3.入学式の、その後に。
ひ、比奈はいったい誰が好きなんだー(棒
次回、明らかに!?ww
「振られたァァァァァァァァ!?」
「入学式直後に告白しに行く勇気だけは褒めてやるよ。非常識だけど」
入学式当日の課程を終えて、俺はうな垂れるタケにそう言った。
この馬鹿は式の終了と同時というくらいの早さで、比奈に告白をしにいったらしい。その結果は上記の通り、玉砕となったわけだが。
俺は呆れ半分、安堵半分といった感じだった。もっとも比奈がタケのようなタイプを好きにはならない、という謎の自信はあったが。
そんなこんなで、放課後。
俺は馬鹿を放置し荷物をまとめ、廊下に出た。
そして、いつものように階段を降りて生徒玄関へと向かう。
「……あっ! マサ兄!」
「あれ、比奈?」
すると、そこには比奈の姿があった。
彼女は新しくできた友達だろうか、数名の女子に声をかけた後にこちらへ。にっこりと笑って、すっぽりと俺の右隣へ収まるのだった。
「いいのか? あの子たちは」
「うん! みんな、帰る方向が反対の子ばかりだったから!」
「そっか……」
俺たちはそんな会話を交わしながら、家路につく。
互いに多くを語ることはなく、ただ当たり前のように歩いていた。その最中に、ふと俺はタケのことを思い出す。そして、
「そういえば、もう告白されたんだって?」
あのアホと友達だと思われないよう、ややぼかして訊いてみた。
比奈はそれを問われて、少しだけ気恥ずかしそうに答える。
「えへへ……。三人くらいに、ね?」
「お、おおう……三人か……」
返ってきたのは、想定よりも上のものだった。
どうやら、うちの高校にはタケのような馬鹿があと二人いるらしい。あるいは、それだけ幼馴染みが魅力的に見えた、ということか。
俺は誇らしい反面、緊張気味にさらに訊ねた。
「それで、どうした?」
「断ったよ? だって、初めましての人ばかりだし……」
「そりゃそうだ」
ホッと胸を撫でおろす。
そうしていると、比奈は小さくこう続けた。
「私には、好きな人いるもん……」――と。
…………マジか。
俺はそれを聞いて、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。
しかし、彼女もまた年頃の女の子。当たり前の気持ちだと、前を向いた。
「その男子は幸福だな。でも、あの部屋を見たらどう思うか……」
その上で、少しばかり比奈を咎める。
好きな男子がいるなら、改善点は明確だった。だが、
「えへへー……」
幼馴染みは曖昧にそう笑って、反省の色を見せない。
俺はそんな彼女に、また一つ苦笑い。
そして、
「……まぁ、とりあえず。今日はお前の家の掃除から、だな」
「うん! ありがとっ!」
呆れを隠さずにそう告げると、比奈は元気いっぱいに返事をするのだった。
まだ日の高い帰り道。
ひとまず、小さな波乱の一日はこうやって終わったのである。