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secret GARDEN- Lakhesis -  作者: 蜜熊
QUEST1:Black Swan
6/155

SAVE2 Phase3-1

Phase3




1:名無しさん:20**/09/1*(*) 23:06:39.53 ID:rJQrqnH


立てた


2 :名無しさん:20**/09/1*(*) 23:06:51.95 ID:S0AOSek


>>1乙


3 :名無しさん:20**/09/1*(*) 23:14:28.05 ID:S0AOSje


てか騎士、あるプレイヤーに懸賞金かけてたな。一体どんなヤツなんだよ


4 :名無しさん@お腹いっぱい。:20**/09/1*(*) 23:16:01.47 ID:FNammpe


guardianがプレイヤー晒すなんて初めてじゃないか?イカレ狩人ならわかるがww


5 :名無しさん@お腹いっぱい。:20**/09/1*(*) 23:17:23.56 ID:utljekW4


あの鉄仮面がプレイヤー狩りに行くとか聞いた


ランク1位ならそのプレイヤーマヂやられんじゃね?


6 :名無し:20**/09/1*(*) 23:18:18.10 ID:XBpC5Kd



嫉妬と憤怒が激突か。






どちらか確実に死ぬな


Loading3


--------------------------


-----------------


体はまだどこか熱を持っていて、関節も錆びついた機械のようにぎこちない。

それなのに私はまたこの世界に戻ってきている。


前に飛翔くんが載っている雑誌を読んで、現実世界と空想との境目が曖昧になっていると感じたけれど、まさに今の私の状況がそれだ。


頭が痛いことも吐き気がないことだけが救いだったけど、どこか自分の体を持て余すように歩いていると、不意に駅構内のアナウンスが響く。


『お知らせいたします。日本アカウントでひらがな表記の ゆずる 様、日本アカウントでひらがな表記の ゆずる 様、至急近くの係員までお知らせください』


(……私……?)


そのアナウンスで『ゆずる』と呼ばれたことすら反応が鈍く、やっと自分かもしれないと思い至ると、気だるい足を動かして駅員に近づく。

いつものように笑顔で対応してくれる駅員に短く用件だけ伝えると、どこかと連絡を取り合った後、駅の事務室のような場所へ通される。


(何か落としたかな……)


特に武器を持ち運ぶようなこともしなかったし、アイテム関係のものはパスの中に入っている。

落し物や用件があると言われても全く思い当たるものはなかったけれど、今何を持っているのかすらはっきりと答えられない今の状態では、それを考えるのもどこか億劫だ。


(……匡……)


頭を占めるのはそのことばかり。この世界にもういないとわかっているはずなのに、いる意味のないはずのこの世界にどうして今いるのもわからない。


けれど思考はここにはいない人の事ばかり考えていて、まるで体と心がばらばらの場所にあるようだ。どうすればそれが1つに繋がるのかそればかり考えていて、それは叶わない願いだと結論付けるくせに、気が付くとまた最初から同じことを考え始めてしまう。


どこに自分が納得する答えがあるのかわからない。納得出来るものなんてないのかもしれない。ただ、それを受け入れられないだけかもしれない。


(…………)


「あ、ごめんね!突然呼び出して!」


「……め……アリーさん……」


「いやぁ、ゆずるちゃん“コール”持ってないみたいだったし、フレンド登録してないからメールも送れないしさ。運営経由なのもなんか嫌だったし……驚かせてごめんね」


「あ……いえ……」


「お久しぶりですゆずるさん。私のこと、覚えていますか?」


メアリーさんの後ろから優しげな女性の声がする。そこにははちきれんばかりの、サイズ違いと言われてしまいそうな程小さなナース服を着た大柄な姿。しかし顔だけは穏やかに私を見つめてくる。


「ナイチン……ゲール……さん……」


私がそう呼ぶと、ナイチンゲールさんはにこりとほほ笑む。どうしてguardianのメンバー2人がわざわざ駅のアナウンスを使ってまで私を呼び出すんだろう。あれは呼び出すのもお金がかかるはずなのに。


