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第十九話 何!?ついに俺にもモテ期到来?

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 「はい!そこまでぇ。答案を後ろから前へ送ってねぇ」

 

 チャイムが鳴り、クラスの皆が一様に顔を上げる。

 その顔つきはどこか憑き物が落ちたような表情だ。


 尻の穴がむずがゆくなる、そんなガチムチの男教師の合図を機に、夏休み前最後の中間テストの用紙を前へ送っていく。


 既に答案を手放した後ろの奴らは席から立ち、友達と夏休みを迎えることへの喜びを分かち合っているが生憎俺の席は一番右前。

 最後に回収されるポジションになっている。


 (うわっ、不躾に俺の手触るなよコイツ…!目が怖いんですけど!)


 最大の難関?も無事終わり、俺もギータ君、そしてデルパー君といういつものメンツで集まり、今後の予定を話し合いながらホームルームを待つ。


 彼らの趣味から分かるように、どうやらギータ君は王都近く、ここエウリオ領から右下に向かって。デルパー君は研究所の中でも鉄道部門が置かれている場所、ここより右上方面に向かってそれぞれ帰省するようだ。


 どうやら3人別々の方角なのでこの学園で一旦おさらばすることになりそうだ。


 

 すると、ガラガラッと藪から棒にドアが開く。

 エヴァン先生が来るにはいささか早すぎる。

 誰だろうと俺を含めた多くの人間の視線を集め、注目されながら白髪眼帯の少女レナータ・エニグマさんがクラスにずかずかと入って来る。


 『エニグマさんどうしたんだい?』と突如現れたクラスの異分子に対し、優しく下心を出していく輩を全て無視。

 俺達がたむろしている場所まで来ると、堂々とした声音で、

 

 「アノア君、ちょっといいか?話がある」


 とのたまった。


 「アノア氏!これは俗に言う告白イベっ!?ごふっ」


 「ギータ君!?」


 おや?どうしたんだ急に?

 だるんだるんに太ったお腹を右フックで絡めとられたみたいにわき腹を抱えだして。

 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。


 まぁこのまま視線を集めるのも何なので、エニグマさんに促されるがまま、クラスルームの隣、屋上への至る階段の踊り場に移動する。


 「それで、話なんだが…、どうかしたのか?」


 「あぁ、何でもないです」


 おい!そこで盗み聞きするな!

 俺からはバリバリ頭見えてんだよ!

 お灸をすえてやったのを一瞬で忘れたのか!


 俺が思いっきり目を見開き、一向に効き目がない『帰れ!合図』を送っていると、レナータさんに訝しがられたので中断する。

 アイツ等後で覚えとけ…。


 「いきなりで悪いんだが…。君冒険者に興味はないか?」


 「冒険者…ですか?」


 冒険者というのは知っている。

 魔物のいる森やダンジョンに入り、魔石や討伐部位など、国民にとっては無くてはならない必需品を狩ってきてくれたり、騎士団に代わって盗賊や魔族とも相対する言わば戦闘のプロフェッショナル的な存在だ。


 またそれと同時にこの世で最も危険で尚且つ最も一攫千金ができる職業とも言われている。


 そして、俺があの時に見た夢『この世界を自由に見て回りたい!』を生業にできる一番の近道がかくいう冒険者なのだ。


 「あぁ、私にはある野望があってだな。君と一緒なら冒険者のランクを何処までも上げていける。そんな気がするんだ」


 「野望…ですか?」


 「それについてはあまり触れたくはないんだが…。このウォルト王国では力こそ正義という風潮が貴族にあるのは知っているな?」


 「はい」


 「私は何とかして自分の実力を認めさせたい。貴族達の中でも権力を付けたいんだ…。少し欲深く見えてしまったかな?」


 「…、人間って誰しも欲深い生き物なんじゃないっすか?間違ってないと思いますけど」


 「そう言ってもらえると助かる。」


 「あと、俺も実は冒険者になりたかったんすよね…。だから成績優秀なエニグマさんとパーティーになれたら凄く嬉しいな…、なんて」


 「ホントか!?」


 彼女の目がキラキラと輝く。


 (あと、こんなかわいい子と冒険できるしね、あわよくば二人でベッドインなんてことも…。ギータ君の事言ってられねーな)


 キャッキャムフフな展開を想像したが、先刻彼をどついたことを思い出し我に返る。

 

 「君はどこ領出身だったか?」


 「ヴィデルチェです。アノア・ヴィデルチェ」


 「ヴィデルチェ…、大きい湖があるところか。王国の西だな。深淵の森には…、湖があって冒険には不向きだな…。」


 「えぇ、冒険者は見たことがないですね。大体は領の自警団の方々で事足りますし。まぁ逆に湖が隔たっているおかげで平和なんですけどね」


 「そうすると…、ヴィデルチェ領の真下、オース領はどうだろう?そこから私達の冒険者生活を始めるというのは?」


 「是非!お願いします」


 「よし、それでは行きがけにヴィデルチェ領に行くとして…」


 ん?


