SAVE5:Jealousy
Phase6
「ユズルがいなくなって……タスクが戻ればいいのに……」
やめて
「あんたがいなければ***もいなくなることなんてなかったのよ!」
やめて
「私にはあんたなんていらない!」
やめて
「なんでへらへら笑っているのよ、気味が悪いわね」
やめて・・・やめて
「あんたは私から全て奪う気なのね!そうなのね!」
やめて!
「触らないでよ!タスク!タスクはどこなの?」
やめて!やめて!
どうして私のこと嫌いになるの?
どうして私を見てくれないの?
どうしてそんな目で私を見るの?
どうして・・・・・
・・・お願い・・・
めをつぶったらきえる?
― シンボル ヲ 使用 シマスカ ? ―
Loading6
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堅牢な己を守る防具を通してもはっきりとわかる絶対的な力を感じ、目の前で唸っている女性を視界に留めることなく駆け出す。
力の発生源は走ればすぐのところにあった。内側から何者かの干渉は張られていたが、それも短く唱えた言葉によって破壊されると、中に入ることは容易くなる。
入った瞬間、けたたましい警告音が鳴らされる。
珍しい、そう普段なら感じることのない感情が瞬間的に浮かんだが、すぐに体はやってきた危険に対し反応を起こす。
すぐに危険から距離をとると、元いた場所に何か細かい黒い破片が刺さっているのが見えた。
「な……んだよこれぇ!!」
聞いたことがない女の声が聞こえたが、その姿を視界の端にちらりと捉えるだけに留める。
「ぁぁああああああああっっ!!!」
また別の女の絶叫が部屋全体を震わせるように響いた。
その声の持ち主には心当たりがあったが、それもすぐにまた別の音によって掻き消される。
部屋の中はいくつかの黒い槍のようなものが不自然でランダムに生えていたが、それでも的確にその女の体を貫いていたようで、声はその場所から全体に聞こえる悲鳴とも慟哭ともとれる声を発している。
それは両手、そして両足に。まるでその場に磔の刑に処されてしまったかのように、女がいくら動こうとも体を貫いたまま動かない。
絶叫の合間に何かしらのスキルを宣言している声が聞こえる。その声に反応して女の首元にあった鈍色の首飾りがうっすら光ると、次にその後ろに大きな巨人のようなものが出現する。
それは黒い槍を握ると、誰に言われるまでもなく引き抜こうとしていたが、しかし数秒の内に消え失せる。
どろりと崩れ去ったその何かには、細かい黒い破片が刺さっていた。
それも巨人の消失とともに床に散らばると、そのまま天井まで細く伸びていく。
そうやって何度か攻防を繰り返していたのだろうか、今やそれは1つの『檻』のような形を成し、中には囚われの身になっている黒い影が見える。
「……」
攻撃の正体を把握しようと近づこうとして、再度警告音が鳴らされたことにある確証を得る。
今目の前に展開されているこの“黒い何か”は、おそらく『嫉妬』を攻撃対象にしているが、別のものが近づいてそれを邪魔すれば例外なく攻撃対象に加えようとする。
そして攻撃対象となった場合、警告通り『瀕死』かそれ以上のことは免れない、と。
そのことを最初からいる女も敏く悟ったのか、ある一定の距離をとって近づこうとしない。
そこで不意に物語のNPC以外に視界にもう1つの人影が映りこんだ。
その影は黒いへびのようなものに体を巻きつかれ、意識を失っているようだった。
長い髪が床に散らばりその表情までは見ることは出来ないが、それを伺わなくてもどのようなことが起こっているのかは理解出来る。
この女が、この現象の『元凶』なのだ。
意識を失ってもなお自動的に発動される象徴、“箱舟”の持ち主。
この目の前の惨劇があそこで倒れている女の力だとわかったが、それ以上どうしようもない。
迂闊に近寄れば危険に巻き込まれるが、積極的に動かなくても敵と認識されたものには自動的に攻撃は繰り返される。
助ける義理も必要も、関係もないのなら何のしようもない。
少しの逡巡の間にも零れ落ちた黒い欠片は形を形成し、最後の檻の枠を作り終えた。
それはさながら檻の中に羽を磔にされた鳥のように見える。自由をなくし、ただただその檻の中で生きながらえる無様な様は、何かの暗示なのだろうか。
「これは……」
言葉を詰まらせた別の女の声に振り返ると、口に手を当てた大柄の女と、うつむいている女の姿が見える。
注意喚起の言葉を発する必要はない。
何もしなくても間もなく相手は息の根を止める事だろう。そうなれば象徴は役割を終え、危険は去る。
形を成した檻がさらに形を変え、内側にいるものに牙を向けようとしているのは目に見えている。このまま傍観を決め込めば、何事もなく終わる。
「ァァァ……り……リヒャルト……様……っ」
絞り出されるようにして出された声に、うつむいていた女の肩が強張る。
「……そう……そうなのね……」
ぽつりと零された声の質量には憶えがあった。
それを訝しんでいると、うつむいたままの女が目の前をすり抜け、吸い寄せられるようにして檻へ向かう。
「…………」
声を出そうとして、その女のパスからもけたたましく警告音が出されていることに気が付く。目の前の女は危険を知らされているのにも関わらず、それに一切耳を貸そうとしない。その奇妙な光景に昔の光景がフラッシュバックする。
『やめろ……』
『こいつがいたらこの世界は壊れちまう。それでもいいのかぁ?』
『なぁ……あいつならどうにかしてくれるはず……だから……』
『邪魔する奴は誰であろうと許さないっ』
『……わかった。僕が殺してやる』
「……」
己の罪のまま、怒りにまかせたあのときの選択は正しかったのだろうか。
「メアリー!!」
叫ぶような声がして思い出したくもない過去から覚醒すると、檻を隔てて2つの『嫉妬』が交差していた。
ぎりぎりと力を込める音だけが生々しく聞こえる。
すでに黒い槍によって貫かれた体から流れていた犠牲だけでは足りないと、口からさらに苦痛の声が零れ、そして相手の体へと浸透していく。
段々と両手が朱色に染め上げられていくとの同時に、両方の女の口元が奇妙に歪み始める。
「これね……これで助かるのね……」
メガネの奥の瞳にはもはや正気は残されていない。かつてはあったであろうものは、今や目の前の漆黒の嫉妬によって塗り替えられてしまっている。
「これデ……あなたノ……傍に……」
漆黒の髪の持ち主は抵抗することなくその力を受け入れると、その最後の言葉を放ち、がくりと体の力を抜く。
瞬間弾けるような音とともに、黒いへびのようなものは霧散するも、すぐに『別の力』が倒れている者の姿を再び黒く覆う。
「『呪を染め還すには手を朱に染めなければならない』……」
「呪いを受け継げば……助かるのよね…」
韻を踏むように繰り返された言葉を噛みしめて、“新たな罪”がにんまりと笑った。
QUEST RESULT
STORY:オデッドとオディール 【Discontinuation(中断)】
PARTY:5/6 【INTRUSION】
STORY1: CLEARED
STORY2: CLEARED
STORY3: NOT CLEARED
TIME:20:22:38/ 11:13:44 (0/ 1)
GET: NOTHING