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スイカ割り(丸の内OLの恐怖体験)

作者: アマチュア主婦

このお話は丸の内OLのお話。

丸の内OLといえばキラキラを想像するがそうではなく、恐怖体験のお話。



私は、丸の内で10年ちかく勤めるアラサーの丸の内OL。


20代前半は出会いを求めて積極的に週末は合コンに行くというOLらしい日々を過ごしていた。

私はなかなか良い出会いがないまま気づいたらアラサー。

周りはどんどん結婚し、寿退社をしていく。


20代前半の頃とは違い、今は様々な出会いのツールがある。

結婚相談所、出会い系アプリ、街コン、、、


ある日、仲良くしている同僚に誘われ、街コン、に参加することになった。

私の参加した街コンは夏らしいスイカ割り街コンという少し変わった街コンだった。

あまり気乗りをしていなかった初めての街コンは想像していたより遥かに楽しい時間を過ごすことができた。


そして、期待をしていなかった、良い出会い、があった。

とても優しい男性、話やすく、何もかも包み込んでくれるような雰囲気。

久々の良い出会いに私の心は高揚(コウヨウ)した。


何度かデートを重ね、数ヶ月後、正式にお付き合いをすることになった。


夏に出会ってからお付き合いが始まり、1年をかけて私たちには沢山の思い出ができた。


そして彼のことをよく知ることもできた。


特に出会いのスイカ割り街コンでの事は今でもよく覚えている。


街コンでは男女がペアになり、目隠しをし、同じ棒を持ち、周りのかけ声を聞いて一緒にスイカ割りをするといった内容。


私たちはペアになり目隠しをし、同じ棒を持った時、距離が近くなり思わずドキドキしてしまった。

ドキドキしつつ私は彼の身体のベタつきが気になった。

少し糖分を含んだような身体のベタつき。

スイカ割り街コンだから準備している時にスイカの果汁が体につきベタついているのかな、と思った。


私たちはスイカ割りを楽しんだ後もフリータイムでお互いのことを沢山話した。

まるで昔から知っているかのように会話は盛り上がった。


彼はとても聞き上手だ。


不思議だったのは会話をしている時に何度もカブトムシやクワガタが彼に向かって飛んできた。


人に向かってカブトムシやクワガタが飛んでくるなんて今まで見たことがなかったので、大笑いをした。

それがまた二人の距離を縮めたのかもしれない。

今となっては虫たちありがとうと思っている。


秋にはお付き合いし、旅行にも行った。

旅行で私たちは初めてセックスをした。

彼はベットの上でもとても優しく、

そして甘かった。

雰囲気が甘いのではない。

彼を愛撫した時に肌が甘かったのだ。


冬、彼のお家に泊まることが増えていた。

彼の代わりに洗濯をしていた時、彼の服からほのかに瓜の香りがした。

出会った夏のスイカ割りを思い出し、微笑みが止まらなかった。


年が変わり春、

お花見の季節で桜をバックにたくさんの写真を撮った。

客観的に写真を見てみると彼は黒子(ホクロ)が多いことに気がついた。

それも彼のチャームポイントと思った。

可愛く、そして愛しいチャームポイント。

とにかく私は彼を愛していた。


そして夏、私たちは最高に楽しかった1年の時間(トキ)を共にし今に至る。


今日は出会った日、そうスイカ割り街コンで出会った私たちにとっては思い入れのある日だ。

もちろんデートをする予定だ。


私たちは付き合った当初からよく行くカフェに入った。

いつもの馴染みの店員に挨拶し、いつもの席に座る。


席に着き、一息つくと彼の顔が突然赤くなっていった。


「大丈夫?」と聞くも返事をしない。


彼の黒子の多い顔はさらに赤くなっていき、顔全体に汗の水滴が浮き彼の顔はまるでスイカのようになっていった。


そして、彼は何かのスイッチが切れたかのように椅子ごと真後ろに倒れた。

倒れたと同時に、あたり一面まるでスイカ割りをしたかのようにカフェの床が真っ赤に染まった。

血ではない。

彼の姿は消え、床にはスイカの実、タネ、カワが散らばっている。


「え・・・」

私は何が起きたか分からず呆然と立ち尽くしていた。


周りもざわつき、「なんでこんなところにスイカが散らばってるんだろ〜」

ちらほら声が聞こえる。


馴染みの店員が駆け寄り、

「お洋服大丈夫ですか?」

と聞かれたが、すぐ反応できず

「なんでこんなところにスイカが、、、

大丈夫ですか?」


と、また声をかけられ我に帰り、


「すみません、私といつも一緒に来てた男性見ました・・・?突然スイカが割れたと同じくらいに居なくなってしまって」



すると店員さんは、

「ご一緒に、男性・・・ですか?」



「はい、いつも私とこのお店に一緒に来る、顔に黒子が多い男性です。」


店員は怪訝な顔をして数秒ほど私の様子を見ながら


「・・・お客様、いつもお一人でカフェにいらしてますよね。どなたかお連れしていらしていただいたのは見たことがございませんでしたが・・・」


この店員は何を言っているんだと思い、声を震わせながら


「いつもあなたに私とその男性で挨拶してたじゃないですか?いつも来てたのに覚えてないんですか?

今日も一緒に来て、お店に入ったときあなたに挨拶しましたよ?!」


店員はいつも親切で柔らかい雰囲気だが、初めて見るような強い表情で

「はい、いつも挨拶していただいてます。ですが、いつもお客様はお一人でいらしてます」

と言い切った。


店員は頭がおかしくなったんだと思い、別の店員さんにも必死で聞いたが、


全員答えは同じだった。


誰も私の彼氏を見たことがない、と言うのだ。


私は走って家へ帰り、部屋の彼との思い出を漁った。


写真を見ると、一緒に撮ったはずの写真には私1人しか写っていない。

どの思い出にも彼が居たという事実が跡形もなく消えているのだ。


私は無我夢中で彼のマンションまで走った。


彼のマンションにつき、彼の部屋の917号室に向かうと・・・


私は絶句した。


「部屋が、、、ない」


マンションのオーナーに連絡をし、カフェ同様に聞くも、同じ反応。

そしてもともと917号室は存在しないと一点張り。


家に帰り、眠れないまま翌日を迎え精神がボロボロの状態で会社に出社した。


顔にも出ていたので、スイカ街コンに一緒に行った同僚に声をかけられた。


「体調悪そうだけど、何かあった?」


声が思わず震えながら

「同僚とも一緒に食事したことある彼が、昨日突然消えたんだよ・・・」


同僚は顔を歪ませ

「・・・何言ってんの?あなたと2人で食事はよく行くけど・・・彼?あなたずっと独身じゃん」


同僚は覚えていてくれてると最後の砦だと思い期待していたので、

その場に立っていられず会社のトイレへ駆け込んだ。



「私と今まで一緒にいた男は…誰だったの…」



胃が痙攣し、激しい咳がでた。

口から何かが出たのを感じ、


ふと、顔を見ると、、頬と咳を受け止めた手にはスイカの種が付いていた。


体は糖分を含んだような汗がじっとりとしていた。


「私・・・も?」



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