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【 未来 】

 クルサ視点――呪いの中。



 ハルク先生とジークフリートさんが道を切り開いてくれた。

 その隙を逃さず、私の剣は――竜の心臓へと伸びていく。

 すべてが、スローモーションだった。


 このままいけば、竜を倒せる。

 オリオンを、助けられる。


 ……はずなのに。


 胸の奥が、ざわついた。理由は分からない。

 ただ、はっきりとした予感だけがあった。


 ――このまま刺したら、私はきっと後悔する。


 どうして?

 分からない。


 でも、この一撃を止めないと、

 私は“何か取り返しのつかないもの”を失う気がした。


 剣を止めれば、私は殺されるかもしれない。

 そうなったら、オリオンを救えないはずなのに……


 何  


 で






 ジジッ……

 ジッ……






【……なぜ、クルサが魔界にいる?】

【とまれ】

【クルサ、貴様は何者だ?】

【我が、分かるか】






 私は突如、記憶を思い出した。


 合宿のとき。

 オリオンを追いかけた、あの時のこと。

 オリオンは、一瞬で姿を消した。

 その直前――確かに一瞬だけ“見えていた”。

 さらに、体が覚えていた。


 閉じた門を、開く感覚。

 世界の境界が、きしむ感触。


 今も上空に浮かぶ、禍々しい門。

 あれと同じ“門”を、私は確かに開いたのだ。



 あの時に門を出現させたのは、オリオン。

 上空に門を出現させたのは、アジ・ダハーカ。

 


 ……どうして、今まで思い出せなかったんだろう。


 確かな証拠なんて、どこにもない。

 もしかしたら違うかもしれない。

 未来がどうなるかも、分からない。


 このまま死ぬかもしれない。


 それでも――

 私は、この“選択”を信じる。


 誰かのためじゃない。


 「「「 自分が、後悔しないために 」」」


 ……。


 バンッ!!!!!


 私は、英雄さんから体の主導権を奪い返し、動きを止めた。

 スラエータオナさんは呪いへと戻り、その奥から、私に声を投げかけてくる。


『何をする!』


 急停止した剣は、

 竜の皮膚に触れる――ほんの数ミリ手前で止まっていた。


 体が震える。

 英雄さんの怒りが、はっきりと伝わってくる。

 今にも、意識を削り取られそうだった。

 体の主導権を、奪い返そうとしている。


 ――それでも。

 私は、引かなかった。


 確かめなければならないことが、あったから。


「ねぇ英雄さん。待って。この竜と……話をさせて欲しい」


『お前は何を言っている!見ていたはずだ!この竜を殺せる機会は今しかない!封印は出来るだろうが、それでは歴史を繰り返すだけだ。だからこうしてお前体を使っ……て……殺、そうと』


「でも……見て」


 私の直感は、間違っていなかったかもしれない。

 だって、英雄さんと、私は――同じものを見ている。

 今、目の前で起きている、信じられない光景を。


『……アジ・ダハーカが……止まった?』


 あれだけ私を殺そうと無数の竜を放っていた竜が、私を目の前に、私が動きを止めたと同時に……止めていた。  

 勢い余って、竜の牙が私の右肩にわずかに刺さって痛みが走る。

 ……けれど、これだけで済んだこと自体が、奇跡だった。


 私は、ゆっくりと竜を見上げた。


「ねぇ……アジ・ダハーカさん」


 一瞬、言葉が詰まる。

 それでも――目を逸らさなかった。


 私は、震える右手を伸ばし、竜の頬にそっと触れた。

 優しく。

 確かめるように。




「あなたは……オリオン……なの?」




 

 バンッ!!!!!


 クルサが剣を止めた、その瞬間。

 竜の動きも――唐突に、完全に、止まった。


 アジ・ダハーカ。――いや。

 オリオンもまた、クルサと同じ感覚に囚われていた。


 このまま進めば、後悔する。


 理由は分からない。

 なぜそう思ったのか、自分でも理解できない。

 ただ、その予感だけが、抗いがたく胸を満たしていた。


 混乱した思考が、答えを求めて沈んでいく。

 深く、さらに深く――


 そして。


 アンリマユとの会話で唯一無意味だと切り捨て、覚える必要などないと封じ込めた記憶が、静かに浮かび上がった。



 オリオンは、手の平ほどの大きさとなり、静かに浮遊していた。

 大事な話があると呼び出されていたのだ。

 アンリマユ様は机に肘をつき、祈るように手を合わせて、こちらを見下ろしている。


「アジ・ダハーカ。あなたは不死。ワタシがそう創りました。これから先、あなたには長い竜生が待っています。そこで……」


 一拍置き、彼女はぱっと顔を輝かせた。


「もしあなたに子供ができたらワタシに真っ先に見せてくださいね!絶対ですよ!ワタシが素晴らしい名前を付けてあげます!」


 大事な話?

