生きて行く
真っ白の部屋
スースー…
ピッ…ピッ…
酸素マスクされてる…それに、これよくテレビでみる、死ぬとピーって言うやつも!
わっ本物だっ!
っじゃなくて…
……生きて…る…
さっきとは違い、体、動く。
ッ痛っ…‼
背中が動くと痛む。…背中…刺されたの…かな…
点滴もされてるし、きっと生きてた事が奇跡みたい…じゃない?
…うん、きっとそうだ…
「………」
……
「……ッ…」
…ねぇ病院ってこんなに人がこないもん?
「うっ……」
っていうか、痛みがどんどんましてんですけど……
「ん……うぅ……」
動いてないよ…?なのに…どんどん…痛み…ましてる…
「はぁ…はぁ…あゔ…」
その時目に留まったナースコール。
…ナースコールって、こういう時に使うもん?
……押してみるか…
「ん…」
ピッ……
…シーン……
「ゔぅ…」
トントン…
「失礼します」
ガラガラ…
入って来たのは、若めの看護婦さん。
「ナースコールおされましたよね、どうされました?」
「いた…い…です…」
「あ、点滴減ってますね。すぐ持って来ますから、ちょっと待っててくださいね」
……また待つのぉ⁉
「では、また何かありましたら、お呼び下さい」
結局、痛みが引いたのは30分後。
まったく、最悪ダヨ…
ガラガラ…
「…え?」
ノックなしに入ってくるなんて、どんな奴だよと思いながら、ドアの方を向く…
「あ……」
「あらあら…痛々しい…」
“あたし”が来た…どうやって入り込んだのだろう…双子ですとでも騙したのだろうか
「……」
「……」
なんだか重い空気が流れる。
「はぁー…。あなたも生命力あるわよね」
沈黙を破ったのは“あたし”だった。
「はぁ…死んじゃうと思ったのに…。ざーんねん…」
「えっ…どういう…こと?」
「だから、あなたはあの殺人事件で修斗の代わりに死んでくれたら、計画通りだったの!!
…チャンス到来かと思ったのに…」
「意味わからない…最初っから狙いだったって…こと?あの話…あれも作り話?」
「違うわ。ホントはもうあなたに会わないつもりだった。そのまま死のうかな、って思った、でも、声、聞こえて…。もしかしたら、まだ修斗と生きられるかもって。
あたしは、修斗とやっぱり生きたい」
「修斗は、渡さない…。私がしんでも…渡さない…」
「…でも、あなたが死んだら、優斗も修斗もあたしがあなたの代わりになってるって、言わなくても喜んでくれるわ…」
ガラガラっ…
「ふざけんな、変な事言ってんじゃねーよ!俺にとって、優子はコイツだけなんだよ!」
トビラを開けた瞬間、叫んだ…修斗……
「修斗…!痛っ…」
「優子っ…‼大丈夫か⁈」
「うんっ…」
「修斗…あたし…」
一斉に“あたし”を見た…。震えた声で話す瞳には、涙が溜まっていた…
「修斗に必要とされないなら、生きてる意味、ない…。ゴメン…ゴメンなさい…!
もう、あたしの負けだよ。…修斗…幸せをありがとう…優子ちゃん、幸せ奪ってゴメン…あと、優斗に…、……生まれて来てくれてありがとうって…
あと…あと…」
頬をつたう涙が、こぼれ落ちてゆく…
「あっ…‼」
“あたし”がキラキラと消えて行く。まるで、お迎えが来たように…
「あたしは、幸せだったから…あなたも、幸せになって…‼応援するからッ‼」
キラキラキラ……シュー…
「優子ちゃん‼私…幸せになるからぁ…!」
「うんっ…‼」
…ホワン……
映画の世界のようだった。魂が消えた、見たい…。
「…優子…もうお前は一人しかいないんだ。…一緒に、生きてくれるか?」
「もちろん‼」
それから一ヶ月後…私は退院する事になった。
久しぶりの家。
忙しいのに、毎日会いに来てくれた二人。
ここは暖か過ぎて困るくらい、あったかい。
優斗と修斗と生きて行く。
これからの人生、全て二人に託す…から。
「優斗頑張れー!!……やったぁ!」
「よっしゃー!」
「一位、優斗君‼」
「わーい、ママ、パパー!」
元気に優斗は幼稚園に入って、
運動会のかけっこでは一位です。
「僕、頑張ったよ!」
「よし、今日はケーキだな!」
相変わらず、親バカ。
でも、生きてる。
三人で、生きてる。
明日も、ずっと…
生きて行く。
完結しました。ここまで読んで頂ける事、有難く思います。
気軽に感想、お待ちしています。
苺。