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クラスのギャルと兄妹になりました  作者: たかちょ


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第三話 私の居場所

「美奈子さん可哀想ね」

「珠凛ちゃんもまだ小学生なのに」

「卓哉さんはどうするのかしら」

「娘さんは強い子ね」

母は、私が小六の時に病気で亡くなった。

それでも私は、泣かなかった。


「上本ってお母さん死んだんだって」

「あいつお母さんいないらしいよ」

周りの男子が私の話をしている。


「美奈子…美奈子…」

今日もお父さんが泣いている。


泣いているお父さんを見ると、私まで泣いてしまいそうになる。

だから私は、黙って玉子焼きを作った。

お母さんが、よく作ってくれた味。


フライパンに卵を流すと、台所にお母さんの匂いが戻ってきた気がした。


「お父さん元気出して、珠凛が玉子焼き作ったよ」

「ありがとう…ごめんね」

お父さんは玉子焼きを見て、両手で顔を隠した。その隙間から聞こえる悲しい声は私の心に深く強く刺さった。


「おはよう。昨日の野菜炒め美味しかったよ」

「そう」

中学生になる頃には私は家の家事をこなせるようになっていた。帰りが遅い父に夕食だけは作り、私は先に寝て、朝の一言だけの会話のみ。そんな毎日が続いた。


「めっちゃ髪似合うじゃ〜ん」

「珠の銀はやばいね〜」

全てを受け入れてくれる気の使わない友達も出来て、髪の毛も染めた。


「珠凛!なんだその髪の毛は?」

「別に」

「……」

それ以上、お父さんは何も言わなかった。怒られると思っていた。でも、何も言われない方がずっと苦しかった。


「何も言わないんだ…」

暗い部屋で、私は自分がここにいる意味を探していた。孤独から逃げるように家にいる時間が少なくなっていた。



「人生一度きり〜♪」

「この曲盛り上がるね〜!珠は次は何歌う?」

「ウチはMissyにするわー」

「出たよ!Missy好きだね〜」

「もちでしょー」

乙葉と美華と一緒にいると嫌な事も全て忘れさせてくれる。私を肯定してくれる唯一の存在がこの2人。

家に私の居場所はなかったけど、ここにはあった。


「もうこんな時間じゃ〜ん、まだ歌ってないやつあるのに〜」

「また次だねー」

「めちゃ寂しい〜」

「明日も会うじゃーん」

「でも寂しい〜」

「ウチも〜」

寂しがる2人に、私は笑って言った。


「じゃあ、明日は今日よりもっと楽しくしよー」

「いえーい」

そう言えば、離れなくて済む気がした。


「じゃあ明日ね〜」

「明日ね〜」

2人の遠くなる姿を見て、私は遊園地から帰る子どもの頃の気持ちと同じだった。帰り道で今日の楽しい瞬間を一つずつ思い出して、クスッと1人寂しく笑っていた。


「ただいま…」

「おかえり珠凛」

珍しくお父さんが出迎えくるが、その後ろに茶髪の女性が立っていた。

「髪の毛可愛いねー!あ、藤崎由紀恵です」

「ありがとうございます。珠凛です」

「私も若い頃に銀にしたけど、珠凛ちゃん似合いすぎだね」

「そうですか?」

初対面のはずなのに、その人から同じ匂いがした。

きっと、同じような場所で、同じように踏ん張ってきた人なんだと思った。

不意に褒められて、私は少し照れてしまった。


由紀恵さんと私が打ち解けるまでに時間はいらなかった。

「珠凛ちゃんは好きな子とかいないの?」

「私、あんまり興味ないんですよー」

「この子とかどう?」

「可愛い系ですね〜、好きなんですか?」

「私の息子なのよー」

「由紀恵さんに目が似てる!!いくつー?」

「来年高校生なの」

「ウチと同じじゃーん」

家でこんなに楽しかったのが久しぶりすぎて、お父さんの存在を忘れ、乙葉や美華の前で見せる姿になっていた。

「めっちゃウケる。由紀恵さんお母さんとか羨ましいわー」


それから、いくつかの季節が過ぎ、私は高校生になった。

入学式の時に由紀恵さんの息子さんが同じ高校にいることに気づいていた。

「貴大、何組?」

「3組!涼は?」

「マジか!俺4組だわ!一緒のクラスが良かったな」

私と身長は変わらず、由紀恵さんに似て優しそうな人だなと第一印象だった。でもなぜか声をかけようとは思わなかった。


「ウチら3人同じクラスだよ〜」

「マジやばくな〜い」

「嬉しすぎー」

私は大好きな2人が同じクラスだったことに、貴大君の存在はおまけのようなものだった。


高校になっても変わらず3人で遊び、家には由紀恵さんが来る頻度が増えていた。そして桜が咲く季節に

「珠凛に聞きたいんだけど…由紀恵さんと再婚するのはどう思う?」

