クレープとパフェとラーメン
昼下がりのクレープ屋で部長と部下がおしゃべり中
「君は、クレープは好きかね？」
「はぁ。割と好きですね。」
「『割と』か・・・、どのくらい好きなのか、判断が付きにくいな・・・。」
「回りくどくてすみません。」
「じゃあ、色々なものと比較検討してみようじゃないか？ そうすればどのくらいクレープのことが好きかがわかるはず！」
「あの・・・、そろそろ会社に戻りませんか？ 店内が僕たちを見つめる目も冷たいですし。そもそも仕事が溜まってるもので。」
「何が・・・、溜まってるんだ？」
「だから仕事ですよ！ 舌なめずりしながら、変な間を作らないでください！」
「すまんすまん。君の全てに興味があって。」
「本気でやめてください・・・。それに女性店員が部長のことを刺し殺すような目で見てますよ！」
「じゃあ、質問行くぞ！」
「あ、やるんですね、結局。僕の抗議は無視なんですね・・・。」
「パフェとラーメン どっちが好き？」
「なぜパフェ？ クレープはどこに！？」
「すまん・・・。普通に間違えちゃった。テヘ。」
「・・・何で、そう言いながら、クレープの皿を顔の横に持っていったんですか？」
「いや。可愛いかなと思って。」
「それはどういう根拠なんですか？」
「クレープとラーメンだったら、どっちが好き？」
「ラーメンは変わらないんだ！ いずれにしても、もうちょっと近いものにしてくださいよ。比べようがないでしょうが！」
「そうか。・・・若者の感覚はわからんな。」
「この場合は若者、関係ないと思います・・・。」
「じゃあ、クレープとショートケーキだったら？」
「それなら答えられます。クレープです。」
「イチゴのだったら？」
「は？」
「だから、イチゴのショートケーキとクレープだったら？」
「クレープです。普通、何も注釈の無いショートケーキだったら、イチゴでしょ？」
「じゃあ・・・イチゴクレープとイチゴのショートケーキだったら？」
「ああ。クレープもイチゴしばりになったんですね。」
「縛りって君、何て破廉恥な・・・。」
「絶句するな！ って、何でもそっち方面に持ってこうとしてません？」
「だから、そっちとかあっちとか言うのはやめなさい。君の悪い癖だ。」
「それはすみませんでした。」
「そもそもさっきの質問時に何のパフェか、指定するのを忘れてたのに気付いた。」
「それならイチゴのショートケーキです。」
「何で？ クレープとケーキだとクレープなのに。イチゴ味だとショートケーキって！ どういうこと？」
狼狽しすぎて、手に持っていたグラスから、水をこぼしてしまう部長
「取り乱しすぎです！ 単純にクレープの皮とイチゴのマッチングがそんなに好きではないので。」
「じゃあ、さっきは何のクレープをイメージして？」
「チョコレートですね。」
「チョコのどのあたりが好きなんだ？」
「舌の上でとろける感じでしょうか。」
「『蕩ける』だなんて、何て破廉恥な！」
「もう破廉恥って言いたいだけでしょ！ 普通は読めない漢字まで使って！ もう帰りますよ！」