 「あの…、実家に帰省とかはしないんですか?」


 「あぁ、時間が惜しいからな、このまま直行だ。君の家にもお邪魔させてもらうぞ?ダメだったか?」


 「あ、いえ大丈夫です」


 これは実家に挨拶しに行くという認識でおけ?

 ノーおけ?分かった。


 眼下がやけに騒がしくなるのを感じる。

 というかあそこから聞こえてるのだろうか?


 「それでは明日終業式後にもう一度集まろう」


 「了解!」


 そんな約束を交わした後、ちょうどよく先生達が階段を上がり、クラスルームに入っていくのが見える。

 エニグマさんも認めたようだ。

 その言葉を最後に俺たちは別れる。


 俺は覗きをしていた2人と肩を組み一緒にクラスに入る。

 声はわざと少し大きめに、


 「エニグマさんの話って例の爆発事件のことだったよ」


 「え?アノア君何の話で…」


 「しっ!」


 今の一言でクラスから集めていた注目やら囁き声が霧散していくのを感じる。

 取り敢えずこれで良し。


 「でもアノア氏話してたのって冒険者のパーティーになるってことでござったよね」


 「…何で分かったの?」


 「実は最近買ったこの集音の魔道具で盗ちょ!?ごふっ」


 「ギータ君!?」


 デルパー君からの視線が痛い。

 いじめじゃないよ。ホントだよ。


 ただ右も殴られたら、その分左も殴って釣り合い取らないといけないからね。

 というかその魔道具で何しようとしてたの?ねぇ聞いてる?


 まぁお戯れも程ほどにして席に座る。


 そう言えば、先の爆弾事件である。

 死傷者及び怪我人がゼロになったとは言え、多くの会場にいた人間のトラウマになる酷い事件であったと言えよう。

 まぁ全員魔法で治癒させたからなんだが…。


 この場合はカウントはどうなるんだろうな。謎である。


 犯人の目途は早々に立ち、思ったより早い時間での拘束解除になった。

 因みに、ギータ君達だが時計台内にある休憩スペースにいたらしい。


 何が起こったのか知らず、ケロッとした顔で迎えられた時は思わず殺気が漏れた。


 後日、朝一で全校集会があり事件の全容が明らかになった。

 犯人は魔闘祭の用具の運搬を担当した3年の武術の先生。搬入した商会もグルであったと考えて騎士団とともに捜査しているらしい。

 当日彼は会場にはおらず、彼の住居を訪ねたところもぬけの殻だったそうだ。


 改めて、今回の事件は魔族のスパイにそそのかされた人間か現在王国を騒がせている犯罪組織マキャベリアによる犯行であると明らかにした。


 どちらにしろ、消えない炎や先生達でもまともに近づけないような砂嵐を巻き起こす力など木っ端の奴らには到底不可能な所業であろう。


 それと、その先生が当日現場にいなかったことから実行役、つまり保護者や先生、生徒の中にも未だに反社会勢力の人間がいるかもしれないということを明言した。

 

 以上のことを踏まえたうえで、学園はより一層の警戒と対策の強化。

 催し物に対する一定の部外者の制限などを設けるらしい。

 その上で自主退学する生徒はそれで構わないというスタンスを取る旨の手紙を各方面に送るとのこと。


 まぁ校長のおかげで実質的な被害は0にも等しいものだったのだ。

 過剰に学園側が譲歩して何かする必要などはない。

 妥当な所だろう。


 しかし、今回は結局のところただ運が良かっただけである。

 いやむしろ、黒幕はいつでもこんな事件を起こせるんだぞと学園、いや王国全体に警鐘を鳴らしているようにしか見えない。


 改めてここは異世界、平和慣れした日本とは違い、常に危険が付きまとう場所である。

 そんな世の中でいち早く実践で身を守る力をつけるべく、彼女の提案に乗った。

 そんな思いも俺の心の中で少なからずあったのかもしれない。


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