〜?〜
「ごめんなさい」
もう、生きたくない。何も、見たくない。感じたく、ない。全てが嫌なんだ。私は震える足を一歩前に出す。ヒュウヒュウと強い風が、まるで私を引き戻そうとするかのように、吹きつける。だが、私は戻らない。ここには、もう居場所がないから…。
「さようなら」
私は何度か瞬きをしてから、
屋上から飛び降りたー。
どうして、どうしてー。何故私はまだ、存在してるの。死んだら、全てが無になって、忘れられると思ったのに、何故。
「なぜだろうね?」
誰!?驚いて振り返ると、若い青年が、隣にいた。青年は何処か寂しそうに、上を向いていた。なんとなく、視線を追う。
「え…空が」
空が、緑色だ。星が天の川のようにきらきらと輝いている。いや、そんなことよりもー。ここは、何処?
「天国?いや、地獄なの?」
「違うよ。君がここに来たのは、僕が失望した者の先を見たかったから、それと…君という存在を死なせたくなかったから」
何を言ってるの?と言いたいのに、何故か言葉が出ない。少しだけ息を吸うと、気持ちが落ち着く。
「貴方が私を生かしたの?…どうして」
そういい、私は顔を少し青年の方に向けた。少し微笑んでいる。何を、考えているのだろうか。私は、理由が知りたい。死ぬ準備は心の中でしたのに、まだ生かす意味が。…どうして?やっと運命から逃れられると思ったのに。
「君が死にたいと思う理由はよく分かる。だけどー。逃れる道を選ぶのは…。向き合ってみてよ、自分と」
青年は背を向け、歩き始めた。その背に私は、とっさに手を伸ばした。行かないで。私は、どうすればいいの?助けて…。心の声が届いたのか、青年は一度だけ振り返った。
「今までの人生が、地獄だったとしても、これからはどうだと思う?…僕にもわからないけどー。君が生きる理由。僕を探すことにしといてよ、またねー。」
そう言って彼はもう一度も振り返ることなく、歩いて行く。すると急に視界が歪み、意識が遠のいていく。私は薄れる意識の中でこう思った。
嗚呼、そういえば、あの人の名は…。