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世にも不気味な消火栓

作者: 神谷愛

 急に電話が鳴りだす。七面倒臭いが、誰も部屋にいない以上自分が出るしかない。

「はい、こちら系外対応協会です。はい、了解です。明日にでも伺いますので、はい、それでは失礼いたします」

系外対応協会。世の中には向き不向きがある、治安を守るのは警察、国を守るのは自衛隊、じゃあよくわからない生物はどうすればいい?それが生き物なら即刻保健所にでも連絡してくれればいい。生物じゃなかったら、具体的には霊などの異形はどうすればいい?そんなときに対応するのがうちというわけだ。どれにも属さない、つまり系統外に対応するための協会、それが系外対応協会というわけだ。

なんだか名前もダサいが仕事もダサい。系外なんてめったに出ない。月に一回もあればいい方だ。そして本当に対応しなきゃいけないレベルが出たら全国ニュースになる。つまりその程度だ。そんなもん警察やら自衛隊の中に作れというのが最近の口癖なのは上司には内緒だ。殴られるし。


 しぶしぶという顔がばれないように作り笑いばかりが上手くなっていく。

「こんにちは~。系外対応協会です」

「おぉ、来てくれたか!」

「はい、どうもです。連絡をいただいたのはどれですか?」

「あぁ、これだ」

「これが・・・」

「あぁ不気味だって言う声が大きくなっちゃってな」

「まあ、実害がなくても勝手に除雪されるのは気持ち悪いですよね」

「別に悪いことするわけでもないんだがな。万が一があったらどうするんだってもううるさいうるさい」

「あはは、知らない人からしたらそうかもしれませんね」

「わしが若いころはもっとこんなのがいた気がするんだがな」

「昔にいたってのは本当ですよ。単に今回みたいに不気味に思われることが多くなって出てこなくなっちゃったっんです」

「そうか、なんかさびしいな」

「そしたら、『対応』しますか」

「おう、すまんな。何もしてないのに。わしらの都合で・・・」

「それだけ思ってくれる人が一人いるだけで彼もきっと浮かばれますよ」

唐突だが「対応」とはいったいどういうことか。説明しなければいけないだろう。

呪符でも用意するか?そんなのは陰陽師でも呼べばいい。いるか知らないけど。

バチカンから大司教でも呼ぶか?彼は悪魔じゃない。

呪術師でも呼ぶか?彼は呪いの類でもない。

俺たちのやり方はそんな大仰なものではない。

「じゃあ、これ外して捨てますね」

「おう、手伝うか?」

「いえ、祝詞を身に着けていないと暴れることもあるので」

「おぉそうか、じゃあ頼むな。というかそれだけでいいのか?」

「まぁ弱い付喪神みたいなものなので」

「そんなもんか」


そう、捨てれば解決する。いや、本当にこれだけだ。この類は離れるだけで消えてしまうことも多い。しかも今回は消火栓の周りの雪を溶かしていただけ。外しただけでほぼ消えかけている。

「あ、消えました」

「お、そうか。ありがとな」

「いえいえ、数日中に新しい消火栓が来ますので」

「おう、ありがとな!気を付けて帰れよ!」

気のいいおっさんで助かった。たまにヒステリック極まった奴がいたりもするだ。


いや、まじで警察か自衛隊でやってほしい。

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