第一話 課金のし過ぎは注意しよう!
初投稿失礼します!
なろうユーザーになって10年以上、数多のなろう作品を愛して参りましたが、ここ最近は自らの性癖にぶっ刺さる作品が少なくなって参りました。
なので私が己が為に、自分好み作品を作ろうではないかということで筆を執った次第でございます。
自己満度200%の作品ではございますが、あっと驚かすような展開や次が早く読みたくなる作品作りを心がけて参りますので、見ていただいて、誤字脱字含め、感想や提案などを書いて愛して頂けましたら何よりも嬉しいです!
「はぁ、疲れた…」
時刻はとある平日の21時30分過ぎ、最寄りの駅のホームから階段を降りた場所。
俺こと神田龍二はわずかに汗ばんだポロシャツを仰ぎながら、自宅に帰ろうとしていた。
準一流の大学、いわゆるB級と呼ばれる大学に進学し、そこそこの大手企業に就職してはや1年と6か月。
入社したての頃はまだまだ良かったが、一年目の後期には山のように仕事を覚えさせられ、2年次からは毎月
残業のオンパレード…っといっても、腐っても大企業であるし、新卒なので、法に定められた残業時間を超えるということは無かったが…。
線路沿い、小さくはあるが確かな住宅街の明かりに照らされつつトボトボと目線を下に向け歩いていく。
その足取りは重いが、決して歩みは止めない。なぜなら明日も朝早く起きなければならないからだ。
「あ、そういえば今日ガチャに新しい限定キャラが追加される日だったな…」
大学時代まではゲーミング用のPCを買って、オンラインゲームを遊んでいたが、社会人になってからは平日にそんな時間は取れるはずもなく、休日は平日に取れなかった疲れを癒すために当てているので、自ら刺激を求めに行くような対戦ゲームなどとは縁遠くなってしまった。
こうして大人はゲームから遠ざかっていくのだろうと感慨に浸りつつ、その代わりにのめり込むようになってしまったのが、このスマホのアプリゲームである。
スマホの普及とともにスマホゲームというものが台頭してきたが、その中でも古くからセールスランキングのトップ層に君臨し続けているメジャータイトルである。
俺はその新規層、いわゆるライトユーザーと呼ばれる奴であった。
『形の無い者にお金を費やしたくない』 という謎の信条の下、何度も課金の魅力に苛まれながらも、半ば意地になってゲームを続けること早1年。
ようやくガチャを回せる石をゲットできるダンジョンの周回ができるようになり、忙しい仕事の合間や休日などにできる手軽さに有難みを感じつつ、3か月間コツコツ貯めた石、およそ50連分。
今度出てくる限定キャラに全つっぱし、見事その強キャラをゲットし、より快適なスマホゲーライフをエンジョイしようと前々から画策していた。
アプリを開くと、起動画面からそのキャラの戦闘描写がド迫力で描かれ、
緊張と興奮から思わずゴクリと生唾を飲み込む。
「さぁ、いくぞ! ガチャだガチャ」
もう待ちきれないとばかりにガチャの画面に行き、軽く目を閉じ両手を合わせた後、いざ運命をつかみ取りに行く。
「よし、まだ40連あるし…全然いけるいける!」
「次だ次!」
「まだ大丈夫、しっかりしろ俺!自分を信じろ!」
「ダイジョブ…、ダイジョブまだ10連あるし…」
「…………あれ」
見間違いはないかとばかりにキャラが収納されてあるボックスに移動し、今回のガチャでゲットした戦利品を確認する。
NEWと表示されているキャラの中に最高レアリティのキャラはたった1つ。
そのキャラを素早くブラウザの攻略ページで確認してみる。
「評価は5段階のうちの2……か」
限定ピックアップキャラとは程遠く、いわゆる”大爆死”というやつである。
「はぁ~、俺の3か月分返せよマジで、ついてねぇな……」
再び大きく溜息を吐く。
その足取りは前より心なしか重くなったようにも見える。
俺の脳内は溜息とともに手に持っていたスマホをしまうことで、ガチャの記憶を一時的に封印したが、今度は帰宅した後を考えて気分が憂鬱になってしまう。
「帰って、飯食って、風呂入って…、5時半に起きるから…、10時半には寝ないとな…、はぁ」
こうして人知れず溜息を吐くのを止められなくなってしまったのはいつからだろうか?
少し前までは大学の卒論が終わり、毎週バイトと自宅の往復のみの楽な生活。
そして来たる新しい生活に胸を膨らませていた。
それが今ではこうだ。
毎日仕事に忙殺され、休みは体を労わることに専念し、平日は食って、仕事して、食って、寝るだけの暮らしである。
勿論、会社にいる他の方やインターネットにある動画などでも、自分よりつらい環境にいる人間がいるという事実はわかってはいる。
だがそれとこれとは別問題。
人間が人間らしく、誰しもが幸福を追求する権利があるのではないかと俺は思うのだ。
(まぁそれもそれで面倒くさいから進んでやりたくはないのだが…)
今日はいつにもまして気分が落ち込んでいる。
直属の上司に怒られたからだろうか?
ガチャがあまり良くなかったからだろうか?
いや全部ひっくるめてボディーブローのように効いているのだろう…。
こんな時にはふと弱音を吐いてしまう。
「はぁ、死にてぇな……」
『じゃあ、私が殺してあげますよ』
「はぁ?」
どこかからそんな声が聞こえた次の瞬間、
心臓を思い切り掴まれたような感覚に落ちいる。
痛い、イタイ…
あまりの痛さに、何かこみ上げてくるものがあり、思わず手のひらに吐き出す。
血だ…。
胸がとても苦しく歩くことすらままならず、やがて膝から崩れ落ちる。
倒れてしまった拍子に額を切ってしまったのだろうか?
顔の右半面が生暖かい液体に覆われていくのを感じる。
「体がサムイ…、息がクルシイ…、頭がガンガンする…」
『アハハハハハハ!!!』
『死にたいんですよね!?だって死にたいんだですものね!?』
周りから雑音が聞こえるような気がするが、あまりの痛さに内容を聞き取ることすらままならない。
(つーかどっから話してるんだよ!助けろよ!人が苦しそうに倒れてるんだぞ!)
龍二はスマホゲーをしながら、なんやかんやで自宅へ歩を進めていた。
すぐそこにある線路沿いの踏切を渡らずに、右に曲がっていけば龍二の家がある。
そして今現在、発狂しそうな程の苦痛に耐えながらも、けたたましく耳に主張してくる踏切の音から僅かな希望を抱き、僅かに面を上げ朧げな左目で眼前を確認する。
幸運にも女性のシルエットが2人…、あれは親子だろうか?
こちらに駆け寄ってくるのが見える。
(あぁ、助かった、早く救急車を………)
そう思いながら、龍二の意識は暗転する。
そして静かに息を引き取った。
死因:心不全 享年23歳である。
『ふぅ…、やはりこの瞬間はいつ見ても心躍るものですね』
『さようなら名も知らぬ方、またいつか会いましょうね』
『はて…?』
後書きは作品の裏話や世間話、近況報告などに使わせて頂ければと思います。
多少お目汚しはあるかもしれませんが、作品の方には関係ございませんので、軽く飛ばしていただければ幸いです。