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卒業したら
焼き鳥屋
横田は焼酎を飲み紅はビールを飲んでいる。
「今年で卒業だな」横田が言う。
「どこに就職するんだ?」紅が聞く。
「俺は知り合いの印刷会社か新聞社に勤める。お前は?」
「俺は武道家になる」
紅は答えた。
「武道で生活できるのか?」
「アルバイトすれば何とかなるだろう」
「そうだな」横田が言った。
「それにしても大学封鎖、いつまで続くことやら。俺達ノンポリには見当つかん」
「まあ、考えてもしょうがないだろう」紅が言った。
二人は店を出て駅で別れた。
紅のアパートは早稲田大学近くの高田馬場にあった。四畳半一間で共同便所と炊事場があった。
紅はタオルと石鹸を持って銭湯に行った。
銭湯から帰って来てビールを飲んで毛布をかけて寝た。