3.生活
保護区の吸血鬼の中には、ある程度序列がある。人より優れた能力をもつ吸血鬼といえど、個体によって能力差があり、その能力によって保護区の中の序列が決まるのだ。
序列が高いと、保護区の中での扱いも特別になる。食事の質もそうだが、1人部屋になったり、優先的に欲しいものが手に入ったり、職員に対する発言権も強くなる。
カインはその中でも、特に上の序列にいた。幼いながらもその知力体力は他の吸血鬼を圧倒していたし、さらにその美貌も相まって、カインと繋がりを持とうとする吸血鬼はたくさんいた。それなのに、カインはあまり他者と関わり合おうとしなかった。カインはカインで、年相応の遊び相手が欲しかったのだ。
そんなカインが、アインが来た日を境に、常にアインとセットで行動するようになり、瞬く間に2人の姿は保護区中の注目の的となった。
「カイン、この公式がよくわからないわ。」
「そこは、こうして…こうすれば進めるよ。」
「あぁ、わかったわ。ありがとう。」
アインはアインで、人間ながら優秀だったのか、驚くほど保護区での生活に馴染んだ。最も、カインのそばに常にいるので、周りから特に干渉されることもないし、困ったことがあればカインがそっと解決してくれる。そしてアインのその容姿は、吸血鬼特有の美しさと疑われることはなかった。
カインは、アインと過ごすようになってよく笑うようになった。今まで求めていた話し相手の存在が、こんなにも心地よい存在だとはカインは思わなかった。それがアインだから尚更なのか、それともアインであるからなのか、優秀なカインでもわからなかった。
それでも、困ることがあった。
それは食事である。