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28.マイナス100がマイナス99になっても大差はない


――ムツキが悩んでいる事。

 それは自身の膨大な魔力の制御だ。

 

 この桁違いの魔力を活かせば第十位魔法でクリスタルボアを一撃で仕留め、第七位のスキル。で傷一つ負わせられない魔導外骨格を十位や八位の低位のスキルで破壊する事すら可能とする威力を発揮する。

 だが反面、一度の使用で莫大な魔力の流入によりイダリコの長年愛用していた魔法の杖を破壊してしまう事からも明らかだが、フォームを使用し、肉体や剣技を魔力で強化した場合、凄まじい効果と引き換えに短時間の近接戦闘で魔力を枯渇させてしまう欠点があった。


 クリスタルボアとの戦闘や、魔導外骨格との戦闘の後に気を失ったのは精神的な物もあるだろうが、魔力の枯渇も間違いなく原因の一つだ。



 故に旅に出るまでの三日間で、ムツキはルナにバレないようにこっそりと深夜に宿の近くで鍛錬をしていたのだが、どうやらバレバレだったらしい。

 恐らくそれに気づいた彼女は、魔力の制御を得意とするエクシアという天使をムツキへ紹介したのだろう。


「お見通しだったか、って顔をしてるわねっ♪」

「……参りました」

 顔に出ていたらしく、どうやら考えている事すらバレていたようだ。


「――ムツキ、貴方は本当に強いわ。十六歳だとは思えないくらい心は立派だし、肉体や剣技も一流。魔力に関しては最早桁違いなレベルだし、その魔力から放たれるスキルや、魔力による肉体強化の度合いも桁違いよ」

「だけど消費も桁違い――って事だろう?」

 ルナが言わんとしている事を察したムツキが言葉を付け加える。 


「……その通りよ。まぁそういう事だから明日お昼には村に着くでしょうし、頑張りなさいな」

「わかってるよ、ホントありがとよ、ルナ」

「私達は旅の仲間よ。仲間が強くなれば互いの生存率もあがる。だから気にしないで。ああ、それと――」

 ルナが魔法のインベントリを弄りだし――

 

「はい。朝に貰った指輪よ。せっかくだし装備しておきましょう」

――街で子供達から受け取った一組の指輪を掌に取り出した。


「おお、そうだな。ちなみに効果はわかるか?」

「うーん……詳細はわからないけど、台座に付いた魔石が放つ魔力的に左が幸運値の上昇で、右が防御力の上昇かしら……? ムツキはどっちがいい?」

「んー……じゃあせっかくだし幸運の指輪にするぜ!」

(幸運値Gとか、冒険をする上で色々と嫌な予感しかしないしな!)


 ムツキはルナの掌から幸運値があがるらしい指輪を受け取り、特に何かを意識する事無く左指の人差し指へと嵌めた。

「ん……それじゃあ私はこっちね」

 それに対しルナは右手の小指へともう一つの指輪を嵌める。


 魔石の効果だろうか。或いは何らかの魔法が込められていたのか。

 二つの自然と指輪は二人の指のサイズにピッタリと合った。


「あー……なんか運があがってきた気がする。指輪のスピリチュアルを感じるぜ……」

「ぷっ、何よそれ。というかそんな急に効果があるものなの?」

「ああ! なんかすげえラックが俺の中で急上昇している気がするっ!」 

「……ちょろいわね。……ムツキ、詐欺とかに引っかからないようにね」


「ははは、大丈夫だってっ! よし、それじゃあいい時間だしそろそろ寝床を準備――」

 そう言ってムツキが立ち上がった瞬間――


――ビリッ

「…………」

「…………」

 何かが裂ける音が周囲に響き渡った。

「ねぇ、ムツキ。今ビリって何かが裂ける音が――」

「――気のせいだ。なんかズボンのお尻の部分がすーすーするけど気のせいだ……。冒険者向けに作られた布のズボンがそう簡単に裂ける訳がないんだ……」

 ムツキの目から一筋の汗が滴り落ちる。断じて涙ではない。



「ムツキ……」

「やめて、そんな憐れむような目で俺を見ないで……」


――なでなで

「……村に着いたら新しい服を買いましょうね」

「……うん」

 愕然と立ち尽くすムツキの頭を、必死に背伸びをしたルナの手が優しく撫で続けていた。



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