秋葉原ヲタク白書31 神アプリに気をつけろ
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第31話です。
今回は、新興宗教「洪水の化学」の教祖が子作り宣言?お相手にお騒がせメイドのリンカが選ばれます。
ところが、有頂天になるリンカに彼女の浮気を告発するブラックメールが届き、明らかになった浮気のお相手とは…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 "店外交友"の嵐
"店外交友"とは、メイドが店の外で客と会うコト。モチロン厳しく禁止されてる。
ここら辺"同伴"のノルマが普通にある本格的?な水商売と大きく異なるトコロだ。
えっ?僕とミユリさん?
まぁ、僕達はそのぉ、長年のお付き合いの中から何となくこうなってるワケで…
良き御主人様&良きメイド諸嬢は、決してマネなどせぬようにしてもらいたい←
さもないと…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ミユリ!大変なのっ!極秘でコッソリ相談に乗って!今すぐ!」
「まぁ、リンカ。そんな大声じゃ極秘もコッソリも無理でしょ?確かに今月もソロソロ厄介ゴトのタイミングょね?さぁ!今月はなぁに?」
「実はね、私、大教祖様と結婚するコトになったの!ソレも極秘で!コッソリと!」
ココは、僕の推し(ているメイドである)ミユリさんがメイド長を務める、老舗の御屋敷。
いつも御屋敷の中で事象が重ね合わさり曖昧としてるので"量子力学バー"と呼ばれる。
し、し、しかしリンカが結婚だと?!
「な、な、何でそうなるの?さすがの私もビックリだわーwそもそも人として許されるの?デキ婚?」
「うーん。答えは難しい。未だ妊娠はしてないけど1種のデキ婚カモー!全く新しいタイプの結婚よっ!」
「100%間違いなくウルトラ厄介ゴトだよねっ!じゃ後はガールズトークで!さよならっ!」
逃げ足の速さはアキバ1の僕だがリンカに襟首を摘まれる。コラ!猫じゃないモン←
リンカは歩く厄介ゴトで、前回は米中スパイ合戦に巻き込まれ危うく死にかけてるw
しかも、昌平坂の途中で勝手にキスされ、その様子がアキバ中に配信されて大騒ぎ。
まぁ、アレはサイバー屋のスピアが防犯カメラをハッキングしてたからではアルが。
とにかく!君子、リンカに近寄らず←
「お待ち!逃がさないわょテリィ!ミユリと貴方のコンビにお仕事を発注スルんだから!」
「悪いな。お盆休みなんだ」
「じゃ仕方ないわ。今宵、御屋敷にお集まりの御主人様方!このテリィと逝う男は団子坂(昌平坂)で私の唇を奪い、その時、卑怯にも舌を…」
あ、わ、わw
リンカは、ミユリさんの古馴染みで、萌え始めた頃のアキバを知るベテランメイドだ。
まぁ、恋愛体質なので御屋敷は転々としてるが基本的に逝く先々で天下をとるタイプ。
そんな彼女は、新興宗教"洪水の化学"の信徒、と逝うか、上級幹部の顔も併せ持つ。
最近は教団が経営多角化で始めた御屋敷のメイド長とかやってたが…あ、ナース長か。
「そうょ。やっと本気で始めた新規事業なのに経営をほっぽらかして大丈夫なの?それでなくても最近コス(プレ)キャバ(クラ)って乱立状態だから激戦なんでしょ?」
「大丈夫。そっちは経営のプロがテコ入れしてくれて売上もバッチリょ。みんな、医局アプリ"お昼寝ナース"はインストールしてくれてるかなー?」
「おおっ!」
御屋敷の常連からもパラパラと手が上がる。
そんなアプリがあるのか!油断も隙もないw
でも、そんなコトより"結婚"だょ問題は!
