9、鬼頭との再会
読みやすくするため、改行を増やしました。
また、誤字脱字を修正しました。(2017/3/19)
金輪は熱しやすい綱木に少々呆れながら歩いた。
商店街の路地を曲がり、飲み屋街のパトロールもしてみた。
夕方であったせいか開店準備をしている店も多かった。
おかまバー・マウントオリンポスの出入口が開け放たれている。
店内から鬼頭(きとう)45歳が重そうな電装スタンド看板を軽々と持って出てきた。
そこへ金輪と綱木が辺りを見回しつつ現れた。
金輪が鬼頭に気づいた。
「おぅ鬼頭、元気でやってるか」
「あらダーリンたら、私に会いに来てくれたの、嬉しいわぁ~ん」
「辺り一帯の防犯パトロールだ」
「あら、つれないじゃない」
「そんな事より、近頃この辺りの利権争いで暴力団が活発に動いているが、
お前の店、みかじめ料なんか払ったりしてるのか?」
「払わないわよ、あんな坊やたちに」
「ならいいんだよ」
「ねぇ、心配なら私だけを警備してよ~」
「あのなぁ」
「でも、嬉しい。愛するダーリンが心配してくれるんだから。ねぇ、キスして」
「私には、そういう趣味はないんだぞ」
「じゃあ私から」
鬼頭は金輪を両手で力強く抱き締めて無理矢理頬にキスをした。
「おいよせ。まったくー」
顔を赤くしてぷりぷりと怒る金輪のことを綱木は疑惑の目で見ていた。
「金ちゃんはもてモテるんだなぁ~」
「源さん行くぞ」
綱木は金輪の頬に口紅の跡があることを確認して、にやけながら歩き去る金輪を追って行った。
「またねぇ~ダーリーン」
鬼頭は金輪が見えなくなるまで手を振り続けた。
そして、その後も金輪と綱木はあちらこちらを精力的にパトロールすると、
どっぷりと日も暮れて辺りが真っ暗になった喫茶パトライトへと帰還してきた。
金輪が店のドアを開けて「ただいまー」と言いながら入ってくると
薄ら笑いを浮かべた綱木が後から入ってきた。
茶所が金輪の頬を見て首を傾げた。
「お帰り。んっ?金ちゃんその顔、どうした」
「えっ?」
茶所はカウンターの上にあった銀メッキのお盆を金輪に向けた。
金輪は銀メッキのお盆に映る自分の顔にキスマークが
あることに気づいて「うぁ!」と驚き、口紅を指先で拭った。
米良が感動しきりだった。
「パトロール中に逢い引きか、やるねぇ金ちゃん私も見習わなきゃ」
「違ーう!奴は刑事時代から情報屋として交流のある男で、おかまバーのママなんだ」
米良は目を細めた疑惑を楽しむ眼差しで金輪を見つめてつぶやいた。
「ホントにぃ」
「本当だ。源さんみんなに言ってやってくれ」
「金ちゃんは、色んな趣味を持っているんだぞ」
綱木はそう言うと無気味な微笑を浮かべた。
「まったくー」
「まぁまぁそう怒りなさんな、みんな夕飯にでもしないか」
茶所はみんなから注文を取りはじめた。
そしておのおのが頼んだオムライスやナポリタンに舌鼓を打ち、
まったりとした食後を楽しんでいると米良が仕入れてきた情報を話しはじめた。