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~紅き月の盟約~ 無能で封印=最強   作者: Glan.L.Beal
第一章 紅い月の下で………
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6話 サバイバル開始!!

『それでは、サバイバル開始!!!!!』


 その合図とももに、俺達は一斉に走りだした。とりあえずの目標は拠点となる場所を探すことだ。



「とりあえず、森の北端の方まで移動してから、拠点を探しませんか?」


「えぇ、私もヘレンと同じ意見よ。

 急いでそこまで行けば、他の人たちがくるまでに余裕を持って拠点を作ることが出来る筈よ。」



 ヘレンとシャサがそんな会話をしているが、俺はあまり理解出来ていなかった。

すると、カナはそんな俺の気持ちを察したのか、俺に丁寧に教えてくれた。



「シュウ。この森はとっても広いの。 私達が初めて会ったあの森と同じくらいの広さで、そんなに強くないけど魔獣もいるの。

 それで、この森の北端はその中でも特に強い魔獣たちがいるから、あんまり生徒たちは近寄らないの。」



「ありがと、カナ。」



 丁寧に教えてくれたカナの頭を優しく撫でると、気持ち良さそうに目を細めて、擦りよってきた。



「二人とも。イチャイチャするのは勝手だけど、周りには気をつけてね。」


「了解だ、シャサ。 それで、大丈夫なのか?」


 カナとイチャイチャしていたら、シャサがそう声をかけてきた。

俺はシャサに大分省略した疑問投げ掛けたところ、案の定、シャサはなんのことか分からなかったらしく、首を傾げた。

すると、ヘレンが、シャサの代わりに俺の疑問に答えてくれた。


「大丈夫ですよ。私の魔法で、私を中心とした半径100m内に魔獣や生徒が入ってきたら、直ぐに感知出来るようにしてあります。

だから、見つかる前に倒すか、避けるように移動すれば問題なく辿り着けるはずです。」



「それは凄いな。 ヘレンは風属性の魔法が得意なのか?」


 周囲探査の魔法は風属性の魔法なのだが、簡単な割りに意外と集中力を要するため、こうして普通に会話をすることは中々できないのだ。

あくまでも学生レベルでの話だが………

さらに、半径100mとなるとかなりの負担がかかるため、これだけで、ヘレンの実力が相当高いことが伺える。



「えぇ。 私は風・光・水の3つの加護を受けていますが、風属性が一番得意です。

風と光の加護の影響を強く受けたらしく、髪の毛の色が青になったそうです。」


「そうか。 ヘレンは相当実力が高いな。」



「いえ、そんなことないですよ。

 …私なんてシュウ様に比べればまだまだです………」



 ヘレンは謙遜しているが、俺は本心言っただけである。それに最後の方は、声が小さい過ぎて聞こえなかった………




「ねぇ、シュウ。あなたの属性を教えてくれない? 今日から4日間サバイバルだし、皆がそれぞれの適正属性を把握しておいた方がいいと思うのよ。」



「そうだな。 俺は炎と闇だ。

風も使えないことはないんだが苦手でな………」



 これは勿論、嘘である。流石に全属性使えると言うのは(はばか)られるし、実際には精霊の加護を受けていないため、他の人とは多少感覚が異なる。そのため、八方丸く納めるには普段から使い慣れている、これらが一番だと思ったのだ。



「炎と闇ね。了解したわ。

私は水と光よ。覚えておいてね。」


 シャサがそう言うと、ジンもそれに続いた。


「俺は炎と風だ。」


 2人が自分の属性を言い終えると、必然的にまだ言っていないカナへと視線が注がれた。


「皆知ってると思うけど、私は水と光。風は少しだけなら使える………」



 カナはいつも通りにそう言ったが、俺だけはカナが少しだけ悲しげな表情を見せたのが分かった。

カナは、友達に対して嘘をつくことが嫌だったのだろう。

 カナは、基本の五大属性と特殊属性である氷と雷の、合わせて7つの属性を全て使える。俺がカナにかかっていた呪いを解放したときに、全属性を使えるようになったと言っていた。 

