表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/30

28話 非常事態

 ……生徒の様子を見守る教師たちは、あれこれと慌ただしく動いていた。


 校外学習が始まり、3時間が経過した。

 あちらこちらでギブアップする班が続出して、その対応に追われていた。

 そのため、フェイトをしっかりと観察するように言われていた教師も、外に出て別の仕事をしていた。


 そして……


「ふう……」


 忙しい時間が過ぎ去り、ようやく余裕を取り戻すことができた。

 疲れているが、泣き言は言っていられない。

 まだ全ての班がギブアップしていないのだ。


 残された班は……


「アーデルハイドくんがいるところ……ですね」


 しばらく観察していなかったけれど、なにかやらかしていないだろうか?

 一度気になると、妙に気になってしまう。


「おーい」

「あ、どうも。おつかれさまです」


 用事を終えたらしく、同じく席を外していた同僚の教師が戻ってきた。


「そっちの様子はどうだ?」

「私も外の対応に追われていて……しばらく席を外していました」

「そうか……アーデルハイドは? それと、姫さまは?」

「これから確認するところです」

「頼む。まあ……相手は、あのゴーレムだ。さすがのアーデルハイドも、為す術はないだろうな。ゴーレムを倒せるとは思えないし、ダンジョンをクリアーすることはないだろう」

「そうですね、そんなことは……」


 ありえない、と言おうとしたところで……


 ぱぱぱらーん♪


 気が抜けてしまうような、妙なファンファーレが鳴り響いた。


「「……」」


 二人の教師が固まる。


 そのファンファーレは……

 ダンジョンがクリアーされた時に鳴り響くものだった。


「ど、どういうことだ!?」

「わ、わかりません!」

「すぐに確認しろ、今すぐにだ!」

「は、はいっ」


 慌てて魔道具を起動して、フェイトたちの様子を見る。

 すると、そこには……


「「うそぉ……」」


 ゴーレムの手足を縛り上げて、その間にダンジョンの核を壊すフェイトの姿があった。

 ありえない光景に、教師二人は唖然として、そのままフリーズしてしまうのだった。




――――――――――




 ゴーレムは強大な力を持つ相手だ。

 そんなやつとまともに戦う必要はない。


 長い縄を用意して、ゴーレムの周りをぐるぐると回る。

 幸いというか、ゴーレムの動きは遅いので捕まる心配はない。


 そのままゴーレムの足を絡め取り、地面に倒す。

 そうして動きを封じたところで、今度は手を縛り上げる。


 命綱などに使われる特殊な繊維が練り込まれた縄だ。

 いくらゴーレムといえど、そうそう簡単に破ることはできない。


 そうして……ゴーレムの動きを封じた俺たちは、そのまま奥へ移動して、ダンジョンの核を砕いた。


「やったわ! クリアーよ!」

「なんで姫さんが偉そうにしてるんだよ。フェイトのおかげじゃねえか」

「フェイトはあたしのもの。それでもって、あたしのものはあたしのもの。つまり、あたしの功績ということよ!」


 なにその理論、怖い。


「アーデルハイドくん、聞こえますか!?」


 突然、先生の声が響いた。

 でも、先生の姿はない。

 どういうことだろう?


「あそこから聞こえるわ」


 セリスが天井を指差した。

 見ると、小型の魔道具が設置されている。

 形状からして、ここを監視する魔道具かな?


 監視するだけじゃなくて、声も届けることができるなんて驚きだ。

 戦いの技術は衰えているけれど、文明レベルは発展しているのかもしれない。


 戦う必要がなければ、その技術は衰退するけれど……

 人は、より豊かな暮らしを求めるものだから、文明レベルは上昇したんだと思う。


「アーデルハイドくん! それに、姫さまとスフィアさんも!」

「俺だけ呼ばれてねえし……」


 ノウンがちょっと拗ねていた。


「なんですか? 先生」

「よかった、ちゃんと聞こえていたんですね……今すぐにそこから避難してください!」

「え? どうしてですか? ちゃんとクリアーしたのに」

「それがいけないんですよ!」

「えっと……?」

「このダンジョンは、みなさんの育成のために学校が改造したもので……絶対にクリアーできないように設計していたんです。だから、核が壊される事態なんて想定していなかったんです!」

「言いたいことがよくわからないんですけど……別に核を壊したからといって、ダンジョンが消滅するわけじゃあるまいし……」

「そんな仕様にはしていません。ただ、ダンジョンの動力源たる魔力を確保するために、核一つでは足りなかったんです。そこで、強力な魔物を封印することで、魔力を確保していたのです。その封印に必要なのが……」

「……もしかして、核ですか?」

「そういうことです! つまり、今は封印が解けた状態で、魔物が……!」


 なんで、そういう無茶苦茶な仕様にするのかなあ!?

 なにかの弾みでクリアーされることだってあるだろうに!

 戦術が衰退しているせいか、先の見通しが甘すぎるよ。


「フェイト、見て!」


 セリスの悲鳴のような声。

 振り返ると、ダンジョンに封印されていた魔物……ドラゴンが姿を見せたところだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しい作品を書いてみました!
こちらも読んでもらえるとうれしいです。
↓のリンクから飛べます。
竜騎士だけど、バハムートに一目惚れされた件について
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