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35.攻撃特化

「……っ! 氷槍アイスランスっ!」

 

――エクシアに対しムツキがまず取った行動。

 それは後方に素早く跳躍。さらにそれと同時に氷属性の第九位魔法、氷槍アイスランスを発動する事だった。

 それによりつい今しがたまでムツキがエクシアと対峙していた場所に四本の氷の槍が勢い良く生えてくる。 


――結果としてムツキは距離を取ることに成功する。

 だが、本来であればリーチで劣る片手剣バスタードソードで槍を持った相手に距離を取るのは愚策だ。

 しかしムツキは『そうしなくてはやばい』

――そんな直感に従って行動を取ったのだ。


「……ほぅ。良い勘をしているな」

 対するエクシアはそれを一瞬で看過し、その場から一歩退くと目にも留まらぬ早さで手に持った槍を振るい、大地から生えてきた氷槍アイスランスの内の二本を破壊する。

 それと同時に左右から凄まじい速度でニ本の光槍シャインランス――第九位の光属性魔法――が飛来し残りの二本の氷槍アイスランスも破壊する。


(あぶねぇ……。もうちょっとで串刺しにされるところだったぜ……。つーかマジで容赦ねぇな)

――結果的にその直感に従った行動が正解だった事に内心で安堵しつつも、一筋の冷や汗がムツキの頬を伝っていた。



「君がそこから飛び退くのがあと一秒でも遅かったら、或いは魔法を使うのが一秒でも遅ければそこで負けていたぞ」

 エクシアがそう言ってニヤリと好戦的な笑みを浮かべる。

「……そうみたいですね。というかエクシアさんは魔法も使えたんですね。正直驚きました」


「ふっ、こんな性格だが一応は天使なんでな。光魔法もある程度は使えるよ。むしろ驚かされたのは私だよ。氷槍アイスランスを無詠唱かつ四本も同時なんてそんじょそこらの魔術師マジシャンじゃ出来ない事だ。褒めてやろうじゃないか」

「……ありがとうございます」


「実は魔法の方が得意なんじゃないのか?」

「……剣のほうが個人的に得意ですし、好きです。でも一応魔法も同じくらいの期間鍛錬はしていましたから。ある程度は使えますよ」

「そのレベルである程度、だったら世の中の魔術師マジシャンが全員泣き喚くぞ……。謙遜なのか、それとも――まぁいい。続きをするとしようか」


 そう言うとエクシアは槍を両手で握り直し、自身の体を遮るように斜めに構える。


「……それが第六エクスィフォームですか」

「その通り。第二ズィオフォームは先程プリエラが見せた。ならば別なフォームで相手をした方がいいと思ってな」


「なるほど。第六エクスィフォーム……その特性は攻撃特化、でしたっけ?」

「正解だ」



───────────────────────────────────────────────────────────



――第一エナフォームが万能かつ基礎のフォームであり、第二ズィオフォームが対人特化なのに対し、第六エクスィフォームは攻撃特化なフォームとして有名だ。


 最大の特徴はその構えや技の全てが攻めに直結しており、そこから生み出される苛烈な攻撃により相手の防御すら踏み砕く所にある。


 それは対魔法の戦術においても現れており、第一エナフォームや防御特化である第四テッセラフォームは主に魔法を武器で弾き、相手の魔力を消耗させた後に近接戦闘で勝利する。

 或いは魔法を弾きつつ、魔力で強化した俊足で一気に接近し相手を撃破するのが主な手段だ。


 しかし第六エクスィフォームは違う。

 このフォームの使い手は自身を狙った魔法を相手へ反射――打ち返し、相手を己が放った魔法で撃破する事に特化しているのだ。

 それは高ランクの魔石が現存していた関係で、現代よりも魔法が強力だった時代に居た、とある槍術士が生み出したフォームであるとされている。


 伝承ではそれを生み出した槍術士とその弟子の数十名で魔術師マジシャンや、魔銃――今では製造技術もそれを維持するための技術も失われてしまった魔導兵器――を持った兵士およそ千名からなる魔法の雨のような砲火を全て打ち返し撃破し、要塞陣地を防衛したというものが残っている。


 しかしそんな第六エクスィフォームにも弱点が存在している。

 それは攻撃に特化した事による魔力消費の大きさから来る継戦能力の低さ、高速で飛来する全ての魔法を見極め相手に打ち返すという難易度の高い技術を身に着けるために必要な長い習得期間と、その特性故の習得者の生存率の低さから起因する使い手の少なさ。


 そして何より全ての構えや技を攻撃に特化した結果、防御力が皆無だという事がある。


 攻撃が最大の防御、といえば聞こえはいい。

 だがその実高い防御力を持つ第四テッセラフォーム魔術師マジシャンの達人ような、その攻撃力ですら相手の防御を上回れないような強敵と戦った場合勝つのが非常に困難なのだ。


  

───────────────────────────────────────────────────────────



「――かかってこないのであればこちらから行くぞッ!」

(っ……翼が生えたッ!?)

 硬直状態を打ち破ったのはエクシアだった。

 喋り終えるのと同時に、彼女の瑠璃色の金属鎧の背部から左右二枚、計四枚の純白の翼が出現。


 そして姿勢を一瞬低くした直後、大地を抉りその場に暴風を引き起こす程の瞬発力でムツキへと急速に接近を開始したのだった。


第六エクスィフォームの力、お見せしようっ!」



告知が遅れて申し訳ありませんが、恐らくこれより一週間前後は更新速度が低下します。


その理由なのですが、実は3/27のSHTにて出る合同誌なんかの締め切りが近いたです。

そこに二本SSを寄稿させて頂きますので、その締め切りの都合で申し訳ありませんが、SSが完成するまでそちらを優先させて頂きます。

ではでは失礼します。


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