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アイドルと吹羅谷岬の謎  作者: 冬林檎鼓斗
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伍章 もうひとりの敵

『さっきの話しは内緒にしてほしい』

部屋風呂に浸かりながら、優那(ゆうな)鵺琳(やりん)の話しを思い出していた。


吹羅谷湖。ストーカーに追われ逃げた先には鮫がいた。警察官「渡瀬傑(わたらせすぐる)」がストーカーから拳銃を強奪された。それから鮫の口元からはうっすらと鉄の匂いがした。渡瀬はストーカーの手によって湖に放られた後、鮫に喰い殺されてしまったのだ。

『…でも、どうすれば犯人は捕まるの?』

優那が訊ねると、鵺琳は『ストーカーだ』と言った。どういう事?と優那は分からない。

『…奴は、てっきり僕たちを口封じで殺すかと思っていた。だけど、優那ちゃんが足を止めた時、撃てたはずなんだ。弾数も少いなら尚更、優那ちゃんから撃ち殺すはず』

彼の考察は的を射ている。それだから恐ろしい。

『でも、僕を狙った』

これがどういう事か分かるよね?鵺琳の声が耳元で怪しく響き渡る。

『…多分、優那ちゃんのストーカー。それが鮫を放った人間の正体だよ』

『…そ、そんな』

優那は恐ろしくて足が震えた。ストーカーと渡瀬を殺した人間が同一人物だっただなんて。

『そして、ここ最近観光客が少ないのも、恐らくオカルト好きの人間を湖に誘い込み、鮫の餌として食べさせていたから、って僕は考えてる。ここら田舎どころか防犯カメラすら無いし、鮫がこんな所の湖にいる訳がない、結局警察の足が付かないからね』

