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第二十話 全国のお母さん!思春期は唐突に来ますよ!

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 馬車に揺られながら、央都ヴィデルチェに至る最後の坂道を下っていく。

 俺と斜め向かいに座る彼女の周りには生活雑貨や日用品、武器、調味料なんかも置かれていて、雑然としている。


 「あ、どうやって帰ろう」


 そのことに気付いたのは終業式も終わり、帰り支度を済ませ友人に別れの挨拶を済ませた後。

 エニグマさんと合流した一番始めの話題として挙がったのがきっかけであった。


 マイペースな俺らしいと言えばそうだが、今回は殊更酷い。

 頭を抱えて呆れている彼女に思わず同情してしまう自分がいる。


 いや違うのである、弁解させてほしい。

 すべては夏休み前の部活の雑事やレポートの提出があり、夏休みはおろか帰る時の展望すらする暇がなかったことに起因する。

 俺は決して悪くない。


 『案ずるより産むが易し』ということわざがある通り、物事は案外心配しすぎないほうが返って上手くいくという先人たちの知恵がある。


 乗合馬車に乗って気楽に行こうと慰めている俺の前にとある馬車が待っていたかように停車。

 御者にはあの日俺を送ってくれていたピーターさんがいて、久方振りの再開に旧交を温める。


 どうやら聞くとこによると叔母さん、レオノラさんが学園のスケジュールを見て、商会の方にまた約束を取り付けてくれたらしい。


 流石は男爵家代理である。

 目端が利くというか、もう本当に頭が上がらない。

 本当の息子ではない自分の事もちゃんと気にしてくれていると知って、思わずうるっと来てしまった。


 そのご厚意に甘えて難なくここまでこれた、というわけである。


 さて、せっかく着いた所なのだが、息をついては居られない。

 レオノラさんとお話をしなければならないからだ。


 時刻はお昼、叔母さんは今家ではなく、城壁の中にある領館にいるだろう。

 領館は日本で言うところの市役所みたいなもんである。

 そして、我が家はなんと城壁のお外にお家がある。

 なので休みの日以外はレオノラさんは毎日通勤をしているというわけだ。


 まぁ、壁内まで目と鼻の先ではあるのだが、理由は良くは知らない。

 父さんの意向らしいのだが…。


 ともかく、俺たちは自宅をスルーして、顔見知りの門番のおっちゃんに挨拶。

 ピーターさんが所属する商会まで乗せてもらい、そこから徒歩で領館まで向かうといった次第だ。


 「今夜泊まるところはどうするか…」


 「あれ?家に来るんじゃなかったんですか?」


 「いいのか?最悪野宿でも良かったんだが」


 「野宿?宿に泊まればいいじゃないですか?」


 「いやな、冒険者をするとそういう機会も増えると思ってだな」


 「でも、わざわざしなくてもいいんじゃないですかね」


 「それもそうだな、しばらくはそちらにお邪魔するとしよう。君も久しぶりの実家だろう。ゆっくりするといい」


 そんな話をしつつ領館に到着する。

 市役所と言ってもそこまで大きいものじゃない。

 正面玄関は西洋宮殿のようにしっかりしているが、うちのお屋敷、いわゆる洋館と同じくらいのでかさである。


 役所よろしく誰でも入場可の場所なので、勝手知ったる顔で侵入、受付の人に叔母さんに取り次いでもらうようお願いする。


 付近の肘掛椅子で待っていたところ、直ぐにレスポンスが返ってくる。

 やにわに会ってくれるとのことだ。


 『領長室』


 先程の受付嬢に連れられるがまま、2階の奥、施工されたパーテーションで区切られた隅っこに俺たちは入室する。


 中では、うちの執務室同様レオノラさんと…、傍らにセバスさんがいた。


 「あら、アノアおかえりなさい。そちらの子は、その制服…」


 後ろに控えていた白髪がズイと横に並び、仄かにいい匂いが漂ってくる。


 「申し遅れました。私はアノア君の学友、エニグマ侯爵家が長女、レナータと言います。以後お見知りおきを」


 (え、まじか侯爵!?初めて知ったんだが…)


 「これはこれは失礼を…」


 レオノラさんが立とうとしたのを彼女は手で制する。


 「いえ、お気遣いなさらず。学園でも貴賤上下の差別なく平等に教育を受ける。そう教えられてきましたから」


 「あらそう、さすが良家の方ですわね。それで…、なぜ我がヴィデルチェ領に?」


 「はい、アノア君と冒険者活動を始めさせていただきたく、手始めにオース領でこの夏休み中にランクを上げようと2人で話し合っておりました」


 「冒険者……?取り敢えずあなた達、着いたばかりで疲れていることでしょう。アノア、家の客間を案内して差し上げなさい。マルガレットにもこのことを伝えておくこと。私はまだ仕事が残っているから話はまた後でにします」