「いいと思う」

いつも通り私とお父さんの会話は少ないけど、私は由紀恵さんと一緒にいられる時間が増えるなら、大賛成だった。


しかし運命のイタズラで2年生のクラスで貴大君と同じクラスになるのであった。

「2年も3人同じクラスじゃ〜ん」

「ウチらずっと一緒じゃ〜ん、やば〜」

「マジか…えっ、今年も一緒最高だねー」

藤崎貴大の名前を見て、2人の喜んでいる声が遠く感じていた。


新しい教室で自分の席に座って、隣に知らない子がいる初日のフワフワした感覚は好きじゃない。

「よろしく〜、髪の毛いいね〜」

隣の男子がヘラヘラ話しかけてくる。

私はギャルだから、軽いノリで話しかけられる。

それが下に見られている感じがして、嫌いだった。

特に男子に関しては。

「うん、よろしく」

だから私は会話が広がらないように、淡々と話す事が多い。

「上本さん今年もよろしくね。私緊張する」

「遠藤ちゃん今年も色々教えてねー、私バカだからさー」

「そんなことないよ。上本さんもやれば出来る人だよ。学年末よかったじゃん!」

「学年末は遠藤ちゃんのおかげだよ」

私は誰ともあまり緊張しない。

だからこそ、良い人には良い対応を、そうじゃない人には距離を取る。


私は人に壁を作るけど、壊すのも早い。

遠藤ちゃんは、その内側に入ってきた人だった。


「貴大って湘南ユースだったのにサッカー部入らないの?」

「いや僕下手だから無理だよ」

「絶対今からでも遅くないよ、サッカー部入りなよ」

自然と周りに人が集まる貴大君が兄妹になる事を考えると、あの人なら安心だなと思った。

少し人見知りで、謙虚なところも好感を持てた。

(たまに目が合うけど、貴大君は再婚のことを知っているのだろうか)


そして顔合わせ当日


理科室で初めて貴大君と話した。

「今日はよろしくね」

「あ、よろしくお願いし…」

緊張している姿を見て、かなり人見知りなんだと確信した私は、同じ家に住んで大丈夫かと心配にもなった。


「スポーツ刈りの萩谷優也です!」

(次貴大君じゃん、大丈夫かな?)

「え、えーと」

(絶対髪型とか知らないんだ)

「それマッシュだよね」

「そ、そうなの?じゃあマッシュの藤崎貴大です!」

(自然と助けたくなっちゃったな)

「お前上本さんに助けられたな!」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあ銀髪ロングの上本珠凛です!」

(弟みたいな感覚なのかな?由紀恵さんはお姉さんみたいな感じかな)

私は頭の中で今後の家族の形を自然と作り上げていた。

「俺たちもパフェ食べに行こうぜ!」

「俺もダメだ!ごめん!」

ちゃんと今日の夜のことを覚えているんだと安心して私は顔が緩んでしまった。


「皆さん、さようなら」

「珠、またね〜」

「明日、パフェの話聞かせてよー!」

初めて貴大と話して、可愛さと優しさを秘めている人だなと今日の夜が楽しみになった私は、いつもより5分も早く家に着いた。


「ただいま」

「おかえり」

「貴大君人見知りで、すごく緊張して来ると思うよ」

「珠凛知ってるのか?」

「同じクラス」

「どんな子なの?」

「良い人だよ」

いつもより長い会話をして逃げるように自分の部屋に行き、深く溜息を吐いた。

そのままベッドにダイブして、ちょっとした疲労感と嬉しさが胸を締め付けた。


「あ、寝てたみたい、寝過ぎたー」

気が抜けた私は、そのまま寝てしまい、由紀恵さんが来るまで30分もなかった。一応、貴大君がいるからちゃんとした服装!と思い、あれこれしていたらインターホンが鳴って、ギリギリ全てが完了した。


ガチャ


「珠凛ちゃ〜ん!お邪魔します〜!今日はありがとうね」

「由紀恵さん久しぶりだねー!」

やっぱり由紀恵さんが落ち着く存在と再確認する私。

その直後、ガチガチに固まった貴大君を肩揉みしながらリビングに連れてきているお父さん。

私を見て目がいつもの1.5倍大きくなった貴大君。


「えっ」

「よぉ〜!藤崎君!」

由紀恵さんの前だから、いつも仲良いです雰囲気を出すことにした。


「あれお知り合い?」

「同じクラスなんですよー」

由紀恵さんも嬉しそうな反応をしてくれて、私は満足。


「卓哉さん、そこチーム使うんですか?」

「貴大君こそ、そこのチーム使うのはけっこうゲームやってるね!」

それからお父さんと打ち解けてきた貴大君を見ていると、私は家族として貴大君のことをもっと知りたいと思った。


私の居場所はここだと、その時にちょっと暗めに感じていた家が明るくなった気がした。

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