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第1話:ひきかえせないもの
ひきかえせないもの。
それは何?
波のようなもの?砂浜に打ち寄せては、どこかに消えてゆくような塩水の泡… 太古からの鼓動。命。地球の記憶。宇宙の記憶。それでも時は引き返せない。それでも私は引き返せない。でももし、もしも、引き返せたとしたら?時を遡れたとしたら?何をやり直すのだろうか… 何を引き換えに引き返したいのだろうか… 記憶は? 記憶は無くなるのだろうね、当然。身体は?身体も無くなるのかな? 身体が覚えている記憶も、懐かしい匂いや、音や空気も?やっぱり、どこかに消えてしまうのだろうか。すっかり消えてしまうのだろうか。すっかり。はじめから…何一つ、なにひとつ、なにもなかったように、なにもかも消えてしまうのだろうか。すっかりと。