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2.生活能力皆無な幼馴染み。

今日はあと1話!

応援よろしくです!!







「えへへー……ありがとうね、マサ兄」

「いや、ありがとうじゃねぇよ……」



 ようやくマトモに会話が可能になった幼馴染み。

 そんな彼女が間抜けた笑みを浮かべているのを見て、俺は大きなため息をついた。パジャマ姿のままな相手に、若干気恥ずかしさがあるが話を進めなくては……。



「……で、この惨状はなんだ?」



 俺は周囲の地獄絵図を見回しながら、そう訊ねた。

 すると、比奈は不思議そうに首を傾げて。


 しかしすぐに、頬を掻きながら笑って言うのだった。




「えへへ、お母さんいなかったらこうなっちゃった」――と。




 …………は?


 俺はそれを聞いて、一瞬だけ思考が凍った。

 そして、改めて周囲を見て思い出す。


 彼女の両親が海外へ発ったのは、一昨日の夜のはず。

 つまり、ほぼ一日の間にこのような状況になったわけだが……。



「いやいやいやいやいや」



 俺はそれを考えて、思わず首を左右に振っていた。

 そんなこと、あり得るのだろうか。玄関のドアに鍵をかけず、家のあらゆる場所をこれでもかと散らかし、当の本人は健やかな寝息を立てているなど。

 あり得ない。

 普通なら、まずあり得ない。



「どうしたの? マサ兄」

「…………」



 それなのに目の前の幼馴染みは、円らな瞳で見上げてくる。

 小首を傾げて、ややはだけたパジャマ姿で。


 俺は思わず手で目を覆いながら、深くため息をつくのだった。

 そして、こう提案する。



「比奈……お前、飯はまだか?」

「うん! 昨日の夜から、なにも食べてないよ!」

「元気に言うなよ。……待ってろ、なにか作ってくるから」



 なんだかんだ、登校時刻までは少しばかり余裕がある。

 手早く食事を済ませて、比奈を高校に連れて行こうと思うのだった。







「んーっ! おいしぃ!!」




 ――で、簡単な朝食を作った。

 食パンと卵があったので、トーストとスクランブルエッグ。

 相も変わらず散らかりまくっている台所は使いにくかったが、ついでに整理しながらどうにか時間内に完成させることができた。

 朝からずいぶんと疲れたが、比奈の蕩けるような笑顔を見ると変に嬉しくなる。



 もっとも、周囲に散乱した物が現実に引き戻してくるのだが。



「……それで、今日の準備はできてるのか?」

「うん、それは昨夜のうちに!」

「よかったよ……」

「どうしたの、マサ兄? そんなに安心した顔して」

「誰のせいだ、誰の……!?」



 ひとまず、入学式の準備はできているらしい。

 俺はそれに心の底から安堵して、空になった皿を手に取った。そして、



「それじゃ、さっさと制服に着替えろよ? もう行くぞ」

「うん、分かった!」



 そう、言った瞬間だ。




「――ば!? なんで、いきなり脱いでんだよ!?」

「ふえ?」




 比奈の馬鹿が、その場でいきなりパジャマを脱ぎやがった。

 俺は思わず視線を逸らし、駆けるように部屋の外へ。

 すると中から、彼女の声が聞こえた。




「あー、ごめんね。マサ兄だからいっか、って思って」

「良くねぇよ!?」




 どうにも反省したのか分からない、そんな幼馴染みの声。

 俺は顔が熱くなるのを感じながらしゃがみ込んだ。

 そして、不意に脳裏に浮かぶのは――。



「…………!?」



 子供の頃より明らかに成熟した、比奈の身体。

 俺はその記憶を必死に頭の中から抹消し、どうにか立ち上がった。

 アイツをそんな目で見るなんて、あり得ない。それに、あってはならない。




 そう考えながら、俺はどこか浮ついた気持ちで台所へ向かったのだった。





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