第一章 始まりの日
2月のある朝。
俺は、いつも通りの学校へと続く道を歩いていた。
俺は南雲絵馬。南高校2年。
男なのに《絵馬》なんてのも、どうかと思うがな。
まぁそんな俺も、もう少しで3年になる。
時は早いものだ。
俺たちには長い時間でも、地球全体で見たらほんの一瞬にしか過ぎないのだから。
「おはよーさん」
「あ、なんだ、青島か」
「なんだってなんだよ…」
「いや、なんでもない、悪い悪い」
こいつは青島誠也。俺の中学校の時からの友達だ。
「お前、どうした?」
「昨日ゲームしてたら遅くなっちまった」
もちろん嘘である。
「ゲームばっかりしてると成績落ちるぞ」
お前よりはいいっつの
俺とお前じゃ50は順位違うだろ
まぁ、そんなことは置いておいて。
「おはよう」
「あら、おはよう」
俺の幼馴染の下北真夏。
中学の頃までは「絵馬ー!遊ぼー!」
とか言ってたのに、急に変わりやがった。
年月は、残酷だ。
しかし、妙に引っ掛かる。
彼女が変わったのは、彼女のお兄さんが亡くなった日からだった。確か。
真夏のお兄さん…下北夏矢は、家族でスキーに行ったときにコースを外れて転落してしまったと聞いた。
あの日から、彼女は…真夏は、少し冷たくなってしまった。
「なぁ、真夏。」
「なに?」
「お前さぁ…悩みとか、あるなら…言えよ…」
「悩み…」
「お前…中学の時、変わっちまったじゃん。」
「…」
「あのときから、お前、変だぞ」
「ッ!お前には関係ない!それは私の事情だ!」
「お兄さんが亡くなったからって…いつまでもめそめそすんなよ」
「お前に何がわかるんだ!お兄ちゃんは…!私のせいで…!」
俺はその時、昔の真夏を取り戻す決心をした。