「実は、極めて極秘性の高い話だけど、今の大教祖様がお世継ぎを設けるコトになったの!それで教団内でも選りすぐりの美女ばかり何名かで性的に合致するパートナーの座を争ったのっ!で、私が並み居るライバルを倒して圧倒的に勝ち残ったワケよっ!ねぇ!絶対に秘密よっ!この話っ!」
「とにかく、思い切り大声で叫ぶのはヤメテ頂戴。で、その何チャラのパートナーって何?さっき、リンカは結婚スルとか逝ってたけど、結婚とは違うの?」
「だから!性的な合致なのよっ!でも同性同士じゃナイわょ!男には女、女には男!つまり大事なのはセックスの相性なのよっ!」
こんなに元気よくまくしたてられたのでは、もはやシモネタですらナイ。
お願いだから"セックスの相性"とか大声で叫ぶのはやめてチョンマゲ…
と思ったら、リンカが急に声を潜めて逝う。
「で、ココから先はミユリとテリィたんにだけ話があるの。顔貸して」
「貸してもイイけど返って来ないと困るな、顔は」
「おバカ逝ってないで。ホラ、テリィたんお薦めの外階段の踊り場に逝くわょ。おいで」
たがら猫じゃナイんだょ!
御屋敷は昭和通り沿いにある雑居ビルの2FにありEVもあるが外階段を使うコトも多い。
で、外階段の途中には踊り場があり、今までもソコでは様々なイベントが発生しているw
「実は…数日前から恐喝メールが来るの」
「ええっ?今までは来てなかったのか?!ってか、いつもアレだけ大騒ぎしてて、よく今まで何もなかったな!むしろ、よかったな、来て」
「だ・か・ら!私って、今、大教祖様と大事な時でしょ?困るのょブラックメール」
そして、リンカが僕とミユリさんに見せてくれたのは…数枚の画像だ。
恐らく、駅近ホテルの"24"に入る男女、スキップし振り返った女は…
もちろん!我等がリンカだw
ホテルにスキップで入るか?
やり過ぎだろ?何才だょ?笑
連れの男は…愛しの"洪水の化学"の大教祖様か?ん?顔の輪郭とか、面影とか…
確かに似てルンだけど、何処か違うような気もする…あ、若いんだ!若過ぎるw
「リ、リンカ!まさか貴方?」
「そうなの。彼は…大教祖様の息子なの」
「究極の"店外交友"だろ、コレ」
第2章 ブラックメールを追え
「リンカ!何てコトするの!人の道、ハズれてるから!もう面倒見切れナイわ!」
「ごめーん、ミユリ!許して、ホンの出来心なのっ!」
「あれ?でも確か大教祖の息子サンって…」
実は"洪水の化学"の大教祖とは個人的に付き合いがあって、幹部の造反を防いだり、女スパイを退治したりして、色々と貸しがアル。
未だ若いのにカリスマに富み、常に新興宗教ランキング上位に教団を導くやり手なのだ。
しかし、辣腕ビジネスマン同様、家庭は悲惨で教団創設以来の糟糠の妻とは離婚してる。
母方について父と絶縁した息子は、反動から反カルト宗教の活動をやっているそうだ。
教団の暴露話をウェブにUPし信徒に脱退を唆し腰巾着(側近)批判を過激にリピートw
その息子とリンカ、君は!笑
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ビル風が吹き下ろす外階段の踊り場で、衝撃の新事実が発覚する!
お騒がせメイドのリンカ、大教祖と子作りに励む傍らで息子と浮気w
しかも、その息子は反カルト宗教活動家←
女の打算で、大教祖最優先を即断し、息子とは絶交を決意したリンカはソレをネタに脅迫してくるブラックメール退治を僕達に委ねるw
御屋敷が営業中で手が離せないミユリさんを後に残して僕とリンカは昭和通りに出る。
そのまま国民的ハンバーガー店に入りB1に降りると色々とハンドサインが飛んで来る。
ココはストリートギャング"セクシーボーイズ"の溜まり場だ。
僕は、彼等とも色々とあってナゼだか幹部Tシャツを着てイルw
目指すは、奥の電源席を独占し、NASAみたいにPCを並べてお仕事中のスピア。
彼女は、セクボお抱えのサイバー屋で、まぁweb関係は先ず相談するのが定石だ。
「あ、テリィたん!また踊り場に女を連れ込んだんだって?つぼみん(ミユリさんのトコロのヘルプ)から聞いたから!誰?その女?また元カノ?何番目?」
「いやいや。コチラはブラックメールに悩むか弱き乙女なんだ。相談にのってあげて欲しいぞ!」
「貴女っ!もしかして、私が団子坂でテリィたんとエッチしてるのをアキバ中に配信したのは貴女ねっ!なるほど確かに嫉妬深そうな女だわっ!」
だからエッチはしてないから!
