表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/51

第四六話 最強の魔法と槍

 カラガルムを守る兵士は五〇を切った。

 リシアは安全のためと称し、カラガルムが乗る馬車の御者と入れ替わると、突然護衛から離れだした。


「ノーキラたちはここにいて」


「リシア! どこにいく!」


「いいからそこにいて、追手が来たら対処して。ソート様は私が安全な場所に」


 残された聖騎士団員はポケーっと硬直し、微動だにしなかった。

 リシアの思い通りである。いまの聖騎士団はとても神の剣とは程遠い、形骸化した組織だ。

 判断力も、指揮系統も杜撰になってしまっている。

 これもすべて、生前のソート率いる聖騎士団を崩壊させたカラガルムの業である。


 リシアはいつカラガルムが馬車から飛び降りたり、こちらに攻撃してくるかビクビクしながら、目的の場所へ目指した。

 使われなくなった採石場である。


 到着し、リシアは必死に走り出した。

 やがて、ゆらりとカラガルムが降りる。


「それで、最後はなんだ?」


 子供の遊戯を見ているかのような微笑みの前に、レドとソニーユが現れた。


「なにがおかしい、カラガルム」


「君らだけか?」


 この状況、カラガルムが理解できないはずがない。

 なのにこの余裕。恐れ一つ見せず、気味悪く笑っている。

 ソニーユは初めて目にしたカラガルムに、おぞましさを覚えた。


「まんまと連れてこられたマヌケのくせに、強がってるのかしら?」


「キミらの思い通りにした理由は三つ、一つは油断。取るに足らないゴミ虫だと高をくくってしまった。二つ目は利用できると踏んだ。これほどの反対勢力で持っても殺せないとなれば、誰も私に逆らわなくなる。そして三つ目は……」


 カラガルムが帯刀していた二本の剣を抜いた。


「この体を試す良い機会だ。ずっとうずうずしていたのだよ。神の剣、ソートの肉体を存分に使う日を」


 ソニーユも槍を構えると、レドが小声で呟いた。


「お前の槍だけが頼みだ」


「わかってる」


「俺が隙を作る。確実に仕留めてくれ」


 レドは剣を抜きつつ、火球を撃った。

 だが、


「ふんっ」


 カラガルムが剣を振るうと、火球は真っ二つに切れて消滅した。

 魔法を切られたのは初めてで、レドは眉を潜める。

 さらに強風を吹かせ剣を吹き飛ばそうとするが、彼が剣を振ると、また魔法が消えてしまう。


「なんだ? ソニーユ、あいつの剣もお前の槍と同じなのか?」


「ありえないわ。それにあの剣、どう見てもただの剣よ」


 レドは何発も火球を放ちながら走って距離を詰めた。

 続けてソニーユも後ろから回り込むように走り出す。


「ふん、たった二人じゃ物足りないな」


 カラガルムは迫る火球をすべて切り捨てながら、切りかかってきたレドの剣を防いだ。

 その瞬間、レドの剣が粉々に砕けた。


「なっ!」


 瞬時に、レドは魔法が切られた理由を理解し、急いで後退した。


「それは、ソート副団長の魔法のはず!」


「違うな、いまは私のだ」


 体だけじゃない、記憶も、魔法も、ソートから奪ったのだ。

 ドッと冷や汗がレドの背中を伝った。

 剣先が触れただけで相手を殺せる魔法が使えるなんて、冗談じゃない。

 しかも死の魔法は、魔法すら殺せるなどとは……。


「すっかり戦士喪失か? どうする、そこの女」


 カラガルムがソニーユの方を振り返る。

 ソニーユはレドの後退を目にしても狼狽えず目標に近づきつつあった。


「お前の自慢の槍もぶっ壊してやるよ!」


「勘弁してよ、高いんだから」


 ソニーユには一つ懸念があった。

 最強の自負がある彼女が、噂話だけで意識していた人物、それがソートであった。

 聖騎士団副団長が所持する死の魔法と、自分の怨槍ラズテスカがぶつかったら、どうなるのだろう。

 ソートが死んでしまい、検証する機会は二度とないと思っていたが、まさか大一番で決着がつけられるとは、幸か不幸か。


 カラガルムが剣を振り下ろす。

 ソニーユは槍を横に持って防御の姿勢を取った。


 すべてを殺す魔法と、あらゆる魔法を打ち消す槍。

 二つの武器が触れ合う。


 ラズテスカは、カラガルムの剣から主人を守りきった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