ホラーゲームなんて嫌いだ
ホラーって嫌じゃない?
そういったものが好きな人ももちろんいるけど私は本当に嫌い。
嫌いっていうか、うん。控えめに言っても嫌い
理由は家族だ。家族仲はすごく良いし、友達からもご近所さんからも羨ましがられるほど理想の家族だと言える。
優しそうな母、しっかり者の父、頭の良い兄。
いやもう理想的でしょ?
みんな甘い。甘いんだよ。ゲロ甘。
私の家族の共通点、それはホラーゲーム
いつもニコニコして美味しい料理を作ってくれる母が画面の向こうとは言え、ゾンビや化け物相手にヒャッハー言いながら鉄パイプ振り回してる
ガタイが良くて、DIYとかもやってる多趣味な頼り甲斐のある父がゾンビの頭をハンドガンでぶち抜き「流石俺!ヘッドショットマスターだわ!」とか嬉々としてボタンぽちぽち。
高校の時はもちろん主席、そして有名大学に現役合格。そんな兄はホラゲの影響で武器オタク。ゲーム内で新しい武器を手に入れるたびに画面を見ながらハァハァしてる。
これが友達もご近所さんも羨む私の家族。
はっきり言おう。こんな家族は嫌だ。
真面目に嫌だ!
高校から帰ってきても、バイトから帰ってきても居間では私以外の家族がホラゲ団欒してるし…
毎日毎日家のBGMはゾンビや化け物の叫び声
家でイヤホンをすることがデフォルトになってしまったのはいつの頃だろうか。
今も自分の部屋でイヤホンで音楽を聴きながらゴロゴロしている
ホラーゲームなんて嫌いだ。
昔はこうじゃなかった。みんなで仲良くテレビを見て、笑い合ってた。
まだ小さい頃、家族でみんなでワイワイしていたのが懐かしい
自分もそこに混ざれば良いだけの話だが、どうしてもそれが出来ない。
怖い、気持ち悪い。でも話には入れないのが寂しい。
そんなことを思いながら思わず涙が出てきた。
馬鹿らしい、と涙を拭き部屋を出た
「お母さん甘いもの食べたいからコンビニ行ってくるね」
居間のドアの向こうで騒いでいる家族に声をかける
「一人で大丈夫?お母さんも一緒に行くわ!」
「大丈夫大丈夫。ゲームやってなよ。コンビニなんて目と鼻の先じゃん」
「でも夜だし心配だし…ゾンビ出てきたら大変!」
出てこねーよ!と思わず言いそうになったが、同伴を断り歩いて5分ほどのコンビニへ向かった
目的地のコンビニに着き、目当てのものを物色する。今日はプリンの気分!
みんなの分も買ってあげよう…
これを食べながら久しぶりにみんなで話をしよう、そんな事を考えながら精算を済ませコンビニから出る
手に持つプリンを見て少し口の端が上がった
歩く足も行きとは違い少し早足になる
家に帰るのがこんなに待ち遠しいのは久しぶりだ!なんて思っていると後ろから悲鳴が聞こえた
驚き振り返ろうとしたその時後ろからすごい衝撃がきた
一瞬にして体が宙に舞う
時間がゆっくり進む感覚の中で昔家族で旅行に行ったことや、遊園地や動物園に遊びに行ったことが思い出された
これが走馬灯と言うやつか。
何故かその時は冷静で、地面に叩きつけられる感覚も曖昧だった
それからも何故かずっと冷静だった
全く動かない手足
目線さえ動かせない
ただ体から抜けて行く血液の感覚はよくわかった。
どんどん体が冷たくなっていく
周りの悲鳴もよく聞こえなくなってきた
せめて家族と最後に話をしたかった
母と父と兄と、またゆっくり家族で…
そんなことを思った時ぷつんと意識が切れた