブルが並び、その多くがミーティングをしている冒険者のパーティーで埋まっていた。


 そして、入ってすぐ左手には壁で区切られた教室に似たミーティングルームが見え、小さく『緊急クエスト用』とまるでスクールプレートを取り付けるように垂れ幕が掛かっていた。


 「どうやら、君達で最後みたいだな」


 両手を広げて一番前、他の奴らとは向かい合って大仰に俺達を歓迎したのは、黒髪を短く刈り込んだちょび髭のおっさんだった。

 男前な見た目に反して、服越しでもわかる筋肉を秘めていた。

 いわゆる細マッチョという奴である。


 彼が今回の討伐隊を率いる長か。


 その他、机の上に腰掛ける奴や武器の手入れをしているものなど小ざっぱりした会議室とは逆にアウトローらしい雰囲気が満ちみちていた。


 「それじゃあ早速始めさせてもらおうか。俺は今回のレイドの音頭を務めさせてもらうサッシュだ。よろしく頼む」


 「皆も知っているとは思うが、今回の目標は神淵の森浅層に存在が確認されたゴブリンの住処の壊滅だ。街道付近でゴブリンの目撃事例が相次いだらしくてな、ギルドからの指名依頼を受けて俺達のパーティーが偵察を行ったところ、地面に掘られたとても分かりづらい場所にゴブリンの巣穴を発見したという次第だ」


 「壁の点検任務の方では異常が見られなかったことや普段は洞窟を家とするゴブリンがわざわざ穴を掘って住処としていることなど今までの討伐と比べてイレギュラーな部分が多いのが今回だ。是非皆には注意してもらいたい」


 「そこでだ。俺はリーダーとして皆の安全を担保するために様々な作戦を講じたいと思う。まずは…」


 その男、サッシュは討伐隊に参加する冒険者をランクごとに分け、強い奴と弱い奴が混ざるような小隊を作ろうとした。


 が、話を聞いていた一人、耳にピアスを付けた強面の男が、


 「んなことしねーでとっとと行こうぜ。神淵の森ってこたぁ、往復で3時間はかかるだろ。日が暮れたらどーすんだ?あん?」


 という声に多くが賛同。

 パーティーごとに行動し、そのパーティーのリーダーにサッシュさんがオーダーをするという指揮命令系統に落ち着いた。

 結局無様にランクを晒したのが一番前で受けていた俺達だけだったというね…。

 どこぞの公開処刑かな?


 リーダー達にこれからの討伐作戦の内容と神淵の森での集合場所を伝達後、すぐに会議は解散という運びになった。


 後の戦いが俺達の思惑に反し、壮絶なものになるとはこの時にはまだ知る由も無かった。


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