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1.朝倉比奈という幼馴染み。

ご好評いただき連載版です。

応援よろしくお願いいたします(*‘ω‘ *)








 俺には二つ下の幼馴染みの女の子がいる。

 幼稚園の頃から一緒で、毎日のように遊んでいたことから本当の妹のような存在だ。そんな彼女も今年からは同じ高校の後輩となる。

 少しばかりおっとりとした部分もあるが、可愛らしい容姿をしているのですぐに人気者になると思われた。そのことに、ちょっとだけ寂しい気持ちがある。


 だけど、これも時の移ろい。

 俺たちの関係は、こうやって少しずつ変わっていくのだろう。


 ――などと、センチメンタルになっていた時だった。




「……え、比奈の両親が海外出張?」

「そうなのよ。なんでも、夫婦揃ってのことらしいんだけどね?」



 春休みも半ばに差し掛かった頃。

 夕食を摂っていると、母さんがそんなことを言った。

 俺はみそ汁を啜りながら、ぼんやりと幼馴染みのことを考える。



「比奈は、どうするんだ?」

「あら、比奈ちゃんのことが一番に気になるのね。本当に仲良しなんだから!」

「バーカ、そんなんじゃねぇよ。……で、アイツも海外に?」

「ううん、比奈ちゃんは残るそうよ?」

「へぇ……」



 これは、少し意外だった。

 俺はてっきり高校入学も白紙になって、一緒に海外に行くのだと思ったから。

 しかし、それとなると心配なのは比奈の今後の生活だった。彼女はどこか天然なところがあって、こちらから手助けをしていることが多い。

 そのたびにヘラヘラと、蕩けた顔をするのだが。

 果たして、それで良いと本人が理解しているのかは疑問だった。



「うーん……」



 これは、入学式当日に迎えに行く必要がありそうだな。

 俺はそう思いながら、自分で作った豚の生姜焼きを口に運ぶのだった。







 そんなわけで、当日。

 俺は比奈の家――朝倉家の前に立っていた。

 母さんの話によると、ご両親はすでに海外に出立しているとのこと。だから、この中にいるのは比奈一人だけ、というわけだが……。



「……おかしい」



 俺は思わず、そう呟くのだった。

 何故かというと――。



「さっきから、チャイム連打してるのに出てこない……」



 そういうことだった。

 先ほどから、十秒間隔ほどでチャイムを鳴らしている。しかし、幼馴染みが出てくることはおろか、返事すらなかった。俺はしばし考えてから、ドアに手をかける。

 すると――。



「おい、待て……」



 鍵が、かかっていなかった。

 すんなりと開いたドアから中をそっと、覗き込む。

 そうすると、いの一番に視界に飛び込んできたのは予想外の光景だ。



「な、なんだよこれ……!?」



 そこにあったのは、物がめちゃくちゃに散乱した玄関。

 それだけではなかった。あらゆる物が無造作に打ち捨てられているのは、ここだけの話ではない。進んでいくと分かったのだが、リビングも台所も、ほぼすべての場所が散らかっていたのだ。それらのことから、俺の脳裏には最悪の事態が思い浮かぶ。



「比奈……!!」



 俺は大急ぎで、二階にある幼馴染みの部屋へと向かった。

 走りにくい階段を駆け上がって、すぐ右手。そのドアを力強くノックした。



「お、おい……嘘、だろ?」



 ――反応は、ない。



 ただ、鍵は開いているらしい。

 俺は自分の喉が恐ろしいほどに乾いているのを感じながら、ドアノブに手をかけた。そして、ゆっくりとそれを開く。

 すると視界に飛び込んできたのは、ある意味で想定外の光景だった。




「………………は?」




 思わずそんな声が出る。

 何故なら、取っ散らかった部屋の片隅にいたのは――。




「すぴー……ふにぃ……」




 幸せそうに寝息を立てる、朝倉比奈の姿だったから。

 肩までの長さで揃えられた栗色の髪。長いまつげに太めの眉。俗に言う可愛い系とされる整った顔立ちをした彼女は、苺がプリントされた可愛らしいパジャマをややはだけさせながら、眠っていた。比喩でもなんでもなく、そのままの意味で眠っていた。



「…………おい」

「ふにぃ……」



 俺は苦笑いを浮かべつつ、声をかける。

 だがしかし、比奈は一向に目を覚ます気配がない。なので、



「――おいこら、起きろ比奈!!」

「ぴえぇ!?」



 耳を思い切り引っ張りながら、大声で彼女の名前を叫んだ。

 そうするとようやく、比奈は天地がひっくり返ったかのような声を上げながら起きる。それでもまだ、どこか蕩けた顔をしているが。

 俺はひとまず、そんな彼女に向かってこの惨状の説明を願おうと――。



「……あー……! マサ兄だぁ……!」

「ちょ、おま……!?」



 したところで、寝ぼけた比奈に抱きつかれた。

 俺は思わず尻餅をついたが、彼女にケガはさせずに済んだらしい。とにもかくにも、比奈がさっさと目を覚ましてくれないと話が進まない。


 そんなわけで、そこからしばらく。

 俺と比奈による攻防が始まるのだが、今回は割愛しよう。




面白かった

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