ギリギリセーフ?
白は無垢のシルシ。
穢れのない白は「奇跡」に好かれます。
この世界で魔法を使えるのは白い髪の者だけ。それも、白ければ白いほど強力なものが使えるようです。
ちなみに私は黄色っぽい茶髪?金髪?いや、むしろベージュ?……まぁ、色は関係ありません。色がついているので魔法は使えません。
そもそも白の髪を持つものは国の中でも重要な位置にいることが多いです。つまりそれほど重宝されるということ。どこかの国では白髪の数が国の強さを表すとも言われているようです。
まぁ、その感じでいくと真っ白の髪の彼は収まるべくして収まったのかもしれませんね。ルンナディア国王の椅子に。
「…会議中なら寝てもいいんだ」
「はい。私も寝ますので」
「ほうほう。わかった」
「ただし、ばれないようにお願いします。…特に燈真くんにバレたら…」
「ふぅん。バレたらどうなるんだ?教えてくれ」
後ろから悪魔の声。
あー、まずいですね、これは。
冷や汗が止めどなく流れてきます。助けを求めるように陛下を見ると、澄ました顔でこちらを見ています。
―裏切り者。
焦りを悟られないようにニコニコと話します。
「さあ?どうなるんでしょう?…ヒロくんは起きたのですか?」
さりげなく話題をそらすのも忘れずに。
「ヒロはもうすぐ来るだろう。死なない程度に起こしたからな」
そういって真っ黒な笑顔を向けてきました。
お前、寝たらどうなるのかわかってるんなら寝るなよ?と言っているようです。
「……そうですか」
その後少しだけ雑談をして会議開始の五分前にツキちゃんがきました。
「あのバカは?…まだ寝てるのかしら?」
「起きてる。俺が起こしたからな」
入ってきたツキちゃんは部屋のなかを見回してそう毒づきました。
「ヒロがもしも会議までに来なかったら僕が転移させるから大丈夫だよ」
ニコニコしながら話を聞いていた陛下が話に参加してきました。いやぁ、楽しそうです。
…それにしても珍しいですね。ヒロくんが遅刻するなんて。
いつもは一番先にきて掃除やらなんやらしているはずですが。
「時間だ。始めようか」
陛下がそう言うと、騒がしかった部屋に沈黙と緊張が流れ始めて――
「ジャスト、1分前!!!」
――ヒロくんが飛び込んできました。
スッと、音もなくヒロくんの首元と背中に剣が添えられます。
首元のは燈真くん。
背中のはツキちゃん。
私たちの武器である剣は普段はこの城の倉庫にしまってあります。使うときには陛下の魔法で転送してもらうのです。陛下は「転移」以外の魔法を使えません。魔法使いはひとつの種類しか使えないんだとか。
私たちは魔法が使えないので、陛下の魔力の籠った宝石がはまったブレスレットをつけることで疑似的に魔法が使えるのです。
すごいでしょう?えっへん。
燈真くんは自らの髪の色に似た、深青がベースの双剣を使います。片方は白いライン、もう片方には金色のラインが入っている、きれいな剣です。
基本的に燈真くんは白いラインが入っているほうしか使いません。ですから今も白いラインの剣をヒロくんの首もとに突きつけています。
ツキちゃんは淡い緑の大剣。やっぱり髪の色に似ています。一度持たせてもらったときがありましたが、重かった!!両手で持っても持ち上がりませんでしたよ!!!驚きですね!それを軽々と片手で持っちゃうんだから…。
ツキちゃん、かっこいい!!
あ、別に必殺技が使えるわけではありませんよ?
ビームが出たりはしないのです。
……いや、やりましたよ。確かに。なにか叫びながらやったらビーム出るかもーって思って今思い出しても恥ずかしいような必殺技を叫び、剣を振ったときもありますよ。いまはやりません。
私たちの武器が普通のとは違い、色がついていたり装飾が施されていたりする理由はつまりそういうことです。製錬していただいた際に、もしかしたら使い続けたらビームがでるようになるかも!と思って行った次第です。
今も見るたびに自分達のバカさが思い出される、と燈真くんは言っていましたが別にいいじゃないですか。かっこいいですよね。
まぁ、なんだかんだ言って気に入ってるんだから。
私とヒロくんの武器については後程。
私の武器は以前にも紹介しましたよね。
……っと。また話が飛んでしまいました。
ヒロくんは先程の私と同じように冷や汗を流します。そして、うつむいてしまいました。
「ヒロくん?」
返事はありません。相変わらず首元と背中には剣が。燈真くんもツキちゃんもなにも言いません。
部屋のなかには沈黙。
すると、
「………………ない」
うつむいたまま何事か呟きました。
うむ、、聞こえないですねぇ。
ようやく「鬼才の寵臣」が四人揃いました!
彼らがこのお話の主人公たちです。
かわいがってあげてくださいね、、!!