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沈黙の粛清

『おい、本当に「敵」を撒けたのか?』

「どうしたの?」

 私は、帰投中のコードネーム「リベンジャー」からの問いに、そう答えた。

『撒いたと思ったら、別の奴に追跡されてるぞ』

「気のせいじゃないの? 運転中でしょ。余計な事考えて事故ったりしないで。貴方は確かに対人戦闘は強いだろうけど、肉体的には『少々強い普通の人間』なのよ。わかってる?」

『御自慢のAIで分析しろ。明らかに変だ』

「少しばかり、時間がかかるわよ」

『なら、落ち合うのは()めだ。お前らは、ど〜しよ〜もない糞野郎どもだが、「敵」をお前らの所に御案内した挙句、お前らが皆殺しにされたら、流石に何日かは悪い夢を見そうだ』

「わかったわ。『レオ』に新しい逃走経路を指示させる」

 やれやれ……戦闘要員としては、そこそこ以上の実力は有るが……二〇そこそこの小娘が、ここまで調子こいて、一応は「上司」の私にあんな口をきくなんて……少しばかり痛い目を見せて……「現実の厳しさ」ってものを判らせるのが、本人の将来の為だろう。


「こちら『オタク』『ギャル』。目的のデータが入ったPCを入手しました。これから帰投します」

 俺は、司令室にそう連絡した。

『わかった。これから経路を「レオ」に指示させる』

「了解」

 俺は、リーダーの塩田沙織にそう答えた。

「じゃ、さっさと車出して」

 車の後部座席に座ってる女が、横柄な口調で、そう命令する。

 だが……こいつは……コードネーム「ギャル」じゃない。

 本物のコードネーム「ギャル」は……運転席に座っている。

「にしても……『オタク』に『ギャル』って……もう少しマシなコードネーム無かったの?」

 後部座席に座ってる()()()()()()が、そう言った。

「あと、忠告しとくけど……最短経路で行って。防犯カメラなんかを避ける経路を取ったら……あたしらが到着した時には、あんたのお仲間は死んでるよ」


「『リベンジャー』の言ってる事、本当だと思う? 奴ら、追跡を振り切られたフリして、次の奴に追跡させてるなんて有り得る?」

「いや、AIに、ここ何回かの録画を分析させたが、結果は『否定的』。第一、奴らに、そんな真似が出来るとするなら……こっちのAIの裏をかいてる事になる」

「向こうのAIが優れてるなんて可能性は?」

「だとしても、AIごとに『癖』が有る筈だ。これは優劣じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 それは……そうだ。

 私達は、監視カメラ・防犯カメラが設置されている場所を推定し……それも警察や地方自治体が設置したモノだけじゃなくて、個人が自宅に設置してるモノや、駐車場その他の民間施設のモノ、住宅街の自治会なんかが設置したモノまで含めて……それを避ける経路を瞬時に割り出すのにAIを使っている。

 多分、敵もそうだろう。

 そして、そんな経路の「正解」が1つとは限らない以上、経路はAIごとの「癖」で決まる。

 追跡を振り切られたフリをして、別の場所に次の追跡要員を誘導する……そんな真似は、こっちのAIが割り出す経路を推定出来なければ難しいだろう。

 つまり……こっちのAIと同じ「癖」のAIを敵が持っていない限りは……やっぱり、あいつの妄想……。

「そろそろ、あいつも切捨て時ね」

 ドオンッ‼

 その瞬間、轟音がした。

 私達が居るのは……トラックのコンテナを改造した移動式の司令室。

 そのドアが……ブチ破られ……。

「やれやれ……普段は、マヌケにも程が有るクセに、マズい事に気付いたな……」

 何かのエフェクトがかかった……男か女か……どれ位の年齢かも良く判らない声を出したのは……見た事も無い灰色のパワードスーツ。

 概ね、体格がいい男ぐらいのサイズ。格闘家なら、ミドル級以上、ヘヴィ級以下ぐらいのサイズだろう。

「お……おい、誰だ、お前ら?」

 慌てた口調で「レオ」が、そう言った。

「お前が、このチームのIT担当なんだろ? ネットで調べたらどうだ? もっとも、SNS中毒のお前が得られる情報は、偏った不正確なモノだろうがな」

「だから、お前、誰?」

「この運用テストは中止だ。問題点は山程有った。まぁ、こんなモノだろうと予想していたが……あとは、お前らから情報を引き出すだけだ……。()()()()()()()システムの問題点と、あと、お前らのマヌケさが、どれだけシステムの潜在的欠陥を表面化させたかをな……」

「な……何を言って……」

「そ……そうよ、あ……貴方が『上』から派遣されてるとするなら……全ては、巧く行っていた……は……ず……」

 おかしい……さっきから、私の「能力」を使っているが……クソ……あいつと同じだ……。気配は感じるのに、狙いが付けられない。どれだけ「力」を使っても……効いた効かないを判別出来る反応さえ検知出来ない。

 ところが……更に次の瞬間……夜の筈なのに外はいきなり明るくなり……続いて5月初めとは思えない温度の……熱風。

「悪いけど、そいつらを引き渡してもらえる?」

 何かの変成はされてるらしいが……若い女らしい声。

「師範……この『鎧』の緊急運用テストを行ないますので、データ収集を開始お願いします。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 パワードスーツは……どこかと無線通話をしているらしかった。

「あ……あの……大丈夫ですよね? あたしの仲間……助けてもらえますよね?」

 外から聞こえる声は……仲間のコードネーム「ギャル」のモノだった……。

「残念だけど……ちょっとマズい相手かも」

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