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魔法って

ここだけの話。


他所では通じないかもね。

 



 私には常々、思っていた事がある。


 『魔法』とはなんぞや。と。




 魔法っていうのはアレだろう?不可解な結果の埋められない過程をなんとかして埋めようとして、それでも埋められず、言うに事欠いて「魔なる術法である!」とか負け犬の遠吠えみたいに言った結果出来上がったような言葉の事だろう?

 魔法とは神秘だ。元々、メカニズムの不明な現象の総称として便宜的に当てられたのが魔法という言葉だったはずだ。それはちょうど、任意の不明な人物に対して「彼」とか「あの人」とかを用いるのと同じようなものだ。つまりは代名詞的に使われる言葉だ。魔法とは抽象的であやふやで空っぽな言葉なのだ!

 だというのに、現在の人々は高度な技術によってもたらされた摩訶不思議な現象を指差して「『魔法』みたい!」と言うではないか。何だそれは。『魔法』とはなんぞや。

 考えてみてほしい。君は友人に「あのひとに似てるね」と言われてどう思うだろうか。私ならば「誰だそれは」と思う。

 あるいは数学でよく使われるxで例えたらどうだろうか。毎日変わる体重計の数字を見て、「任意の実数xみたいだね」なんて言う人間を私は知らないし、私も言わない。


 ところが、『魔法』だと通じるときた。実に摩訶不思議。まさに「魔法のようだ!」




 さて。おかしいとは言ったが、少々こじつけが過ぎたようだ。実際は何らおかしなところはない。きちんと意味は通っている。

 では何がおかしいのか。それは前提が一定でないことからくる違和感だ。

 前提とは、即ち魔法と『魔法』の意味だ。

 ここでは魔法とは「メカニズムの不明な技術の総称」である。

 対して『魔法』とは「掌から火やら水やらビームやらを出す、あるいはそれに類するような非現実的な現象を簡単な動作で引き起こすこと」である。『魔法』はアニメや映画などの創作物によって広く伝わり、一般化されている。故に「『魔法』のようだ!」という表現もまた一般的であり、自然と意味が通ってしまうのだ。従って、この表現はどこもおかしくはない。

 だが、前提を入れ違えることで冒頭のようなおかしさが(強引だが)現れるのだ。


 先程も述べたが、魔法とは神秘そのものだ。目の前の摩訶不思議な現象が何なのか分からない。どうやって起こしているのかもわからない。そういったベールに包まれた謎が魔法を魔法たらしめるのだ。

 研究が進み、つまびらかにされた魔法はベールを剥がれされ、明らかになった謎にはどこぞの偉大な研究者にちなんだ名が付けられ、人々にかつて魔法であったことを忘れられる。

 それはもはや魔法ではない。ただの技術だ。科学者が己の操る科学技術を指差して「魔法のようだ!」と言うだろうか?

 「魔法のようだ!」という声は前にする現象のことをよく分かっていないという愚かさを表すものだった。「魔法使いになりたい」など愚の骨頂。なぜなら、どれだけ魔法を究めたところで、手にした魔法はその時点で魔法ではなくなってしまうのだから。


 魔法使いは、論理的に存在が否定されていた。



 昨今、あらゆる場で『魔法』なる文化が取り入れられられている。『魔法』の源泉とも言える創作、その公開の場であるこのサイトもそうであることは最早言うまでもない。

 非常に多くの作品の中で『魔法』を使う描写がなされ、時には再現性のある技術として確立されていたり、研究されていたりもする。

 しかし、いや、やはりと言うべきか、『魔法使い』の像は誰も(どの作品も)が一定以上の共通認識を持ちながらも、決して一定に定まる事はない。


 少しだけ、私にはそれが魔法の執念のように思えた。

実は「任意の実数xみたいだね」って誰かに言ってみたいと思ってる

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