カナの髪の色が銀色になったことに関係していそうだが、それについてはまだよく分かっていない。

 俺は、カナを安心させようと、腰に手を回し抱き寄せた。










 そんなやりやり取りしながら、歩いているとヘレンが歩みを止めた。



「左の方から5人の生徒が近づいて来てます。どうしますか?」


 ヘレンが皆にそう聞くと、ジンがいち早く反応した。



「正面から突っ込んで、撃退しようぜ。

 撃退数も成績に入るみたいだし、それにこのグループの連携も早めに確かめておいた方がいいんじゃないか?」



 見た目によらず、意外としっかりしているんだな。


「見た目によらず、意外としっかりしているんだな。」


「おい、シュウ! それはどーいうことだ!!!」


「おっと、すまないな、ジン。知らずに口に出していたらしい。」



「それの方がひどいだろ………」


 ジンには結構響いたらしい。


「そんなことより、どうするの?

私はこのグループがどれだけ出来るか確かめたいから、戦闘したいんだけど………」


 シャサがそう言ったので、俺もそれに合わせることにした。




「俺は、全然構わないぞ。」


「私も平気。」


「そんなことなのか……… そうか。俺はそんなことなのか………」


 上から俺、カナ、ジンだ。ジンはシャサの言葉に益々落ち込んでしまった………




「じゃぁ、戦闘するってことでいいわね?」


「えぇ。」 「うん。」 「あぁ。」


 全員一致で、戦闘することになった。

 ジンは盛大に無視されたが………




「あ?! 反対側からも生徒が!」

 ヘレンのその報告に全員驚いた。



「ホント?

それなら戦闘は避けた方がいいんじゃ………」



 シャサがそう言ったら、立ち直りかけていたジンが、あからさまに落ち込んでしまった………



「なぁ、ヘレン。反対側から来ている奴等は何人だ?」


「4人よ。ゆっくり近づいて来ているから、そんなに強くないと思うけど………」


「そうか。 じゃぁ、俺とカナでそいつらを撃退するから、ヘレンたちでもう一方を倒してくれないか?」



 これ以上ジンを落ち込ませる訳にもいかないため、仕方なく俺はヘレンたちに提案することにした。



「え?!」


「俺達は大丈夫さ。

 カナが相当強いことは知っているだろう?」


「えぇ、でも………」


「俺達はそう簡単にやられないよ。

それにヘレンたちだって俺の見る限り、そこら辺の生徒より数倍は強い。大丈夫さ。 

なぁ、ジン?」



「おう! こっちは俺とヘレンが居れば大丈夫さ!

 シャサは怖いなら、どっかに隠れていたらいいんじゃないか?」



「そうね。シャサ、怖いなら隠れていてもいいのよ?」


 俺がジンに話を振ると、予想通り、今まで落ち込んでいたのが嘘のように、イキイキしてシャサをからいだした。

ヘレンまでもがシャサを弄りだしのは意外だったが………



(ジンって実は戦闘狂だったりするのか?)


 などと、自分のことを棚にあげて考えていると、シャサがとうとう自棄になった。



「あぁ、もう!! 分かったわよ! じゃぁ、シュウもカナ気をつけてね!!

それと、シュウは後で覚えておきなさい!」


「分かったよ、シャサ! じゃぁ、行ってくる。 戦闘が終わったら直ぐ戻るから!」


「行ってくるね。」


「おう、気をつけろよ!」


 俺とカナは3人にそう言うと、4人組のグループの方へ走って行った。















 しばらく走ると、前方に4人の生徒が見えてきた。



「カナ。 今回は俺一人でやってもいいか?」


「シュウの好きなようにしていいよ。」



 カナから許可をもらったので、今回は俺一人で奴等を片付けることにした。

その意図のうち、2割くらいが一年の実力を見ることなのだが、残りの8割は遊びだ。

今、俺達は気配を殺して木の上から生徒たちを見ている。




(全然ダメだな……… あんなんじゃ、実践ですぐ殺されるのが落ちだな。

まぁ、一年だからしょうがないのか?)


