東方 双陽炎 0-3
俺は筆記用具を手に旧校舎に向かって走ってる。渡り廊下のすぐそばに旧科学室はあるのだが……。どうゆうことか中にも周りにも他の生徒が見当たらない。
場所を間違えたのだろうか。時刻は……とっくに授業は始まってる時間なのに。
しゃーない。このままサボってしまおう。旧校舎は普段は立ち入り禁止になっていて中には入れるのはこういった授業の時だけだ。道に迷ったとでも言えばなんとかなるだろう。
旧校舎の屋上へ行ってみる。
鍵は掛かっていない。いや、違う。こじ開けられてるようだ。
先客が居るのか。それとも元々こうなっていたのか……。
前者でなければいいのだが。だが、見つけてどうする?
他の生徒だと教員に話されると面倒だ。こちらが面識がある生徒ならなんとかなるが……。
とりあえず扉に耳を当て、扉の向こうの音に集中する。
揉めている?外からは女性が1人声を荒げているのが確認できる。
俺は慎重に扉にを開けた。
「授業をサボるなんて……暁都。ダメよ?」
「どの口が言う。生徒会長様。」
そこには正鳳学園のアイドルにして生徒会長様だった。
俺の幼馴染でもあるのだが、幼馴染がサボるのはまだいい。だが、学校では生徒会長様だ。教員に見つかったら一体どうなることか……。
「私はもう単位が足りてるから良いのよ。どのみち進路は決まってるんだし。」
「お前。進路はどこなんだ?」
「…………」
長い沈黙。彼女は答える気がないのか……。
「貴方に…………」
「なんだ?悩みとかがあるなら言えよ。俺とお前の仲だぞ?」
「言ってもわからないよ……」
「どうゆうことだ?」
彼女が何を言いたいのか俺にはわからなかった。俺は大学に進学しようと考えているのだが……。
留学とかか?それとも就職か……確かに俺にはわからないことだな。
「嘘なんてつかないから。しっかり聞いてくれる?」
いつも以上に真剣な眼差し。上目使いで少しその瞳には涙が溜まってる。こんなタイミングでこう思うのはどうかと思うが……。
こいつがアイドルだというのは頷けることなんだ。
だってほら。可愛いんだよ。ライムグリーンで胸元まで伸びた綺麗な髪。髪と同じ緑の瞳。
それに胸____。
いかんいかん。幼馴染にこんなことを思うなんて。
思考を戻し早苗の問に答える。
「大丈夫だ。信じる。」
「……わかった。話すね。」
ゆっくりと口を開く。視線は俺に向けたまま。いつも以上に真剣で凛々しい彼女から出た言葉は。
とても信じられるものではなかった。