第13話:プロローグ
闇に呑まれる。
夜が来る。
しかし、もともとは“闇の方”が主なのではないでしょうか……
現代人に属される私共からすると、光り……明かり……電気のある生活が当たり前で、もっともっと昔の人は夜に明かりが生まれるなんてことは月か星でしか見なかったんじゃないかと……そう思うわけです。
そう、そうですよね……やっぱり、闇に呑まれている状態というのは……まさに手触りでも自分の手先や足元すら見えないんでしょうね、不安定で掴みどころがないんでしょうねぇ……恐ろしいかもしれませんし、寂しいかもしれませんねぇ。
それよりももっと自分の中身に意識が移っていて色々なことを考えてしまうかもしれません……
たとえば、そうですねぇ、私共が想像する辺りでは……不可思議な世界の姿が見られるかもしれませんねぇ。
ひっそりとしていてひんやりと冷たくて群青とも深い碧とも黒々とした森のような血のような谷のような山のような辺鄙な造りもののような世界だったのかもしれません。
希望なのか絶望なのかはまだなんとも測りようもありません。
そうですねぇ……たとえば、こんなお話の世界に迷い込んだ数名の人間をゲームにしてはいかがでしょう。
たとえば、その数名はその世界では初めての人間なのですよ、そうなんです、なにやら不思議な記憶や特殊なスキルは各人持っているのですが、その世界は、その島には、人間は貴重で、ほとんどが魔物と呼ばれる怪物や悪魔や精霊の類いで混沌として狂乱としている危険に満ち満ちた状態なのです。
全てが命懸けなのです。
一つ一つの行動が、思考が、駆け引きが、全て命懸けの世界なのです。
ですから、人間は助け合わなければ生き残れないのです。
ですが、互いに疎み蔑み憎み忌み嫌うのも人間の本性です。
騙し騙され奪い奪われる。
助け合う他、生き残る術は無いと全員が知ったとき……もう手遅れになっていなければよいのですが、間に合うとよいのですが、諦めてしまわなければよいのですが……。
人間とは欲望深い生き物です……
しかしそれは人間に限らず生き物の定め、生物の生きる意味なのではないでしょうか。
文明が進み、繁栄し、便利な世の中になり、社会が生まれ、組織が造られ、様々な戒律の中で、いつの間にか無限の欲望が渦巻くようになったのです。
欲望の種類が多い為に、そのような妙な意味合いに変化してしまったのではないでしょうか。
欲望の種類を、【生命】というシンプルなものだけにしたとき、それが浮き彫りになると私共は考えるのです。
生きることに欲望を見出だすことをしないのが美徳なのでしょうか……生きる力を無くすことが無害で善いとされるのでしょうか。
人間の生きる力が、生きようとするその、野蛮で強欲で狂気めいた何かが本来の人間の姿なのではないでしょうか?
私共は知りたいのです……人間の生きる力の強さを。
諦めてしまいたくはないのです、生きるための生物である根底の概念を、本能を、強靭なる意志と肉体の共存を。
「強くあれ!」
我々は、そう鼓舞し、いにしえの戦地へと意識を滑らせて行った……
波の音が聞こえる………
星々は美しく、瞬きを繰り返す。そして、私は砂を握り、眼を醒ました。
さあ、戦いの始まりだ!
もうゲームはスタートしている、時間は刻一刻と過ぎる、引き返す術は無い。
逃げる場所も、絶望する暇も無いのだ!
ただ、我々はいち早くこの世界の状況を把握し、生き残る為に行動を起こさなければならない!
我々は殆どと言ってよいほど何も知らされていない!しかし既に舞台の幕は開かれたのだ!やらなければならない!生き残るために、力強く!なんとしてでも生きるんだ!
手をつき、膝をつき、低い姿勢のまま、視界を見渡す。状況把握だ。
ここがどこで自分が何者であるのか。
敵が目の前にいないとも限らない。
味方がいれば1番良いが……その者が味方かどうかなんてどのようにして判断するべきなのか、そもそも何人の人間がここに落とされたのか今は分からない。
情報が欲しい……生きるために、出来る限り正確な情報が。
敵の種類や能力、どのくらいの数がいて、どこに潜んでいるのか、凶暴性や知性なんかも知りたい。
交渉は可能なのか皆無なのか……。
その前に自分の今の実力や能力すらも、まだまるで分からないのだ。
一つ言えるのは、これはゲームであり、多少の誤差はあるにしても、ここに落とされた人間達は全員同じ様な情報且つ状態で現れているはずだ。
これは、基本的には人間同士の殺戮ゲームではないし……助け合うことが得策とされる。
しかし、皆が最初の段階から同じ様に考え行動するとも限らない。用心深いに越したことはない……少なくとも今のところは。
何があるか、わからない……例え誰か友好的な者に出会ったとしても、直ぐに気を赦してしまうのは危険であろう……
いずれは共謀し合い、……少し善良的に表現すると【協力して】魔物から身を護らなければならないのだが。
落とされたこの世界の人間は、果たしてどのような生きる力を見せてくれるのだろうか




