二十四のテント 其の1
とある高校のとあるクラスの担任は絶世の美女であった。
その美しさは男子生徒のみならず女子生徒ですらうっとりとみとれるほどだった。
夏休みが終わり2学期のスタートのホームルーム。出席簿を小脇に抱えてにこやかに教室に入ってきた担任はやや夏太り気味。それがまたいつもとは違う色気を感じさせた。
胸元のブラウスのボタンは今にも弾け飛びそうだし、タイトスカートは太腿に密着して下着の形が浮き出てしまうのではないかと思われるほどであった。
担任はそんなことは気にもしない様子で教壇に向って歩いていったが途中、あることに気づき立ち止まった。
黒板に大きく「飯野よし子」と書かれていたのだ。
飯野よし子という生徒はこのクラスにはいない。担任の名前でもない。担任はキョトンとして生徒たちに問うた。
「飯野よし子って誰?」
生徒たちは無言である。
担任は怪訝な顔で再び問うた。
「誰?飯野よし子って」
誰も答えない。
担任はちょっと怒った表情になった。それがまた色っぽさを増幅させた。
ムキになって何度も繰り返し問うた。
「誰なの?飯野よし子って」
「飯野よし子って」
「飯野よし子って」
「いいのよしこって!」
すると、男子生徒たちの右手がいっせいに机の下で小刻みに動きはじめたのである。