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secret GARDEN- Lakhesis -  作者: 蜜熊
QUEST6:Grimoire
105/155

Phase5

『尽きる命 と 終焉を迎えた 過去 を 求める 汝に 『尽キナイ』力を 』


その力は『再生』。


どんなに傷ついてもシンボルを発現すれば即死以外の攻撃に対しては再生させる能力を持つ、自分自身のみを対象とした『回復』タイプ。


そんなチート的な能力を持っているのはお前だけだと揶揄したことがあった。


同じ能力ものなど2つとないと・・・互いに笑った笑顔が頭の中でひび割れていく。


記憶と対照的にひび割れた体がみるみる再生されていくと、瞳にどんよりとした闇色の光彩が戻る。


「……凛花……」


やっとその名前が言葉になり口から出たが、それに反応することはなかった。


濁った視線ですら合わせることなく、ただ視界に広がる異物を排除しようと全身に殺気をくゆらせる。


「凛……」


熱に犯されたかのようにあいつの名前を呼びながらふらふらと近づく國鷹の姿が見えたが、それにかける言葉も探せない。


「凛?お前……」


「タカ!やめろ!!」


― 戎錠ジエンド ―


らしくなく声を張り上げる虎の目の前で閃光が走る。それはすぐに鮮血を伴ってその場に飛び散り、誰かが倒れるような音が聞こえる。


ゆっくりにしか動かない体に舌打ちしたい気持ちでいっぱいだったが、それ以上に過剰な情報を与えられた頭は、その動きを命じるところまでは行き届いていないのか、焦る気持ちとは反対にやたらとゆっくりとしか進まない。


「トラ!!」


國鷹をかばうようにしてその攻撃を受けた虎の腹部からはじわりと血が滲み出る。

その血を含ませた凶刃は見たことがある不思議なフォルム。


凛花が持っていた、そして『あいつ』がいつの間にか奪い去った、双剣オーディーン


「やはり」


その声がアイギルだとわかったが、鼓膜にまで響く動悸でうまく顔を上げられない。


1人だけこの話の流れを掴んでいるともとれるその言葉に、壊れた被り物を再度被ることにした男がうれしそうに頬杖をつく。


「やっぱりあんた勘がいいね。『あの人』を“あそこ”で攻撃したのもあんたなんだろ?発想自体はすげーと思ったけど殺れるわけないじゃん」


「あいつはどこだ」


「そういきり立たないで感動の再会でも楽しんでよ。あんたとこいつ、仲よかったんでしょ?」


「死んだ者に興味はない」


(そうだ……あいつは死んだ……)


ならば、目の前に立ってあいつと同じシンボルを使い、同じ武器を使っているあいつは一体何者なんだ。


「確かに死んだね。そこの人が殺したんだもん」


言葉と同時に漆黒のマントに身を包んだかつてのあいつが視線を投げた。辛うじて受け止めたそれは、見たことがない位濁っていて、そこに俺への憎悪があるのか、わからない。


「でもこの本ってそんな死者を甦らせる力があるんでしょ?ぴったりじゃん。まぁ実際のとこは『“死んでた”けどゲームの使用上都合いい力持ってたから使うことにした』……でしたっけ?」


その言葉にそれぞれの理由で動けなくなっていた全員の視線が祭壇の奥へ自然と集まる。


そこには俺がこのクエストを受ける理由にも、この世界へ留まる理由にも、全ての謎の理由にもなりかねない人物が立っていた。

そいつは俺達の視線を気にすることなく祭壇で座っていたヤツに左腕を差し出すと、それに気が付いた男が懐から慌てて本を出し、それを渡す。


「そんなの見て楽しいっスか?中身、全然意味わかんないものばっかでしたけど」


「…………」


言葉を発することはなかったが、雰囲気からして笑っているような気がした。


それが殺伐とした空気の中で異様なものであるのは感じたが、やっと目の前の現れたずっと追い続けた者だったはずなのに、体が命令を受けつけない。


(くそっ!立て!)


立ってあいつをやらないといけないのに、それをまるでかばうかのように立つあいつの姿を視界に入れる度、両手が痛んで動けない。


「お前を殺す」


俺の代わりに立ち上がったアイギルは低く唸るように仮面の男達を見据え、無遠慮な殺意と怒気を向ける。


「ですってよ?俺、相手やりましょうか?」


「…………」


しかしアイギルの言葉ですら反応を示さず、遮るようにして相手になることを申し出た男の方をちらりと見ると、とんとんと自分の仮面を軽く触る。


「あ、すんません。そこにいるやつらが連携してくるとは思ってなくて」



たっぷりの沈黙の後、落とされるはずのない音が1つ、確かな色を持ってこの場に投げ出される。










「---------」







「「!??」」


ただ一言、相手が言った。それだけなのに心臓を一直線に射抜かれた。そんな気がした。


隣で重たいものが床に突き刺さった音がした。けれどそれが何か、理解しようとする思考はもう残されていなかった。


QUESTRESULT



QUEST:古の魔導書 



PARTY:3/4



MISSION:3冊の魔導書を手に入れろ NOT CLEARED



MISSION1:セラエノ断章 CLEARED


MISSION2:ルルイエ異本 CLEARED


MISSION3:エミグレ写本 NOT CLEARED



TIME:24:35:11/ 63:01:35 (0/1)



GET:---------






メンテナンスが終了した後ある種の噂が飛び交った。


その噂の内容はなんでもバグダスターにバグが発生したというものであった。


そのとき緊急メンテナンスを行っていたのは『3冊の魔導書』という上級者向けのクエストであったため、そのほとんどのプレイヤーは速やかに脱出したが、己の腕に自信のあるプレイヤーはバグダスターの討伐のために残っていたものも少なくはなかった。


そこで予想通り大方のプレイヤーはログアウトさせられてしまったが、少数のプレイヤーはその難を逃れることが出来たらしい。


その還ってきた初のプレイヤーの話によると、途中まで劣勢または互角であったが、途中でバグダスターの様子がおかしくなり、しばらく止まっていた時間があったというものであった。


そのチャンスに攻撃に転じてバグダスターを破壊したものもいれば、その内にクエストクリアして生還してきたもの、緊急脱出してきたものとそれぞれであったが、初めてバグダスターと対峙し、討伐または帰還に成功したことは大きな話題と噂、反響を持って瞬く間に広がっていった。


それと同時に広がった噂は


『次回から出現のバグダスターはさらに強化されたものである』


そして


『ジョン=ドゥが古の魔導書を集め終わり、さらに色々なクエストにも出現する可能性がある』というものであった。

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