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焼け野原


――ああ、またこの夢。


気がつくと私は焼け野原に一人立っていた。

近くに「生」は感じられず、ただ淡々と「無」が広がっていた。


手元をみて、自分の手が真っ赤に染まっているのを見て気が動転する。

すぐに苦しくなって、息ができなくなる。

……息ってどうやって吸うんだっけ。


いつも見ている、代わり映えのない夢なのに私が感じる恐怖がなくなることはないらしい。


「愛咲」


そう聞こえて振り向くと、景色は一転して真っ白の世界。

うるさかった心臓も静かで。

まばたきを1回。

ほんの一瞬のはずなのに、時間がゆっくり過ぎたように感じる。

目を開くと、目の前には少し幼い私が立っていた。


景色に溶けてしまいそうなほど真っ白の金刺繍のワンピース。

両手足首にはごちゃごちゃと派手な色のアクセサリーがついている。

頭にはその年に咲いた最も綺麗な花で作った花冠を。


――神様が私を見つけやすいように。


「行こう」

手を引かれて歩き出す。


拒むことは許されず。

そのさきにあるのが悪夢だと、私を未だに縛り付ける鎖があると知っていながら。


しばらく歩いて、幼い私が立ち止まった。

すこし前を歩いていた幼い私が、振り向いて


「人殺し」


そう呟くと、足元が崩れ落ちる。

くらい闇の中へ落ちていく。

何度も見ている慣れた光景なのに私は悲鳴を上げて落ちていく。


―あぁ、いやだ。

ここから先は見たくない。

だって、結末をしっているから。


浮遊感がなくなって、私はまた焼け野原に立っていた。

足首に違和感を感じて下を見ると、黒いものが足首に巻き付いていた。


――私はこれを知っている。


剣を抜いて何度も何度も突き刺すものの、取れる気配は全くない。

焦りで、不安で。

無我夢中に剣を振り回した。


―だめ。ここからは。

おねがい、許して。


そんな願いも報われず、無我夢中で振った剣がなにかを斬った。


私の方に倒れてくるそれを受け止めて。

叫ぶことも許されず。

逃げることも許されず。

ただひたすらにそれを見るしかできない。


知ってますよ、自分が悪いってことなんて。

謝って済むくらいならどれ程よかったでしょうか。

一生償うべき罪。

もう鎖は取れるはずないのです。

でも、どうか。もがくくらい許してください。


でないと私は。


私は――――――――――


―なにもなかった騎士など、いない。


更新遅れたのは、この話を入れるかどうかものすごく悩んでいたからです。

……今後に繋がるお話になったかと。

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