東方 双陽炎 0-4
早苗と旧校舎の屋上に今は居る。
「……わかった。話すね。」
早苗は淡々と話始めた。
「私ね。幻想郷に行くんだ。」
待て待て。幻想郷ってなんだ?
「知り合いの二人に誘われたの」
知り合い……俺が知る人物か?
「私は今のままじゃダメだと思うの」
なんのことだ?
「私ね。能力があるんだって。奇跡を起こす力」
すげーファンタジーだな。
「山の産業革命だって出来ると思うの私は」
や……ヤマ?山か……なぜ?
「そしてなによりも……」
なにより……も……?
「神社の信仰を集めなきゃ!」
俺の中で何かが切れた。あぁ。これが堪忍袋なのかな。
思わず大声でこう言った。
「なんでやねん!!!!」
早苗は首をかしげこちらを見つめている。ビックリしているようだが……気にしない。
「意味がわからん。なんだ幻想郷って。何が産業革命だ。」
「知り合いはツッコまないのね……」
「早苗がバカのは知ってる!今のままじゃダメだってことも知ってる。確かにそうだよなー。」
「どうしてそこは……」
ごめん。早苗。流石にキツイわ。
「最初からゆっくり話せ。」
「うん。」
流石に取り乱し過ぎたな。反省はしないが。
「私ね。知り合い……多分暁都は知らない人だと思うんだけど、その人達に誘われたの。どうやって転移するのかはわからないけど……。」
「それで?」
「そこで守矢神社の信仰を集めるの。」
「うん。意味がわからん。」
何を言ってるのかなこの子。
「その……暁都とは離れ離れになるけど……いつかまた会えるよ。」
「どれくらい行くんだ?その幻想郷ってところに。」
「わからない。一緒には行けないよね……お兄さんとのこともあるもんね……。」
なぜ兄のことがここで来る?やはりコイツは何か__
「知ってるよ。決闘。するんでしょ?」
「なぜそうなった?」
「兄さんに言われたの。どちらかは生きて帰れないって……」
やはり知っていたようだ。兄は何を企んでる……
「その話も含めて明日話したかったんだけど……。今話すね。明後日きっと暁都は死ぬ。」
いきなり死亡宣告か。ここで『そんなことない!』なんて言ったらフラグ立てることになるしな。頷いておこう。
「それで?」
「暁都……だから私は先に閻魔様の所に行ってお願いするの。まだ死ぬ訳には行かないって。」
「閻魔様も幻想郷に居るのか。」
なるほど。ってならないよな。死んだら死んだだ。どうにもならない。
「私が言えるのはここまで……」
「その前に教えろ。親父と母さんのことを。」
「それはお兄さんがしてくれるよ。私はもう行かないと。話してしまったから、迎が来ちゃった。」
目の前に亀裂?が出来た。
そしてその亀裂は口のように大きく広がり、中から女性がひょっこり顔を出した。
「早苗ちゃん。話すの早かったねー。お楽しみはとっておきなさいって言ったのにー。」
「すみません。紫さん。」
早苗は綺麗にお辞儀をした。
「さて……時雨 暁都。 楽しみにしてるわよ?あなたがどこまで足掻けるか。」
「おい待て!早苗!」
「また今度ね。暁都。先に行って持ってるから……。」
「早苗っ!!」
早苗と紫さんは出てきた亀裂の中へ。閉じた亀裂はもう残っていない。
もちろん。彼女達も。
俺は屋上で一人、静かに涙を流し居なくなった大切な人の名前を叫んだ。届くはずもないのに。