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西の黄色

「うわぁ、本当に凄い人ですね」


王城から真っ直ぐ伸びるマリオーネのメインストリートは元から賑わってはいるものの、普段の比にならないくらいの人で溢れています。

人混みを避けながら歩いていくうちに徐々にひとが増えていき、予想通り闘技場の前の広場が最も活性化していました。


ルンナディア人は茶色に近い赤――赤銅色の髪をしているのが特徴です。ヒロくんはルンナディアの産まれなので赤銅色をしています。


私はルンナディアの産まれではないので赤銅ではなくくすんだ黄色のような色を、隣を歩くフィーナはルンナディアの産まれですが親が他国の人らしく綺麗な紅色をしています。


…自分の髪色をくすんだ黄色と表しましたが、マサくんはそれが気にくわないようで黄金のような色といえ、と言われます。

でも、そんな大層な髪色をしているわけでもないのでくすんだ黄色と言うことにしているのです。


詳しく言えば、茶色に近い黄色?ですかね。最悪、土の色でもいいです。土。

自ら黄金とかと言うよりましです。


そもそもなぜ私の髪の色に口を出してくるのでしょうか。


…っと、話がそれました。


いつもならば町を歩くだけで多少目立つ私たちですが、今日はそんなことなく。

ツキちゃんのような芽を出してすぐの若葉のような緑の髪、燈真君のような深海の青………。


流石に白い髪はいませんが、それらはこの町にはさまざまな国から多くの人がやって来ているということを表しています。


彼らの目的はおそらく―いや、きっと29日の私たちの演武でしょう。

あと5日もあるのに皆さんノリノリすぎじゃないですか…?本人たち、あまり乗り気ではないのですよ。


平日だというのにこの賑わい。当日になったらどうなることやら。


「やっぱり人多いですね。皆さん楽しみにしているみたいです。どうですか?本人としては」

人を避けながら歩いているフィーナがそう聞いてきました。


そんなの決まってるじゃないですか。


「やめて欲しいですよ…本当に」


というか、本人が歩いているのに見向きもしないんですね。

いや、いいんですよ。混雑すると余計に困りますから。



でも、楽しみにしているのなら本人達の顔くらい…ねぇ?


「愛咲さん。どこか行きたいところはありますか?」

「うーん、特にありませんね…あ、でも強いて言うのなら図書館に行きたいです」

「うえっ、図書館ですかー…ごめんなさい、私は遠慮します…じゃあとりあえず自由行動ってことにしませんか?12時の鐘がなったらここに戻ってくる、どうでしょうか」


現在地は、闘技場前の広場の噴水。周りに待ち合わせだろう人達が待っています。


「わかりました。…いいですか?フィーナ。怪しい人には着いていかないこと。裏道を通らないで人目の多い所を通ること。あとは…」

「大丈夫ですよっ。それより愛咲さんも気を付けてくださいね?私はその方が心配です」


むっ、年下に心配されるほど落ちぶれてはいません。


「年上はからかうものじゃありません!…フィーナは私の様に剣を使えるわけでもないただの女の子ですからね。必要以上に心配するくらいがちょうどいいんです」

「はーい。じゃ、また!!」

「あっ、フィーナまだ話は…」

そういって逃げるように走っていった紅色はすぐに人混みのなかに紛れて見えなくなってしまいました。


夜じゃないので大丈夫ってことにして、私も向かいましょうか。


愛咲たちの出自は後々、物語の中で触れていきます。


ネタバレにならない程度に記すと、

愛咲→西のほうの国

燈真→

月妃芽→東のほうの国

浩暁→ルンナディア

真輝→ルンナディア


今後もよろしくお願いします‼

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