と逝う前にスピアが反撃開始w
「オバさん!私はね、スピアって逝うの。テリィたんの元カノ会長で、実はミユリ姉様よりも胸があるのよっ!アンタも今後テリィたんにまとわりつく気なら、大人しく私の後ろに並んでょ!」
「私は彼の依頼人なのょ?私から見れば貴女は下請け!シッカリ働いて頂戴!」
「まあまあ。で、このブラックメールなんだけど。頼むょスピア、僕の元カノ会長だろ?」
ワケわかんない理屈でスピアを説得するが…ミユリさんがいればいつも治まるのになw
ソレでも、お互い顔は明後日の方を向きつつもリンカのスマホとスピアのPCが同期する。
即座に…
「ダメ。このブラックメール、追跡不可能。プリペイド携帯からだわ」
「あーらホント役に立たないサイバー屋さんだコト。腕が悪いんじゃないの?」
「頼むょ。みんな仲良くネ」
ソレでも、スピアが意味ありげにウィンクするので、この場は収め御屋敷に戻るコトに。
熱帯夜で少し歩くだけで汗だくだけど、何と御屋敷前の路上で常連がアメラグやってるw
あ、あのタッチフットって奴?
パスとタッチダウンの応酬だw
何故かスポーツ嫌いの僕までジオンチームで歩道を駆け回り、無意味に汗だくになる。
リンカも、しばらく見物していたが、その内に呆れたのか何処かへ姿を消してしまう。
結局、この夜は何も起こらない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝、スピアから朝マフィンのお誘い。
僕は、出社前にアキバへ大きく寄り道。
基本的にホットドック派なんだけど、時折無性にしょっぱい朝マフィンは食べたくなるw
あの小うるさいポテトは不要で、薄いパテを挟んだ朝マフィンとアイスコーヒーが神だ。
店頭にタムロするセクボの朝番にハンドサインで挨拶しB1に降りて逝くとスピアがいる。
昨夜見たのと同じ配置のPC画面に囲まれながら、腫れぼったい赤い目で僕を見上げる。
怖いw
「徹夜した。でも、スゴいコトがわかった。アキバに"神"がいる。ソレが誰だかはわからないケド」
「ええっ徹夜?"神"?何ゴト?」
「あのオバさんメイドのスマホにインストールしてあったアプリだけど…」
リンカが宣伝していた御屋敷のアプリ"お昼寝ナース"のコトだ。
ダウンロードで御帰宅無料とかメイドの最新シフトをゲットとか。
さぁ君も迷わずダウンロードだっ!
ところがスピアが解析してみたら…
何と、このアプリをインストールした瞬間から、スマホが監視追跡装置と化して、プライバシーは全て"神"に筒抜けとなるらしいw
元々スマホのGPSがオンだと、ユーザーの位置情報はバレバレなんだが、ソレをアキバの地図に落とせばリアルタイムで追跡が可能←
"神"は、このアプリをダウンロードした者が、いつ何処で何をしているのか、全て監視している!さながら"全能の神"のように。
今も"神"は、何処かで君と犯罪データを照合して問題行動を調べたり、行先や滞在時間から不倫を暴いたりしているカモしれないw
「このアプリ、ホントに良く出来てる。結局あのオバさんメイドも、このアプリで追跡されて浮気現場を撮影されたんだわ」
「げげ!しかも、浮気相手もアプリユーザーだった日には双方向かつ立体的に追跡されちゃうワケだね」
「"人の人生覗き見大好き神様"が誰だかは知らないけど、テリィたんはダウンロードしちゃダメ絶対。ソレでなくても、元カノがいっぱいいて収拾つかないンだから、コレ以上ややこしくしないで!ミユリ姉様には黙っとく」
ありがとう、スピア!
ん?何を黙っとくの?
