東方 双陽炎 0―8
今まで起きた出来事が今、目の前に広がってる。優斗とはしゃいでるとき。喧嘩してるとき。早苗の初めての料理。
俺も優斗も一口であの世に行きかけた料理。
早苗にたたき起こされれ、スタートする毎日。
そして……
彼女が攫われた時。今頃どうしてるだろうか。
あのゴスロリのコスプレしたやろうは、必ずとっ捕まえて制裁を下してやる。
んまぁ。生きてりゃの話だが。
俺がね。
そう。俺は奴に殺された。俺の兄、優斗にな。なぜあの名前を嫌っているのか。
両親のことも、何も聞けなかった。このまま死んでいいのだろうか?何もできずこのまま……
そう思った時だ。
光だ。真っ暗な視界から、一筋の光が降り注ぐ。
誰だってこの状況ならあの光に向かって手を伸ばすだろう。
もちろん俺もだ。まだ死ねない。
早苗を助けなきゃならない。優斗をぶっ潰さなければ気が済まない。
彼女だって出来た事がない。虹色のカードも使い切ってない。
両親のことだって何も知らない。
俺はまだ死ねない。死にたくなんてない。
そう思って、俺は必死に手を伸ばした。
光の先にあったのは。
花畑だった。
あるぇ?バットエンド?ここがいわゆる天国では?
あー。死ぬのは確定でしたか。なーんか力抜けるなー。
沢山の花がある。カーネーション。コスモス。薔薇。向日葵。
四季が関係ないようだ。とにかく沢山。
どこまでも続いてる。果てしない。
後ろから気配がする。さっきまで感じられなかったのに。
「また、面倒なのが増えたわね。」
体が動かない。金縛りか何かなのか?
なんとかして体を気配のする方に向ける。
女性だ。
「貴方がここに来るべきではないのよ。消えなさい。」
「……ま…………て……俺は……」
夥しい量の光の玉が俺に降り注ぐ。
痛みはなかった。これが夢なのなら早く覚めて欲しい。
何がなんだか訳が分らない。
現実で死んで、夢でも死んで。
夢から覚めてもまた死ぬんじゃないだろうか。
そう思った時だ。足元が崩れたのだろうか。
落ちて行く。視界は真っ白のまま。宙に投げ出されたのだろう。
あー。また死ぬのか。もう嫌だね。死ぬならちゃんと死にたいもんだぜ。
眩しい光を避けるように、俺は瞳を閉じた。