表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/45

幕間1.蠢く影

 

――ランコンの街から数十キロ離れた地点に存在する丘の上に、漆黒のドレスを身に着けた一人の少女が居た。

 その手には単眼鏡が握られており、つい先刻までランコンの街の様子を覗いていたであろう事が伺える。


 そんな少女年齢は十代後半といった所だろうか。髪の色はドレスと同じ漆黒で、緩くウェーブを描きながら背中まで伸びている。

 そして左右で紅蒼とそれぞれ違った色の――所謂オッドアイの瞳と、非常に整った顔立ちを持っているが、その表情にはまるで感情が無く、まるで人形が突っ立っているような不釣合いな雰囲気を身に纏っていた。


「所詮は旧時代の劣化品の試作型とはいえ、まさか全滅させるとは、な。……ふん、この田舎にはモルガンとその部下の風精以外に碌な戦力は居ないって報告だったが、どうやら情報部は性格だけじゃなくて鼻も腐っているらしいな。実験台として敵を殲滅するどころか、こちらが全滅させられるなんて……」

 先程まで人形のようだった少女の顔が憎々しげに歪む。


「――隊長、試作型の戦闘データの回収が完了しました。街に潜ませていた斥候との合流も無事に――」

「――ここでは魔大陸の言語以外は喋るな、と教えたはずだが……?」

 そんな少女の背後から軍馬に跨った十代前半ぐらいの金髪の少女が声をかける。

 しかしその言語は先程まで黒髪の少女が話していたものと、異なる言語だった。

 だが金髪の少女は、すぐに隊長と呼ばれた黒髪の少女の殺気の篭った視線を受け、息を呑むと同時に全身を強張らせる。


――ミスを犯せば仲間でも、そしてどんな立場の人間でも殺す。

 彼女はそんな人間だというのを再認識したのだ。


「し、失礼しました。今の我々は魔大陸に住む人間、という設定でしたね……」

「そうだ。……今回は見逃してやる。データの回収が終わったのなら引き上げだ。伝言魔法メッセージ竜騎兵ドラグーンに連絡を入れろ」

「はっ! 隊長、それともう一つの報告が」


「……なんだ?」

「……例の魔王都バレスとポラリスの二都合同による、対魔物大規模間引き作戦……それと同時に行う例のアレを魔王は予定通り実行に移すと、間者からの報告がありました」

「ふむ……。場合によっては仕掛ける必要があるな。竜騎兵ドラグーン共について伝えておけ」

「了解ですっ!」



「……穢らわしい魔族が」

 少女はそう言い残すとその場で踵を返し、丘から立ち去ったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