第3章 その男、ボーノ
小綺麗な爽やかポロシャツ野郎だ。
ココは、新興宗教"洪水と化学"が入居する中央通り沿いにあるタワービル22Fの1室。
僕がリンカと一緒に訪れた相手は、教団の新規事業担当でリンカの御屋敷のオーナー。
聞けば、新しい祭祀長(リンカの元カレの後釜w)で、前回、米中が争奪に動いた第5世代チップを開発したスタートアップの出身。
「私はボーノ。ボーノと申します。よろしく」
「テリィです。今日はどうも。うーん貴方が"神"だったのか」
「いいえ。この世に"神"はメジア大教祖お1人です。私は、メジア大教祖より、お2人に最大限のお力添えをするよう、命を受けた者に過ぎません」
宗教家っぽいのに外見はシリコンバレーのスタートアップCEOにソックリだょ。
どちらにせよ僕達とは相容れないが、そんな両者を結ぶ唯一の共通言語は…金←
「専用アプリによる顧客囲い込みなどが奏功し"昼から!コスキャバ「ナース天国」"の売り上げはV字回復です。かつて風俗の暗黒大陸とされた"昼キャバ需要"に対する私達の明確な回答がココにある。私達は今"昼萌え"のビジネスモデルを提案します!」
「あ、やっぱりキャバだったのか!リンカ、つまり君ってメイドじゃなくてキャバ嬢だったったんだね。店も、もはや御屋敷とは呼べナイな。そもそも、君はナースだし」
「あのねぇ。アキバのコスプレ店舗はみんな"御屋敷"で良くない?既にメイドだけがブランドじゃナイのょビジネスシーンでは」
挨拶がわりにアキバっぽい経営論を交わした後、おもむろに僕から変化球を投げる。
「しかし"神アプリ"ですね。ユーザーの全て、人生そのものを覗くコトが出来る神のアプリ!いや悪魔のアプリ、かな」
「何のコトですか?」
「実は、僕には親切なハッカーの友達がいましてね、最近、御社の社内LANに立ち上がった"高天原"と逝うシステムがスゴいって教えてくれたンですょ」
ボーノは涼しい顔だ。
落ち着いて口を挟む。
「"高天原"は労務管理システムの1種です。御存知の通り"高天原"とは神々が住まう天空の国。神の視座からメイドさん達を労務管理する、とのイメージです。実際、彼女達のスマホの位置情報をモニターするコトにより、他の店に引き抜かれそうなメイドは誰か、店外交友してるのは誰か、どの客と付き合い、どのホテルへ行くのか、まで一目瞭然で"推測"するシステムなのです」
「ボーノ!貴方って人は!メイドだって、メイド服を脱げばプライバシーがあるのよっ!」
「待ってください。別に私自身がそうしてると言ったワケじゃない。そーゆー労務管理もあり得ると申したまで。念のため申し添えると、そもそもインストールしたアプリはメール同様、社内のシステムの1つであり、得られたデータの使用権は会社側に帰属します。例えば、共同経営者の動向なども、会社としては当然承知しておくべき事項であり、データを集積する義務があると考えています」
意味ありげにリンカを見遣るボーノ。
うーん。やはり"神"はお前なのか?