 「はい」


 「ようこそヴィデルチェ領にレナータさん、私達はあなたを歓迎するわ。ゆっくりしていってね」


 「感謝する」


 退室しようとした時に見た叔母さんは僅かに俯き悲しそうな顔をしていた。



* * * * 


 「…きなさい、アノア。起きてっ」


 誰かに起こされて俺は目を覚ます。

 瞼を開けると、びっちり閉じられた窓から月明りが部屋に差し込んでいるのがわかる。

 夜ご飯を食べてから直ぐに疲れを自覚し、寝入ってしまったので夜は比較的浅い時間帯なのだろう。


 そんな光に照らされて、ベットの真ん前に1人の女性。

 レオノラさんだった。

 お昼に会った時と同じ格好をしている。

 夜遅くまで立て込んでいたのであろう、ご苦労なことで。


 「うわっ!びっくりした。なんでいるんですか?」


 「なんでも何も、あなたこのまま夜を明かせられると思ってたの?」


 うわ怖い、なんだろ。夜這いかな?


 「はぁ…、私に直接話してないことが山のようにあるんじゃないの?」


 「あぁ」


 そう言えば諸々の話は後回しにされてたんだった。

 俺としてはレオノラさんに自分の元気な姿を見せれただけで良かったんだが。

 

 「まずあなたF組になったそうね」


 「ギクっ」


 やべー、セバスさんには適当に誤魔化しといたはずだったが、どっからバレたんだ?


 「先の魔闘祭爆撃の件、あれの報告書に校長先生から直々にお手紙が入っていたのよ。あなた遠足で危険な目にあったらしいわね」


 「そうですね…。危うく死にかけました」


 「…っ。これ以上外野に追求されない為に一応揉み消したらしいけど、今回の事件と関連付けて調査しているらしいわ」

 

 そうだ。

 確か本来あそこにいてはいけない魔獣がいたんだったな。


 今年に入ってから立て続けに事件が起こっている。

 毎年こんなにハプニングが起こるということは絶対に無い。

 上は1年生を受け持つ先生や生徒の中にも犯罪組織に手を貸している人間がいる可能性が高いと踏んでいるのだろう。


 というか、マジで余計なお世話なんだが?

 そういう用件は本人に寄越せ!あのクソガキ!


 こちらのことは知る由もないだろうし、校長としての責務を果たしたまでだと分かってはいる。 

 しかしなぜかあの赤ん坊のニヒルな笑みが思い浮かんで、いらつきがとまらない。これが奴の魔法なのか。


 「ホントあなた考えていることが顔に出るわね。『大方何でバレたんだ?』とでも考えてたのでしょう」


 「おっしゃる通りで」


 「まぁそのことに関しては大体の話はセバスから聞いたわ。魔力が使えなくなったらしいわね」


 「はい」


 F組になったという事実が分かれば、あの時傍にいたセバスさんに聞けば、おおよその予想はつく…か。


 「それでここからが本題よ。あなた魔力が使えなくて、一度危険な目に合ったのにも関わらず、それでも冒険者を目指すというのッ!?」


 叔母さんは語気が荒くなり、唐突に感情的になる。


 「だ、大丈夫ですよ。危険な橋は渡らないですし…」


 「いいえ!!分かってないわ。あなたが安全だと思って歩いていたその橋が次の瞬間には危険に立ち替わる。冒険者とはそういう職業なの!人々の豊かな生活を支えるために毎年いくらの冒険者が命を奪われていると思っているの!?」


 「それに魔力がないのに冒険者?馬鹿も休み休み言いなさいッ!才能がすべてのあの世界で死にに行くようなものだわ!将来のことで心配なら安心しなさい。学園を卒業してからは領地に戻って、役人になるために話は通しておくから…」


 「うるさいッ!!!!本当の母親じゃないくせにッ!!」


 あー、言ってしまった。

 これが俗に言う逆ギレという奴である。

 口にしてから即座に後悔するがもう遅い。

 レオノラさんの顔が驚愕に染まる。


 「常にちゃんと安全策は取ると言ってるでしょう!それに俺の今までやって来た努力を軽んじられても困ります!俺の将来はオレが決めます」


 「もう出て行って下さい。俺達も明日にはここを発たせてもらいますから。」


 俺も、この元の体の持ち主も『この人は真の母親ではない』という事実にコンプレックスがあったのであろう。

 思わず口をついて出てしまった。

 これが思春期特有の反抗期というやつなのだろうか。


 「これだけ言っても聞かないのね…。ホントに誰かさんに似たんだか…」


 彼女は今にも泣きそうな顔をこらえつつ、部屋を飛び出して行ってしまう。


 彼女が長年俺を見てくれた母親としての心配から、声をかけてくれたものだとは分かりきっている。

 そんな彼女に心無い言葉を放ってしまったことに対し、深い自責の念に駆られてしまう。


 それと同時に俺の中で『夢を叶える』ための断固たる覚悟が決まった。

 もう当分ここに戻ることはしないだろう。


 (最後にちゃんとお別れをしたかったな…)


 そんなことを思いつつ、俺は今一度目を閉じるのであった。


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