表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コント『ギオン・オフ』

作者: 町野街灯

〇舞台中央にレジがあり、店員が立っている。そこへ客が入ってくる。


店員「いらっしゃいませこんにちは! いらっしゃいませこんにちは!」


客「あの、すみません。欲しい擬音があるんですけど」


店員「はい、どういった擬音をお探しでしょうか?」


客「かっこいい系の擬音でなんかいいのないかなって」


店員「でしたら、『ゴゴゴゴ』なんかどうです?」


客「『ゴゴゴゴ』? それってどんな……?」


店員「よろしければ試音できますが?」


客「試音? 試着みたいなものですか?」


店員「はい。強く拳を握りしめて仁王立ちになってください。……あ、もうちょっと険しい顔つきで」


〇客、言われた通りにするとSEで『ゴゴゴゴゴ……』という地鳴りの音が三秒ほど流れる。


客「おお! 強そう! 怒りを隠しきれない世紀末覇者の感じがしますね!」


店員「こちらおすすめですね。購入すれば、いつでも好きなときにこの『ゴゴゴゴ』を出すことができるようになります」


客「いくらですか?」


店員「六千円ですね」


客「安い! さすがギオン・オフ!」


店員「新品を扱うお店なら二万円はするのですが、うちは中古なので。これは状態もかなりいいのでお買い得だと思いますよ」


客「中古ってことは、これを売っちゃった人がいるんですね。売った人はどんな人だったんですか?」


店員「それは個人情報なのでちょっと……。ただ、『もう闘いは終わった』とかなんとか言ってましたね」


客「絶対、何かの戦士じゃないですか! へえ、すごいなあ。……あ、他にも試音してみていいですか?」


店員「もちろんです。おすすめで言うと、これですかね。ちょっと中指で眼鏡をくいっと上げる仕草してもらっていいですか?」


〇客が言う通りにすると、SEで『キュピーン』という効果音が流れる。


客「すごい! めちゃくちゃ頭の切れるやつみたい!」


店員「あとはこれですかね。ちょっと掌を広げて前に出してくれません?」


〇客、言う通りにするとSEでビーム音。


客「おお! 何かのビーム出た!」


店員「実際には出てないですけどね」


客「ちなみにこれはいくらですか?」


店員「六億円です」


客「ええ! 高すぎないですか?」


〇SEでテッテレーというドッキリのときの効果音。


店員「うっそでーす! ほんとは五千円ですよ」


客「なんだあ!」


店員「こういったパーティーグッズ的に使える擬音もあるんですよ。あとおもしろいのはこれとか……」


〇SEで『カポーン』という銭湯のシーンでよく使われる効果音。


客「あ、銭湯で聞くやつ! これってずっと気になってたんですけど、何の音なんですか?」


店員「すみません。私も分からない謎の擬音なんです」


客「店員さんも分からないのか。まあ、これはいらないかな」


店員「これなんかどうですか? 何か言ってみてください」


客「何でもいいんですか? ……じゃあ」


〇客が何か喋ると、それにかぶせてSEで自主規制のピー音が流れる。


客「放送禁止用語の音だ!」


店員「こんなのもあるんですよ。ちなみに、さっきなんて言ってたんですか?」


客「ジャガイモの皮をむくときは切込みを入れて茹でてからやるとむきやすいですよ、って言いました」


店員「NGワードどころか、有益な情報でしたね」


客「それはそうと、どの擬音がいいかなあ」


店員「かなり迷われてるようですね。そんなときは……」


〇SEでドラムロール音。


店員「さあ、どの擬音!?」


〇客、ドラムロールの後で……。


客「最初の『ゴゴゴゴ』で!」


店員「お買い上げありがとうございます!」


客「ドラムロールの擬音のおかげで決断できました」


〇客、言いながら財布を取り出し中身を確認する。


客「あれ? 確か六千円でしたよね?」


店員「ええ」


客「すみません。三千円しか持ってなかったです。今日は諦めるか……」


店員「お客さん、ここはギオン・オフですよ? お客さんのいらない擬音の買い取りもできます」


客「ああ、そうか! ぼくのいらない擬音売って、そのお金で『ゴゴゴゴ』を買えばいいんだ」


店員「お客さん、ちょっと失礼しますね」


〇店員、袖にいったん引っ込み紙を一枚持って出てくる。その紙を客に見せながら。


店員「こちらがお客様から買い取りできる擬音の一覧です」


客「ああ、やっぱり僕は持ってる擬音少ないんだなあ。……うん? これってこんなに高く売れるんですか? これにします!」


店員「え? これはやめておいた方が……」


客「なんでですか? これにします! こんなに高く売れるんだもん」


店員「ほんとにいいんですか……」


〇と言いながら店員、客の胸にバーコードリーダーを当てる。


店員「これ、心臓のドキドキっていう擬音だから、これ売るとお客さんの心臓も止まって死んじゃいますよ」


客「え?」


〇SEで『ドキドキ』という効果音が流れ、やがて途切れる。間をあけて、今度は『テッテレー』のSE。


店員「嘘ですよ。無くなるのは音だけで、心臓はちゃんと動き続けます」


客「なんだあ、良かったー! まあ、それはそれで困りそうだけど」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