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Prologue

『逃げるな無能!!!』


『シュナイザー家の恥さらし!!! お前なんて消えればいいんだよ!』


『喰らえ、シャイニング・スピア!』


「っっっがはっ 、 ぐっっ」





 見た目6歳ほどの黒髪の子供は、同じ年ごろであるでだろう数人の金髪の子供たちから無数の魔法を浴びせられ、血だらけで地に臥していた………








 ヴァーエン大陸、シュナイザー領にそびえ立つシュナイザー家の城の家畜小屋の隅で、

 黒髪紅眼の少年、シュウ・シュナイザーは先ほど、自らの姉妹とシュナイザー分家の子供達から受けた傷の手当てをしていた。


「なんで、どうして俺には魔法が使えないんだ……… 」


 そう呟きながら自らの無力を嘆いていた。




 シュナイザー家は、ヴァーエン大陸に古くから継づいている5大属性を司る五大貴族のうち、光属性を担っている貴族である。


 五大属性とは、炎・水・風・光・闇の5つの属性のことで、五大貴族はそれぞれの属性を司っていて、炎はバーン家、水はギルバートン家、風はヴィント家、光はシュナイザー家、闇はフィンスター家がそれぞれ担っている。


 そして、五大属性にはそれぞれ象徴とされる精霊王がいる。炎ならばイフリート、水ならばウンディーネ、風ならばシルフ、光ならばシュピーゲル、闇ならばタナトスだ。


 人類は生まれながらにして、それらの五大精霊(又は神)の加護を受けている。基本的に一人の人間に対して1つの属性の精霊の加護を受けているが、貴族は大抵3~4つの属性の精霊の加護を受けている。また、その中でもより強い加護を受けている精霊の司る属性によって、髪と瞳の色が決定されているのである。


 しかし、シュウは五大貴族;シュナイザー家直系にも関わらず一つも精霊の加護を受けていないのである。そんなシュウを、シュナイザー家は無能者と呼び、シュナイザー家の恥として蔑み、虐待していた。



 シュウは、魔法を扱うことを諦め、剣術と自身の身体能力で魔法に対抗するために毎日気が狂いそうになるほど、辛い修行をしていた。







 しかし、ある冬の晩に………



「まって下さい、父上! 俺を……僕を捨てないで下さい! お願いします!」


『黙れ、クズが。 お前はもう俺の息子ではない! この家からでていけ!』


「っっっぐっ 待って下さい父上!父上!!」


『煩い!』 そうシュウに言い放ち、シュウの鳩尾を蹴りあげた。


 シュウの意識はそこで途絶えた………







 シュウが目を冷ますと、そこは死の森と呼ばれ、入ったら一瞬にして魔獣の餌食になるような森の入り口にいた。


「とうとう俺は捨てられたのか……… どうしてだ!」


 シュウは自分を捨てた両親を怨むと同時に、自分自身の弱さを許せなかった。




(どうして、なんで、なぜ俺には力がない! 力があれば! すべてを壊し尽くせるほどの力があれば!! 力が欲しい! 圧倒的な力が!!!! なぜだ! ふざけんじゃねぇぇぇぇえええええ!!!!!!!)


「っっっくっ がはっ ぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!」




 全身の激痛により、朦朧とする意識の中で俺の中のなにかが解き放たれるのが分かった………










 再び目覚めた俺は、今までの自分が嘘のような感覚に囚われていた。


(なるほど、今までは俺自身の能力によって封印されていたわけか……… ったく、今までの自分が馬鹿らしいぜ………)





 シュウは生まれた時に、五大精霊のどれからも加護を授かることができなかった。それは、なぜか。


「壊創神の加護がかかっていたのか……… 魔法が使えねーわけだよ、これは… ハハハハ」


 そう、五大精霊の加護ではなく、壊創神の加護を授かっていたのだ。

 魔法とは、精霊により授かった加護の力と自身の魔力を同調(シンクロ)させることで、自身の思い描いた現象を現実として発現させることだ。

 しかし、シュウは壊創神の加護のみが備わっていたため魔法を扱うことができなかったのだ。


 では、シュウに授けらた壊創神の加護とはなんなのか。それは、魔法とは全く別種の『能力』である。これは、シュウのみが扱うことのできる特別な力だ。


 そして、シュウは壊創神の加護により2つの能力を手に入れていた。



「『血の紋章(ブラッディ・アーク)』と『解放(リリース)封印(デモリッション)』か……… これからこの世界を一人で生きていくためには、この力をさっさと極めちまわねぇとな……」



血の紋章(ブラッディ・アーク)』 これは、あらゆる生物の体液を、自由に操る事ができる能力である。

 そして、

解放(リリース)封印(デモリッション)』 これはあらゆるもののを解き放ち、あらゆるものを破壊・封印することのできる能力である。

 つまり、シュウは今までこの能力によって、自分自身の力を無意識のうちに封印してしまっていたのだ。

 けれど、シュウの力への執着がこの封印の力を上回ったために、自らの封印を解き放つ事ができたのだ。


 しかし、それは封印をした本人だからそこ出来たのであって、シュウ以外には封印を解き放つことは決してできない。


 また、シュウが抱いていた家族への憎しみなどといった感情の大半は、能力を解き放つときに封印されてしまった…



再び元家族たちと相対したときに、それらの感情がどうなるのかは、誰にも分からない………






そして、9年の月日が流れた……………










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