東方 双陽炎 (そうようえん) 0-1
しばらくこんなふうかもしれませんね。
『正義が力なんじゃない……力が正義だ。』
俺が唯一残っている父の記憶だ。
母と二人で玄関に居た。大きな玄関だ。石で作られた床が鳴り響く。
俺達が何歳の頃の記憶か・・・わからない。
母はいつも笑っていた。父は・・・笑ってたか?
もうそんなことすら覚えていない。
まだ俺と兄は小さかった。ようやく両手の指で表されるくらいだ。幼い俺と兄を残して、両親は出掛けた。それからはもう、会ってない。
今頃どうしているのだろうか・・・母は笑っているだろうか?父も笑ってくれてるのだろうか?
たまにこうやって寂しさがこみ上げる時がある。まだまだ自分が幼いからなのだろうか。
こうゆうときは柄にも無く考え込んでしまう。
・・・また今日も面倒で刺激のない一日が始まる。
その証拠にほら。
ピーンポーン♪
もう高校生だぞ。いい加減やめて欲しい。俺をガキ扱いして・・・
・・・ガチャッ
相変わらず起こしに来てるくせに静かに部屋に入ろうとするが今日はいつもとは違う。
「暁……都?」
「あぁ?」
幼馴染みが首を傾げる。マヌケな顔しやがる。
「嘘……でしょ?」
「おい……早起きして何が___」
「さよなら!」
めっちゃ良い笑顔で家を出ていった。
「はぁ……しゃーなしか。」
俺はあらかじめ買っておいたブロック状の栄養食品を手に取りそそくさと学校へ向かう。
俺は今高校一年生。都立正凰学園の学生だ。都立だけあってかここの設備はすごい。困ることなんてまず無いだろう。
タブレットでの授業、エレベーターにエスカレーター。金持ちが集まる学校としては有名らしい。
俺は全てカードで済ませてる。母がくれた形見だ。
虹色のカード。これでなんでも買ってる。どこでチャージしてるのやら。
俺は時雨 暁都
トキサメ アキトだ。中にはそのままシグレと呼ぶ奴もいるがな。
HRは余裕で間に合った。幼馴染みは上の階だ。お陰で毎日静かに過ごしてる。
一時間目は……現代文か。一番嫌いな教科だな。いつもどおり寝るとしよう。次の体育の時間あたりにまた書こう。
何を書いてるかって?これは遺言書の側に置いておこうと思ってる。
まぁあれだ。日記のようなものだ。
俺は2日後……兄と殺し合いをするのだ。その経緯もまた次書こう、今はもう眠い。
寝るとしよう。
配られたプリントに名前を書き、俺は浅い眠りについた。