私の戸惑いを知っていて、それをあえて黙殺させるかのようにもう1度『ごめんね』と言うと、足早に用件だけを伝えてくる。


「明日、私達と“あるクエスト”に一緒に行って欲しい。報酬とかはある程度ゆずるちゃんの言い分で考えるから」


「え……」


「戸惑うのも最もなんだけど、こっちも時間がないんだ。それで……拒否権も出来れば与えたくない。それ位ちょっと大事で……急ぎなの」


「あ……あの……私……」


「明日19時。横汀よこはま港で。言い訳とか詳しくはちゃんと後で説明するから……だからよろしくね」


「あ……っ」


一方的に内容を伝えられると、また足早に事務室から立ち去ってしまった。


去り際の2人の表情からとても焦って、それで緊急なものだということは十分に伝わってきたけど、突然思考の中に放り込まれたその問題はすぐには理解出来るものでもなくて、それでいてそれを答えられるものでもない。


ただぼんやりとするだけの役に立たない私の頭の中で、誰かがこうそっと囁くだけ。






『…………お願いされたら夕弦はどうしたらいいんだっけ?』



- viewpoint change A -


久しぶり・・・とは形容出来ない程度しか会っていない日はなかったはずなのに、その顔を見てしまうと、どうしても久しぶりと形容したくなる。


(……痩せた……?)


女性の機微には疎いが、人の体調の良し悪し程度は視認すること位出来る。それでか、彼女が体調不良のため平時でも細身であった体をさらに細く感じさせられる。


どこか気だるげに瞼を動かすその仕草は、黙っていればそのまま寝てしまうんではないだろうかと思う位重々しい。


「ゆずる!もう大丈夫なの?」


澤村が足早に彼女の元に向かうが、その言葉を聞く前から彼女がやってきたと気配で感じていた相手は、目を開けることはしない。


「……みんな……」


しかし少しタイミングを遅れて発せられたその言葉にぴくりとその眉根をひそめ、そして器用に片目を開けてその存在を確かめる。


まだ万全でないだろうことは一目瞭然であったが、顔も赤くはないし、不自然な呼吸でもなければ発熱もない。

おそらく病み上がりなんだろう、それはすぐにわかったが、それでもどこか納得がいかない。


「明日……クエストに行ってきますね」


(……今何て?)


「なっ!何言ってんだよ!まだ体調万全じゃないんだろ!?」


特に顕著に驚きを表した澤村が、信じられないといった口調で彼女に詰め寄るが、相変わらず少し困ったように笑うだけ。

ただいつものように『大丈夫』それだけを繰り返しても相手が納得しないのは明らかであったが、それでも彼女はそう繰り返す。


「……ゆずる」


そこで今までほとんど何も言わなかった相手が短く名前を呼ぶ。それにさえ反応鈍く振り返ると、大木に寄りかかっていたはずの体がいつの間にか彼女の目の前に立つ。


「そのクエスト、断れ」


「大丈夫ですよ……役に立つかはわかりませんけど……」


「ゆずる」


「大丈夫……大丈夫です」


「ゆずる……どうしたんだよ……」


「……ゆずる」


穂積と澤村が交互に名前を呼ぶが、それにも少し困ったような顔をするだけ。その頑なにも感じる態度に、本人もが困惑しているようにさえ感じる。


「………………て」


らしくなく食い下がるその言葉に自然と自分の眉間にも皺が寄る。おそらく相手の表情も自分と同じものだろう。


何度か同じことを繰り返し、穂積がじれったく思ったのか名前を呼びながら肩を軽く掴むと、聞き取れない位小さな声が返される。


「だって」


その後は声にならずに口の形だけ動いていた。


読唇術で読んだその言葉は確かに


『たすくがおともだちにおねがいされたことはことわっちゃだめだっておしえてくれた』

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