ではソロソロ"神"に背くとしよう←
「ところで、実は最近、巷では匿名サーバーからのブラックメールが急に増えましてね。しかも、届くメールは"お前を見てる""どんな服を着て、誰と会ってるか、俺は知っている"なんて似た句読点、似た文面、似た文法のモノばかり。一目瞭然でコレらは同一人物、いや"同一神"からの発信と思われルンdeath」
「し、知らない。そんなブラックメールなんて知らないぞ!」
「しかも、ブラックメールは、メイドだけじゃなくて御主人様にまで届いてる。内容もメイドとの"店外交友"の域に止まらず、顧客の性的嗜好までを恐喝の対象にしてイル」
ココで僕はジュリ(セクボのNo.2)から預かった写メのプリントアウトをヒラヒラさせる。
ソコには知らないヲタクが写ってるが、彼は雑居ビルの屋上から双眼鏡で何か覗いてる。
「彼は、実は児童ポルノの愛好家です。裏アキバにある小学校ビル4Fにある体育館がお気に入りだったが、3日前、画像付きのブラックメールを貰って会社に画像を送らないとの条件で10万円を支払ってる。ところで、盗撮中の彼を見下ろすこの画像、近所の高層ビルから撮ったみたいなんだが…おや?このビルからも見えますね。この屋上。やや?アングルも似ているぞ?」
「何が言いたいんだ?」
「いいえ。何か逝いたいのは私達じゃない。貴方に歌って欲しいのょ」
おおっ!リンカが逝うとキマルなw
でも、もう少し追い込まないとね←
「で、こーゆーブラックメールは、全て判で押したように、足のつかないプリペイド携帯から発信されてルンだ」
「なーんだ。じゃあ発信してるのが誰だかわからないじゃないか!」
「ところが、往々にして"神"は、愚かにも変なトコロでカードを使い給う癖がある。折角のプリペイド携帯もカードで買えば、ソコで足がつく。実は、僕と仲のいいハッカーは凄腕で、個人のカード履歴なんて平気でハッキング出来ちゃう。ついでに銀行口座の入金記録も見れるから…おや?ボーノ、まさか先月中旬に10万円の入金とかなかったょね?」
ボーノの顔が見る見る青ざめて逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところがボーノはシロw
しかも可哀想な人だょ←
博士号こそないが天才肌の技術者で、例の次世代チップは、彼の作品と言い切っていい。
でも、膨大な開発資金の調達に苦労する矢先に"宗教法人詐欺"に遭って大火傷スル。
闇マーケットでは色々なモノを売られてるが人気商品の1つに休眠中の宗教法人がある。
税法上の特典を求める人や大教祖になりたい人って意外に多くて、常に品薄状態なんだ。
因みに、宗教法人の市場価格は、地方だと1000万を切るが東京なら5000万で売れる。
地方で買い東京で売れば儲けは4000万wただ監督官庁が都道府県なので越境が難しい。
ソコに企業秘密があると騙されボーノは出身地の岐阜で休眠法人を買い取ったのだが…
コレが越境出来ないwその内ブローカー連中が姿を消して、ようやく詐欺だと気づく←
次世代チップ完成を目前に資金が尽き呆然とするボーノに"洪水の化学"が接近する。
実は、有名な神社仏閣でも宗教法人でないトコロは意外に多く物件を常に稀少価値だ。
そんなこんなで、いよいよ金策に行き詰まったボーノの前に、ある日、大教祖が現れる。
「君は些細なコトで怒ってイルね。詐欺のコト?やがてショートする資金のコト?私なら助けてあげられる。内なる怒りを腹の底にイメージせよ。然る後に天上よりの洪水を思え。息を吸い込み、そして、怒りを洪水と共にカラダの外へと吐き出すのだ!全ては君次第だ」
救われたと歓喜の涙を流すボーノを入信させた大教祖は宗教法人を二束三文で喜捨させる。
そして、いかなる力学を働かせたか、法人は越境を果たし電脳都市アキバを聖都と定めるw
コレが、ボーノと彼のスタートアップが潤沢な資金を得て次世代チップ開発に成功し"洪水の化学"も宗教法人化を果たした経緯だ。
今、ボーノはスタートアップのストックオプションを得て多額の含み益を持っている。
端金欲しさにツマラナイ恐喝をしたようだが、今は悔い改めたのかヤタラと協力的だ。
教団員の人事ファイル、犯罪歴を含む全記録とデータ、幹部の"高天原"へのアクセス記録…リクエストすれば何でも見せてくれる。
下手に弁護士に相談して調査が長引き、マスコミに知られたら…ストックオプションにどう響くかはボーノが1番よく知ってるのだ←
