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アイドルと吹羅谷岬の謎  作者: 冬林檎鼓斗
7/8

漆条 鵺琳たちの反撃

鵺琳、冬林檎との作戦会議は、0時を回ってもまだ続いた。それから数日後。

「…莉羅お姉ちゃん、おはよう」

「おはよ」

知人の美玖を殺された事に、ようやく折り合いがついた莉羅は、少し元気を取り戻していた。

「ねぇ、久し振りに撮影しない?」

「優那ちゃん…、いいよ」

莉羅は元気が無かった。元気づけの為かな?そう莉羅は思った。


台本は、鵺琳と冬林檎に作ってもらったものだった。

『みなさーん!こんにちは!優那(ゆーな)でーす!』

『莉羅です』

『今日の夕方、とある山でキャンプと生配信をしたいと思いまーす!見に来てね!』

『…』

配信はその後も雑談含めて、30分で終わった。

これには大きな作戦があった。




「…まじで、冬林檎さんって優秀なんだね!」

「はは、まぁ」

冬林檎と鵺琳の作戦。それは単純明快な罠で村瀬を捕らえる。今回は敢えて事件現場で、生配信をするのだ。そこで、警察お付きで罠を仕掛ける。そんな事を可能にさせる冬林檎には、本当に頭が上がらない。

上川田(かみかわだ)、木の棒は乾かしておいてください。しなれば、体重が掛かっても折れる可能性が少ない」

「いえっさー」

「綾之助!落し穴に刺す。木の棒を折りまくれ!」

「あーい!」

鵺琳と冬林檎は、指示をこなし着々と罠を作る。


「栗花落刑事、捜査員から人影の報告は?」

「ない。安心して良いぞ」

「ありがとう。そうするよ」

万が一のことを極限まで0にする。もしもの為に監視がいないかを、捜査員に監視させているのだ。この罠を仕掛けられる場面を目撃されれば、作戦の意味がない。

「照明器具の置き場には、落し穴とブービートラップは仕掛けるなよ!地図通りに!!」

『了解!』

昼間は、内通者も仕事に出ている。その隙に安全な村民を協力させている。

「ここは照明置くばい!綾之助くんは、もう少し離れたとこに」

「うん!」

寛介の協力もあり、少しずつ完成していく。


(…あとは)

冬林檎のやる対策はあと1つ。

「…よし!」

それを施した冬林檎たちは、すぐに山を下りた。警察官も一旦はその場から退散した。

そして夕方。いよいよ、勝負の時だ。




『やってきましたぁー!吹羅谷湖近くのキャンプ場!』

罠を仕掛けて8時間後の午後7時。莉羅と優那は、予告通り撮影にやってきた。

『…さてさて〜、まずは美味しそうなキャンプ飯でも…』

そんな彼女たちを…やっぱり狙っていた。



村瀬が拳銃にサイレンサーを取り付ける。それを撮影器具へと定める。

パシュッ!!

それは暗闇の中、レンズを正確に撃ち抜いた。ガラスの破片が土埃に消える。

その音を捕らえた優那は、ポケットに潜ませたスマホを押す。連絡先は、待機している鵺琳たちだ。

「…え、ど、ど、どうしよう!?」

一方の莉羅は怖がっている。当然だ。

すると、優那は莉羅の手を握る。そしてとある方向へと消える。辺りは暗闇。照明の光から消え去った2人を、村瀬は仕方なく追い掛ける。

(ちっ、手間掛けさせやがって!)

しかし、奴は知らない…。


刹那、奴の足が悲鳴を上げる。

ゴキッ!?

「がぁあっ!?」

小さな落し穴に掛かったのだ。しかもそれは、すり鉢状の小さな穴。足は変形と衝撃に対応できず、捻られてしまった。

「…く、くそっ!警察の捜査前からか!?」

奴は、警察の捜査のせいで、このキャンプ場の下見に来ていない。故に落し穴や罠を知らない。

だが、この程度はガキの悪戯…だと思ったか?

刹那、足の裏を這うような低い矢が、村瀬に襲いかかった。

「あ!?」

発射音が耳を裂く。奴は反射的にジャンプして回避した。だが、矢だとは気づかずに足を躓かせる。ステン!と転んだ奴は、これも偶然だと歩を進める。

「…くそが、足がいてぇ!」

奴は大きな声で叫ぶ。こんな事をしている間にも、優那と莉羅は逃げてしまう。

「…く、くそ!」

その時、大本命が牙を剥く。それは…

「がああー!!!!!!」

1メートル以上もの大落とし穴だ。しかも足元には不規則な長さをした鋭利な枝が刺さっている。

「いでぇええ!?」

暗闇の中、村瀬は、枝なのかすらも分からない。

ズボンの繊維を貫き、靴にも数本の枝が刺さる。奴は這い上がろうとするも、枝が服を貫いていて、中々抜けられなかった。


「…え、枝か。全部抜けた。待ってろよー…」

それから、やっと抜けられる。

「…こんな暗闇の中、山の中を無策で逃げられるわけ無い」

そう思った時だった。

ちゃきっ!硬い何かが頭に当たる。

「バカか。罠に引っかかってる奴が、何言ってるんだ」

「…!?」

それは、銃を持った冬林檎だった。

「お前だな?俺の妹を殺した奴は…」

「…」

狭い穴の中では、銃を抜けない。ましてや、サイレンサーを取り付けていたので尚更だ。

「…ふっ、逃げられないってヤツか。そうだ。俺が…殺した。アンタ、冬林檎(ふゆり)鼓斗(つづみと)だろ」

「…そうだ。お前さ、去年プールで茅咲を誘拐しようとしてただろ?」

「可愛かったからなぁ。当然だろうが!」

「……」

奴は変態だ。銃を突きつけられて尚、動揺すらしない。

「そんなクズ、初めて見た…。なら、お前は今、墓穴(ぼけつ)(なか)生涯(しょうがい)を終えても文句は言えんな…」

「ふははっ、殺せ!どうせ処妖には辿り着けん」

「…ふん」

次の瞬間、

バンッ!!

彼のリボルバーが火を吹く…。その先からはおびただしい量の赤い何かが飛散した…。

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