8、子供達の治安を守る
読みやすくするため、改行を増やしました。
また、誤字脱字を修正しました。(2017/3/19)
その後、最近、幼児誘拐未遂事件が発生していたので
GPS隊員は子供達が遊びそうな場所や児童公園をこまめにパトロールするようにしていた。
パトロール途中にいつも立ち寄る児童公園で子供達が遊んでいる。
米良と犬神は公園内に入り辺りを見回した。
「米良さん、最近はいたずら目的で幼児に接触して来るやからが多いですから、
子供たちが集まりそうな場所はマメに見ないといけませんね」
「確かに。子供達は粒の違いこそあれ、ダイヤの原石だ。
大人達が正しい磨き方を教えて、悪い奴らから守ってやらないとな」
小学4年生の武が米良の背中をつっ突いた。
「おっちゃんたち、何者?」
「GPSといって、定年退職した元おまわりさん達で作った防犯パトロール隊だ」
犬神が米良の発言に付け加えた。
「皆が、変なおじさんとかに誘拐されないよう、防犯パトロールをしているんだよ」
「あっ!学校の側で、すんごく怪しいおじさん二人を見たよ。
あの人達も同じようなことを言ってた」
「犬神さん、金ちゃんと源さんだよ」
「間違いないですねぇ」
時を同じくした喫茶パトライトでは、寝ている綱木と、
起きて新聞を読んでいた金輪が立て続けにくしゃみを2回した。
茶所は金輪に問い掛けた。
「どうした、風邪でも引いたか?」
「いゃ、いたって元気ですよ」
「俺達にとって風邪はバカにできないぞ。この先で豆腐屋をやっていた
湯葉(ゆば)っていう八十の爺様が、風邪をひいたら、
あっという間に肺炎になってあの世に行っちまった」
「そうなんですかぁ。源さん、気をつけなきゃいけませんよ」
寝ている綱木は「むにゃむにゃむにゃ」と寝言で返事をしているようだった。
米良と犬神はしばらくの間、児童公園のベンチに腰掛けて休憩を兼ねながら、
楽しそうに遊ぶ子供達を見つめていた。
「さて犬神さん、我々は引き継ぎのために戻るか」
「そうですね」
二人は「どっこいしょ」と掛け声をハモらせて立ち上がると、
その場から歩き去って行った。
喫茶パトライトでは、お昼寝から目覚めて充電の完了した綱木と
新聞を読み尽した金輪が、防犯パトロールの装備を身につけて時刻を気にしていた。
綱木が貧乏揺すりをはじめた。
「ん~遅い!」
その時、米良と犬神がドアを開けて現れた。
「ただいまー」
茶所が「お帰りー」と言った後、金輪と綱木が口を揃えた。
「遅い!」
茶所が二人の逸る気持ちを解説した。
「早くその装備を使いたいんだと」
米良がうなずいて納得していた。茶所はパトロールの様子を知りたがっていた。
「で、パトロールはどうだった?」
犬神が装備を脱ぎながら答えた。
「やはり防犯パトロールをしていることが一目で分るので、やりやすいですね」
「よし、金ちゃん行くぞ」
「あっ源さん、ちょっと待って」
金輪は一人で店を出て行こうとする綱木を追って行った。
茶所、米良、犬神は、出撃して行く二人を微笑みの眼差しで
「いってらっしゃーい」と見送っていた。
綱木と金輪は早速、辺りに続く住宅地を見回しながら歩いた。
「金ちゃん、何だかこれを着ると体が引き締まるぞ」
「これで子供たちにダメ出しされずにすみますね」
「まったくだ」
二人は意気揚々とパトロールを続けた。
日が傾き辺りが黄金色に染まりはじめた頃、
先ほど米良と犬神がパトロールで立ち寄った児童公園にたどり着いていた。
児童公園は夕方になると生い茂る木々たちが大きな影を作り
実際の時刻より薄暗く感じるようになっていた。
子供たちも徐々に少なくなり、遊んでいるのは小学4年生の武、一人になってしまった。
金輪と綱木が武に歩み寄って、綱木が帰宅をすすめた。
「この前の小僧、一人遊びは危険だぞ」
「小僧じゃないやい。武っていう名前だい」
金輪が武の頭を撫でた。
「そろそろ家に帰らなくていいのか」
「家に帰っても、お母さんが勉強勉強ってうるさいんだよ」
「そっかぁ、なぁ、将来何になりたいとか、夢はあるのか?」
「あるよ。白バイの警官になりたいんだ」
綱木その言葉に大きく反応した。
「ほおー、ちょーっとばかし前の私だな」
「おっちゃん、白バイに乗ってたの!」
「そうだぞ。隊長をやったこともある」
「すげーや」
「なぁ、武とやら。白バイ乗りはな、いっぱい勉強して、
強い体と、優しい心を持たないと、なれないんだぞ」
「そうなんだぁ」
「早く家に帰って勉強しろ。そして、母さんのお手伝いもしろよ。
白バイ隊は武が来るのを待ってるからな」
「うん。おっちゃんたち、バイバーイ」
「気ーつけて帰れよー」
綱木は、走り去る武を見つめながら大きく手を振っていた。
金輪がちょっぴり感動していた。
「源さん」
「んっ、どうした?」
「かっこいいよ」
「まぁな、分かってるって、行くぜ金ちゃん」
唐突にご機嫌になった綱木は足取りも軽くパトロールを再開した。
金輪と綱木が日の出町商店街の中を歩いて辺りを見回していると、
買い物帰りのと茶話と出会った。
「あら、お二人で防犯パトロールですか」
「はい。どうでしょうこの装備は」と綱木がポーズを決めた。
「なかなかかっこいいじゃないですか、お似合いですよ」
「どうも」
綱木は照れくさそうに頭をかいて恥じらった。
「源さん、行きますよ」
「それでは失礼します」
「頑張ってくださいねぇー」
「金ちゃん、何だかモチベーションがまた上がってきたぞ」
「やれやれ」