彼の言葉ひとつひとつが恐ろしい。そんな人間がいるのなら、早く警察に通報した方が…、

『だからこそ、通報は待ってほしい』 

その時、彼がありえないことを口にした。

『え、ど、どうして?』

『それは、この里の住民の中に共犯者がいるから』

『えっ?』

『大体、鮫の密輸が1人でできる訳がない。だから協力者が必要になる。ましてや、僕ら住民にもバレず湖に誘い込むには人が必要だ』

鵺琳は優那を一点に見つめる。

『そして、渡瀬の拳銃を奪ったのは僕たち障壁を殺す為、そして渡瀬を殺したのは鮫の餌にする為だったんだろう』

彼の洞察力は名探偵並みだった。大いに信用に値する。

『…まだ村の内通者にバレるわけにはいかない。そして僕の作戦に乗ってほしい』

『作戦って?』

『それは君が、この湖の鮫の真相を明かすこと。そしてストーカーを誘き出すことだ』

『…分かった!』

優那も許せなかった。絶対にストーカーを捕まえる。そう心に誓った。


そうして風呂から上がると、莉羅が心配そうにこちらを見てきた。

「大丈夫だった?」

先程の拳銃乱射のことだろう。

「…ねぇ、莉羅お姉ちゃん、さっき言ったじゃん」

「ええ。まだ警察には通報してないわ」

「まずはストーカーを誘き出さなきゃ、だから明日からライブ配信、付き合ってくれる?」

これは全て鵺琳の作戦だった。

「もちろん、良いよ。優那のストーカーは必ず捕まえる」

だが、莉羅は渡瀬が殺されたことなど知る由もなかった。



翌日。

「…全く、撮影する時は気をつけなさいね」

優那の母、愛彩からそう言われ、優那と莉羅は朝早くに吹羅谷湖へ出掛けた。

優那と莉羅が湖へ続く山道を歩いていた時だった…。

「…よっ、」

優那よりも先に莉羅が振り返る。

「僕もついて行って良い?」

それは鵺琳だった。

「や、鵺琳!どうして…」

ストーカーを懸念して、優那は鵺琳が付いていくことを了承している。

「美人ふたりが、曰く付きの湖なんかに行って、ストーカーに襲われたら大変でしょ?」

「撮影手伝ってくれるなら歓迎するよ」

莉羅がイタズラぽく言うと、鵺琳は渋々と頷いた。


しばらく進むと…。

「あれ、田中一家だ」

莉羅が遠目に湖を見る家族たちを見て、大きく目を丸めた。

「…美玖ちゃーん」

すると可愛らしい女性が振り返った。

「あっ、泉愛さん!」

美玖と言われた女性は人懐っこい笑みを浮かべる。その女性も莉羅に似て美人だった。

文姫(あやめ)、アナタ、泉愛さんと鵺琳くんだよ」

「…あ、鵺琳くーん」

「文姫」

文姫は鵺琳と同い年らしく仲が良いようだ。

「…鵺琳くんも早起きだねぇ〜」 

文姫の人懐っこさに少し驚いた優那だが、鵺琳は対して気にしていない様子だった。

「…また朝日を見に来たのか?」

「よく分かったね!」

すると美玖の夫であり、文姫の父である田中風雅が文姫の肩を優しく叩く。

「こらこら、鵺琳くん困ってるよ」

何だか穏やかな一家だな、と優那は思った。

「喧嘩とかしなさそう…」

優那はぽつりと言った。


田中一家の姿が消えると、鵺琳は優那を連れて湖の砂浜へ向かう。

「…ここに行方不明者のいた証拠があるはず」

「探すんだね!」

ふたりは砂浜を凝視し出した。  

「あった!」

その時、砂に埋もれた何かを見て鵺琳が叫んだ。

「クシだ。…ということは女性がここにいた」

これは犠牲者の証拠品だ。攫われているときに落としたものに違いない。少しのものでも今は真相解明への手がかりになるはずだ。



しかし、それを仮面を付けた何者かが見ていた。その人物は日本刀を持っていた。



その後も鮫の餌食になったであろう犠牲者の所持品を探し続けた。

「莉羅ちゃん、何かあった?」

「なーい」

「これで全部か」

3人で集めた所持品は全部でたったの6つだった。それを大宴会場で広げる。


「…優那は莉羅と配信に行った。今のうちに…」

そう言って、6つの証拠品を見比べる。

真っ黒なクシ、何かが焦げたかのようなシャツ、ボロボロのスマホ、レンズが破れたメガネ、折れた木刀。そして日本刀の鍔だった。

「…メガネはレンズ周りの淵に斬れたような傷。スマホも横一文字の線が入っている」

全て壊れ物だったので、傷ごとに分別してみることにする。

「…クシは汚れているだけ。シャツも焦げてるうえに砂にさらされて汚れている…」

そして残りのふたつを見る。

「日本刀の鍔と折れた木刀。しかも…この木刀はここのもの。つまり…」

ここ付近に日本刀を持った人物が潜伏しているに違いない。そう思った。

敵は3つ。

殺人犯で優那のストーカー。

村の内通者。

日本刀を持った者。


もしかしたら全てが繋がっているのかもしれない。


しかし、この日の夕方。悲劇が起こってしまう。

「…湖におびき出す?」

優那が驚く。そして確認するような口調で訊ねる。

「ああ。内通者さえ分かれば、犯人の確保に近付ける。もちろん警察を呼んでな」

「…その為にはもっと証拠を見つけなきゃだね」

そう言って2人は湖に向かった。

しかし、誰かがふたりを追っていた。その右手には日本刀が…。

「…ん?」

それに鵺琳は気付いていた。

「誰だ?」

だが次の瞬間、ふたりは気絶していた。刀で峰打ちをされた後、即効性の睡眠薬入りの水を飲まされたのだ。



ふたりが気づくと縄で両手を縛られていた。

《いけない子供ですね。吹羅谷湖の真相を明かそうとするなんて》

そう言って仮面は日本刀を抜く。

「誰だ…お前?」

突然、拉致されたことに優那と鵺琳は驚きを隠せない。

《やれやれ、村瀬が湖へ落としたというのに、鮫から逃れるとは運が良いですね》

その時、刀の切っ先をふたりへ向ける。

《…ではアナタたちに真相をお教えしましょう》

「なに?」

《ストーカーの正体。それは…村瀬時雅。うたゆなさんのストーカーは彼です》

「…村瀬…時雅?」 

優那はコメント欄でその人物名を見たことがあった。

《今からアナタ方を拷問します。もう探れないようにね。それから今度こそ鮫の餌にします》

そしてこれから壮絶な拷問がふたりを襲う。


そして今夜、再び死者が出てしまう。


ありがとうございました!

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