Phase1-1
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TO: 飛翔くん
TITTLE:おじさんから聞いたんだけど
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本文:
熱が出たってマジか!?Σ(◎o◎)
大丈夫か!??もしメール出来るようだったらメールくれよ!
後で見舞いに行くからなっ(>_<)
- END -
ぼんやりと歪む天井を見上げる。
熱を持った瞼は開けるたびとろとろとした重さを持って暗闇へと案内しようとするし、開けた視界はぐるぐると回っていて気持ち悪い。
熱い息を吐きながらベッドサイドを見ると、さっきまで往診に来ていた医師が処方してくれた薬が置かれていたけど、それに手を伸ばす気力もない。
持て余す熱と、歪んでいく視界だけが、辛うじて自分がまだ生きていることを教えてくれるなんて、なんて皮肉なんだろう。
「……す……く……」
名前を呼ぶことすら満足に出来なくて、それがさらにじくじくとした痛みを生む。
知らないままならよかった、聞きそびれてしまえばよかったと何度思っただろう。肝心なところで気を失うくせに、邪魔なしがらみばかり増えていく。
(匡……)
『夕弦、よく聞いて。オレはあの世界にいる』
『オレに逢うまで諦めないで。世界のどこかにある『最後の扉』、その扉の鍵を探して』
(匡……っ)
『あなたの…知る……皆守……匡は……死んだ……』
どちらを信じていいのかわからない。
確かに待っていてと言ってくれた、それを今でも夢だとは思っていない。けれど、ラークさんが教えてくれた言葉もまた嘘だと思えない。
どちらかを信じようとすればどちらかが嘘になる。希望にすがってしまえば、そのどちらを嘘にしたいだなんて明白だけど、その希望が嘘だったときには、もう何を信じていいのかわからなくなってしまいそうだ。
(匡に……逢いたい……)
もしあの世界で扉を開いたとして、もしも願いが叶うなら、そんな単純な言葉しか出てこない。
ずっとずっとそればかりを考えてきて、一度つまずきそうになったけどそれでも諦めきれなくて、あの穏やかな日常に戻れるなら何だって我慢するのに。
何だって犠牲に出来るのに。それでも世界は残酷で、私はここに1人残されている。
「……っ……ふ」
ぼろぼろと零れる涙を鬱陶しいと感じるのは何度目なんだろう。
乾いては流しての繰り返し、気持ちまでもがふやふやにふやけて、そうやって苦しみも溶けて消えてしまえばいいのに。
見つけるまで立ち止まらないと決めたはずなのに足がやけに重たくて煩わしい。
立ち止まっちゃダメだとどこかで声はするのに、それも全て熱のせいにして瞳を閉じた。