と、考えながら、木から飛び降りた。 音を発てずに着地することも出来たのだが、今回は相手に気づかせるために、大きめの音を発たせながら着地した。

 そして、頭のなかからスッと雑念が消え、俺は戦闘状態に入った。













 シュウは、透き通った赤い瞳で相対している4人の生徒を見据えている。その佇まいは、これから戦闘が行われようとしているにも関わらず、ひどく物静かだ。 

シュウと相対した4人の生徒のうちの一人が、両手に青い光を纏いながら、シュウに向かって駆け出した。

それと同時に、3人の女子生徒が詠唱を始めた。


 詠唱を先ず最初に終えた生徒が、シュウに向かっていく生徒に魔法をかけた。すると、その生徒の体が光に包まれる。それとほぼ同じタイミングで、その生徒はシュウに接近しパンチをく繰り出す。

残像が見えるほどの速さのパンチが連続して繰り出されるが、シュウは、それを完全に見切っているかのように、綺麗にかわしていく。

 だが、その際にシュウにできた一瞬の隙をついて、いつの間にか詠唱を終えていた女子生徒が無数の氷の槍をシュウに放った。



「アイス・ニードル!!」




 そう叫ぶと同時に、シュウに無数の槍が飛来する。シュウは、慌てた様子を見せることなくそれらを一瞥すると、顔面に突き出されていた拳を掴み、飛来する槍の方へと投げとばす。

そして、おもむろに片手あげる。シュウは、無詠唱で巨大な紅蓮の炎の塊を出現させると、飛来する槍に向けて高速でそれを放った。 

シュウに投げ飛ばされた生徒は、氷の槍と炎の塊に挟まれ、悲鳴をあげながら消えた。


 氷の槍は、シュウの炎によって一瞬のうちに溶けだした。しかし、紅蓮の炎の威力は弱まることなく氷の魔法を放った生徒に容赦なく襲いかかる。そして、また一人脱落した。 

それを唖然と眺めていた二人の生徒は、シュウの方へと向き直り、先刻より完成させていた魔法をそれぞれ放つ。



「ダークネス・ブロウ!!!」


「ファイアー・ストーム!!!」




 二人の放った魔法が、途中で重る。すると、真っ赤な炎に、闇属性の力が付加され、黒い炎となった。

魔法2つ分にさらに、属性の相性も相まって、絶大な威力となったそれが、シュウに襲いかかる。

 シュウは静止したまま、それをただ見つめている。

しかし、シュウの右手には、いつ取り出しのか、漆黒の刀が握られていた。

果たして、シュウは、高速で飛来する巨大な黒炎をその刀で斬った。

シュウによって、真っ二つにされたそれは、そのまま左右に飛んで行くと、木々にぶつかった。

すると、大きな爆発音を響かせ、辺りの木々が吹き飛び、熱風が渦巻いた………




魔法とは、精霊と自分の魔力を同調(シンクロ)させることで現象を引き起こすもの、つまり、エネルギーの塊だ。魔法に対抗する術は魔法だけ。それは、この世界の常識。 

しかし、そんな必殺の威力の籠った黒炎を、平然と斬った。そんな、今までの常識を覆すようなシュウの所業に唖然としている生徒たちへ、滑るように接近すると、逃げる間も与えずに漆黒の刀を目視出来ないほどの速さで振るった。

漆黒の綺麗なラインを描きながら、下から上、そして横に一閃。

一瞬。しかし、それだけで充分だった。




 辺りが静かになると、そこには、何事もなかったかのように平然と佇む、シュウだけがいた………











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