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secret GARDEN- Lakhesis -  作者: 蜜熊
QUEST6:Grimoire
104/155

SAVE5: hidden meaning

Phase5




「!?」


それは突然起こった。もう残りは自分だけであったし、死を覚悟した。

好奇心を後悔したし、仲間の犠牲に心が痛んだが、それよりも自分自身の身に襲いかかろうとしていた死に対し、恐怖とかすかな希望にすがろうとしていた。


そして襲ってくるはずの暴力に対し、死を受け入れようとしたが、その暴力は目を開けた今もやってこない。


おそるおそる目の前の黒づくめの影を見れば、それはまるで壊れてしまったかのようにぴくりとも動かない。


その場に立ち尽くす影は瞬きをもう1度しても動く気配を感じられない。


「助かった……のか……?」


その場にへなへなと座りこむ。足は今さらながら震え出し、本来ならば逃げなくてはいけないはずの防衛本能を妨害する。


「は……はは……故障か……?」


気が緩んで思わずそんな言葉が漏れる。


しかし、悪意はそれを全て知り尽くしていたかのようにゆっくりと忍び寄った。


モノクロのフィールドに思わず寝そべり、大きく溜息を吐き、空を仰いだ瞬間

その影は自分を覆い包むように傍に立っていた。


口を開いた瞬間体に痛みが走るが、それも瞬間的で、後はもう何も感じなかった。


Loading5


------------------


---------


3つの影は完全に沈黙し、ほどなくして床に溶けていくように消えていく。


それを見て驚くようなことはしない。


けれど、今目の前に広がっている光景には、目を見開くことはおろか、言葉を発することも躊躇う程の衝撃がある。


ぱらぱらと床が崩れ落ちる音に混じって、何かが壊れる音が入り込み、やがてそれも完全に壊れてしまったのか、ごとりと床を鳴らす。


ころころと転がるのはバイクの運転の際に被る球体のシルエット。

それがある敵が頭を保護するために被っていた漆黒のフルフェイスだとわかったが、全員の視線はそこではなく、その奥に隠されていた者の顔に向かっている。


「ぁ……」


誰かが声を出した。しかしその声は明確な言葉にはならず、場に溶けていく。


「あー……もう。壊れちゃったよ」


はっきりと言葉を発したその声の持ち主、羊のような悪魔の被り物を被っていたその顔にはざっくりと深い刀傷の様なものがついている。


攻撃の強さにではなく所持品の破損に対し溜息をつくと、首元を伸ばし、内側からそれを確認している。


鼻から下の半分ほど見えたその顔はこの場にいる者達と大して年齢差を感じさせないもので、ちらりと見えたもう半分と部分的なパーツを組み合わせて想像すると、思ったよりもずっと若い。

口ぶりだけを聞けば確かに考えられなくもないものであったが、纏う残虐性はそれを否定するかのようでもあった。


困ったように口元を渋くしている男はおそらく表情も豊かのようで、長身とその顔立ちであれば女性関係に不自由はしないように見える。


『不遜』ともとれる場違いな笑みを浮かべながら立ち上がると、まだ呆然とする敵に対し、傲慢ともとれる態度をとったまま、高らかと高みから言葉を続ける。


「感動の再会ってやつはどう?」


男の目の前、完全に割れて床に落ちたヘルメットを気にすることなく防御の構えをとったまま沈黙していた影はやがてその構えをとくと、すっと立ち、何も考えていないような視線をそれぞれに送った。


「みんな感動しちゃって声も出ない感じ?」


視線とともに皮肉を込められた言葉を送られて、やっと誰かがその影の名前を呼ぶ。















「……凛花……」











- viewpoint change M-


頭がこれ程混乱したことはない。

夢でも見ているのかと、揺れてまともに働かない視界と思考を持て余しながら考えるが、その考えの1つもまとまろうとしない。


(バカな……)


あのとき確かに俺が殺したはずなのに、どうして?


どうして?どうして?


何度も自問自答を繰り返し、短い呼吸を繰り返す。


ぐらりと視界が大きく揺れ、気持ち悪さが一気に込み上げる。


思わずその場に両膝をつけば、ぬるい風が辺りに漂う。


それが目の前の俺がよく知る人物から発せられるのを感じ、その感じたことがある懐かしい殺気に、さらに視界が揺れる。


辛うじて口を動かしたがそれは名前にならず、動かした自分の口も信じられない。隣で國鷹が俺と同じように呆然と「嘘だ……」とつぶやくが、それを聞いても体には嫌な寒気が起きたまま治まろうとしない。


膝をついて低くなった視界からでもはっきりと見えるのは、白衣姿の見慣れた、さっきまでここにいなかったハズの存在。


それが俺がさっき攻撃した攻撃を全て受け止めとめてもなお立ち上がれるように、漆黒のマント姿に向かって高速で何かを走らせている。


(あれは……)


“それ”を初めて見たのは4年以上前。俺が初めて他人のシンボルを見ることになった機会と重なる。


あいつは身体的にトラウマを抱えていた。ずっと健康な体と失くしてしまった過去の栄光を求めていた。

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