と逝うワケで、彼はホント…いい奴だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
押収?した資料の読み込みを進める僕とリンカは、ある日の夕暮れ、クーラー疲れを癒しに、UDXの2Fデッキで熱風に吹かれている。
「リンカ。大教祖から逝われてるのは子作りだけじゃナイんだろ?そろそろコッチは千秋楽だけど、そっちの宿題は片付けなくて良いのか?」
「あのね、テリィたん。相関関係と因果関係って別なのょ。確かに、大教祖から別口で頼まれてるコトはある。でも、ソレは子作りの条件ではないの。私、結婚は無理でも母親にはなりたいって、素直に思えた自分を大事にしたい。ねぇ。コレってそんなに酷いコトじゃないって思うの。アキバで働く女子として」
「でもさ、そーゆー気持ちをヲタクにわかれと逝うのは無理だょ。僕には、リンカがリンカのままでいられる道を選びなょ、としか逝えない。さぁ、ソロソロ教団の幹部を集めてくれないか?大教祖がお呼びとか逝えば済むだろ?リンカなら出来るょね」
第4章 アプリの神々の黄昏
ミユリさんは…怒ってイル。
ココは"洪水の化学"の最高決定機関"電卓会議"の場。大教祖以下、幹部が顔を揃える。
その場に僕とミユリさんが…特にミユリさんはマイクロミニのメイド服でお邪魔しているw
いや、このメイド服は教団側のリクエストなんだ。信じて欲しい。
今まで教団絡みの事件を解決する時はいつもこのメイド服なので…
験担ぎとは、いかにも宗教団体らしいょね←
しかしミニスカ虚しく"電卓会議"は白熱w
「な、何を証拠に!私はやってませんわ!大教祖様、どうかお助けください!」
「"高天原"へのログイン記録、アクセス内容から、信徒の個人情報漏洩源は貴方しか考えられない。また"学長室"から大量のプリペイド携帯が見つかった。その1部には恐喝先と交わした生々しいログが残っている」
「洪水より賜りし権限により、ココに"学長"を解任し破門とする。なお、教団は貴女を背任横領で告訴する用意がある旨を申し添える」
結局"神"は"学長"と判明する。
僕も知らなかったが"洪水の化学"は教団内に"洪水大学"という専門学校を持ってる。
信徒に大学教育"風"の教育を施すための施設らしいご、そこの"学長"が恐喝犯だと?
ビジネススーツのアラサー女子で、NGOで生き甲斐見つけバリバリ働いてます的な感じ。
高学歴とお見受けするが、修羅場には慣れてなくて、取り乱し席を立って大教祖の下へ…
「パチン!」
てっきり泣いて許しを乞うのかと思ったら、大教祖に平手打ちだw
直後に会議室の全てのドアが開きガードマンが飛び込んで来る!
見覚えのあるガードマンもいるw
その節は、お世話になりました笑
「ア、アンタが悪いのょ!何もかもアンタが悪い!そんなアンタに父親は無理!コレ以上、可哀想な子供を増やさないで!」
「思い上がるな!君に僕の何がわかる?」
「わかるわよっ!夫に捨てられた妻の気持ち、父に捨てられた息子の気持ち、みんな知ってる!貴方が捨てた妻も息子も、私には全て話してくれるのよっ!鬼っ!洪水にさらわらて地獄に落ちろっ!」
泣き叫ぶ女が外へ引きずり出される。
ドアが閉まりなお罵る声は止まない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
始まりは"学長"の野心だ。
元々、大教祖の息子は"学長"の教え子。教団内の施設では評判の良い学生。
しかし、いつしか禁断の関係が"学長"を内部告発者へと追い込んで逝く。
ライバル幹部の醜聞を息子に流しては失脚に追い込み、若くして幹部の一角に食い込む。
反カルト活動家に転じた息子にとっても醜聞は大歓迎でウィンウィンの男女関係が続く。
大教祖とリンカが子作りを言い出すまでは。
"学長"あるいは息子にしても、いつかは和解し教団に帰る絵を描いてたカモしれない。
しかし、その日は永遠に来ない。親子の絆は絶たれたのだ。家族は永遠に元に戻らない。
コレは"洪水の化学"版のマイフェアレディあるいはピグマリオンの神話だ。
芸術家は、自ら掘った彫刻に恋をするが、別の誰かが新たな彫刻を掘り始め…
で、蛇足なんだけど、ソレらを横目に薄々と万事承知しながら黙秘してたのがボーノだ。
"高天原"の管理者として全て知りつつ沈黙を続けたのはヒタスラ自社株を守るためw
教団が震撼する醜聞よりも株価!
