君がいない世界
ジリリリ…
昔ながらの目覚ましが鳴り響く。
いつもは、目覚ましなんてかけない。
今日は、大切な日だから…
そして私は、ある場所へと向かう。
「久しぶりだね、修斗……」
私は修斗、の眠るお墓に話かけた。
『上野修斗』と書かれた小さな彫刻を指でなぞる。
私は今年で24になる。大学は行ってない。気まぐれだから、続かなかった。と、言うのも、実は最初は行っていた訳で…。女子大で、仲がいいって人は別に、いなかった。皆、「優子ちゃん優子ちゃん」って、正直面倒だから。
修斗は、私の彼氏。高2の夏、修斗は、事故で逝ってしまった。
あの日は付き合って一年の記念日だった。会う約束してた数時間前に、事故にあったんだ。
「グスッ…」
今日は、彼の命日。
「修斗…あっついね…グス…」
今日は8月。午前中とは言っても、ジリジリと暑い。
「…ッ…修斗…ちょっと飲み物買ってくる」
そして、バッと立ち上がった。
フラッ……
「えっ…?」
バタんっ……
強い衝撃が頭を襲う。
いた…い…
そして、意識を失った……
ミーンミンミンミン…
鳴り響く蝉の声。
冷んやりとした冷気が体を包む。
「う…ん」
目を覚ますと、クーラーのきいた、私の部屋にいた。
あれ、あの後どうなったんだっけ?
ベッドまで誰かが運んでくれたとしても、一人暮らしだし、誰が?
「ま、いっか。あ~何か飲も」
ガチャ…
「ブゥーン!あ、ママァ!」
「…は?何、えっ…キミ誰⁇」
リビングに出ると、オモチャを振り回す小さな男の子が床に座っていた。
「パパー、ママ起きたよぉ‼」
「おぉ、待ってろー」
奥の方で低い声。
え、何?状況理解出来ないんですけどっ…
「大丈夫か?優子」
声の主が現れた。
「えっ…⁉」
私の目の前に立っていたのは……
「修斗……⁉」