うーん彼は、ホント…いい奴だ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"学長"は去り、残りの幹部は変わらぬ忠誠を誓い"電卓会議"は終わる。
会議室には、大教祖とリンカと僕とミユリさんが何となく残りダベリング中。
「私は…見たかったんだ。教団が醜聞に塗れた時に、誰が立ち上がるのか。そして、私の後釜に座りたがるのは誰か。私が、息子と逝うアキレス腱を見せた時、誰が動くのかを見極めたかったのだ」
「でもさー。ソレにしちゃ"電卓会議"のみなさんの動きって鈍かったんじゃないの?思ったより臆病で誰も動かないw炙り出す煙の加減に苦労したんだょな」
「ちょっち待った!大教祖!ソレじゃ私との子作り宣言は…"学長"を炙り出すためのブラフだったの?ホントは欲しくないの?私との赤ちゃん…」
血相を変えタメ口でいきり立つリンカw
ミユリさんのクスクス笑いが火に油を….
「あらぁリンカ。貴女、突然何を始めたの?急なお片付け?お客様でも来るの?」
「教団の書物とか壊れやすいモノをどけてるのょ!大教祖は…"最中"にあちこち場を移すから」←
「まぁ!ココは貴女達にとって神聖な"電卓会議場"なんでしょ?何をするつもり?」
「何ょ!自分だけ清純ぶって。同じ貧乳のクセに」
「あら、呼んだ?脚なら負けてないけど」
こうなると、もう僕には止められないw
無論、大教祖の手に負えるハズもない←
「テリィさん、私は…私は単に悪い波動を消したかっただけなのだ。君なら、わかってくれるょな?」
「モチロンわからないw ただ、リンカの相手はしてあげなょ。何事も環境を変えると"生産性"って間違いなく上がるから。君は結局、リンカを使って僕に内部告白者探しをさせたってコトだょね?また何かあったら、巻き込んでくれていいケド、次回は、もう少しヒネリがある方がいいな」
「やれやれ。テリィたんと組むのはホント楽しいな。しかし、今回も借りが出来たね。次は、息子と私が会う時に、また借りが増えるような気がするが」
え?結局、君は息子とは絶縁しないのか?
コレは息子との復縁と逝う仕事のオファ?
コレも"高天原"流の"愛の多様性"か?
「ねぇ。セックスしょ?テリィ、私の子作りに手を貸してょ。貴方の"ヲタク力"が必要なの。もう大教祖はアテにならないわ」
「や・め・て!私の目の前でしょ?ウチの御主人様に変なプレッシャーかけないで」
「うーん。変ではあるが…的確でもあるな」
「そう?少しは"その気"になった?」
「テリィ様!」
リンカ。
君は君のリクエストをクリアした僕の"ヲタク力"を褒めてくれルンだね。
でも、僕が"ヲタク力"を使うのは、決して僕がヒーローだからじゃない。
切ないから使うんだ。
この街は"力"なしで生きるには切ない。
見るものや聞くもの、嗅ぐ匂いの全てが。
やっとの想いでたどり着いた結論。
みんなの眼前で明らかになる事実。
その全てが切なく胸が潰れそうになる。
この想いを誰かに継ぐコトは出来ない。
だから、ごめんな。
諦めてくれリンカ…
って、リンカもタダじゃ倒れない!
彼女は、いつだって共倒れを狙うw
「しっかし、テリィたんもエリス(ミユリさんの前の推し)とは、結局うまく逝かなくて残念ね」
「ソッチかょー。あのなぁエリスとの間には…もともと何もなかったんだ。ソレこそミユリさんの前ではレッドカードだろ」
ココでミユリさんがナイスカットw
「…ねぇ、テリィ様。こーゆー時は、アイスクリームを食べに逝きませんか?」
「ええっ?どんなアイスクリーム?」
「たくさんあるんです。たくさん、たーくさん知ってるんですょ、私」
ヲタクって、実は多彩で豊かな才能に満ち溢れた生き物なんだょ。
コスプレして、声を変え外見を変え生き方まで変えてしまうから。
でも、そんな僕達もいつかは思い知るんだ。
どうしても隠し切れないモノがあるのだと。
ソレを"愛"と呼ぶんだ。
きっとアキバの外ではさ。
おしまい
今回は、お馴染みの新興宗教"洪水の化学"の新祭祀長と彼のスタートアップが開発したアプリを軸に話を展開してみました。
予め考えたネタを書き込もうとする余り重い筆致になってないか心配です。他方、従来にない短期間で書き上がりネタに追われる大事さ?も痛感しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。