 そう頭の上で疑問が浮かんだ。


 主は眼をきらきらとさせ、両手をバンッと机に叩きつけて身を乗り出す。

 我は反射的に、わずかに距離を取った。


【は……はぁ……】


 そう返すしかなかった。

 意味が、分からなかったからだ。


【しかしアンリマユ様。子供とはどこからやってくるのですか?我と同じように、創造されるのですか?】


 アンリマユ様は元の位置へと戻り、赤面しながら両指をツンツンと合わせた。


「そ、それはですね……あなたに“大切な存在”ができたら、その人が教えてくれます。きっと……」


【大切な存在……ですか。我には、分かりかねます】


「そうですか。そうですね……分かりやすく、あなたらしく伝えるのであれば……」


 アンリマユ様は少し考える素振りを見せ、数秒後、真っ直ぐに我の目を見た。


「あなたは、ワタシを破壊したい、殺したいと思いますか?」


【滅相もありません。我はあなた様の願いを叶えるために――】


「ふふふ……それが、答えですよ」


【……? どういうことですか】


「ワタシと同様、それ以上に破壊したくない。そう思えた相手が……」


 ……あなたにとって、大切な存在、ということです……。


 ……


 この時の我は、それを覚える必要のない話だと判断し、

 記憶の奥底へと、静かに押し込めた。


 我にとって、アンリマユ様こそが全て。

 それと同等、あるいはそれ以上に、

 破壊したくない存在など――現れるはずがない。


 そう、疑いもしなかった。


 しかし今になって――我は思い出してしまった。

 なぜか……この瞬間に。


 ドクンッ。

 ドクンッ、ドクンッ。


 胸の奥で、異常な鼓動が鳴り響く。

 本能が、警鐘を鳴らす。


 脅威。排除対象。

 殺すべき存在――

 確かに、そう認識したはずだった。


 それなのに。

 今、胸を満たしている感情は――


 壊したくない。


 ……何だ、これは。


 我が――

 破壊のためだけに生み出された、この我が――


 壊したくない、だと。


 ドクンッ……ドッ……クン。


 荒れていた鼓動が、ゆっくりと、確かに静まっていく。

 クルサとの今までの記憶が、我の意思とは関係なく流れ込んできた。

 

 今までの不審な胸のざわめき。

 クルサと過ごすたび、増え合う度に湧き上がってきた不可解な感情。




 そして……




 


【あぁ……そうか】






 この瞬間、我はようやく理解した。

 アンリマユ様が、かつて語った言葉の意味を。


 


 ……いつの間にか貴様が――

 我の、大切な存在になっていたのだな……。




 この選択はきっと正しくはないのであろう。

 我はアンリマユ様の願いを叶えるべく生み出されし存在。

 我がこれからする行いは、それに背く行為だ。

 

 だが、今明確に思っていることがある。


 誰かのためでもない。


 【【【 我自身が、後悔しないために 】】】



 


「アジ・ダハーカさん……あなたは、オリオンなの?」


【……クルサ……】


 我は、竜の姿を解き始めた。


 首も、翼も、尾も。

 巨大だった肉体は、ゆっくりと縮み、ひとつの人の形へと収束していく。

 鱗は、まるで最初から存在しなかったかのように、音もなく消え失せた。


 シュルルルル――――パン……。


 そこに立っていたのは、人間の姿をした我だった。


 アジ・ダハーカが、確かに我であると。

 そう――彼女に証明するための姿。


 だが、その瞬間、恐怖が胸を締めつけた。

 もし、我が竜であると知ったことで、クルサが我から遠ざかったら――。


「あ……あぁ……」


 次の瞬間――

 彼女の瞳に溜め込まれていたものが、堰を切ったように溢れ出す。

 一滴、二滴。

 涙は頬を伝い、地面へと落ちた。


 その雫が弾けた、その刹那――


 ダッ――


「オリオン!!!」


 叫びと同時に、彼女は我へと飛び込んできた。

 両腕で、強く、強く抱きしめる。


「オリオン……オリオン……オリオン……」


 震える声で、何度も、何度も。


「オリ……オン……本当に……本当に、よかった……」


 嗚咽混じりに、クルサはそう告げた。


 ――ああ。


 我もまた、同じ想いだった。

 その小さな身体を、そっと、だが確かに抱き返す。


 壊してしまわぬように。

 この温もりを、失わぬように。



 その頃、周囲の者たちは皆、アジ・ダハーカとクルサースパ……否、オリオンとクルサが抱き合う異様な光景に、思わず手を止めていた。

 異形たちは皆、主が幸せそうにしている様子を見届けながらゆっくりと静かに魔界へと帰っていった。

 他の者の視線は一斉にそこへ集まり、誰もが立ち尽くす。


 当然、その中にロキもいた。

 彼は目を見開き、呆然と二人を見つめる。

 憎しみが、怒りが溢れてきていた。

 ――受け入れられるはずがない。

 クルサが竜を殺し、新世界を再び目指す道も、

 もしくは、竜がクルサを殺し、世界の最後を見届ける道も、

 どちらも失う結末など、あっていいはずがなかった。

 

 ――今までの全てが無駄になる。


 一瞬、剣を握ろうと指が動く。

 だが、その手はすぐに止まった。

 受け入れられない。

 それでも――ここで動いたところで、未来は見えなかった。


 ベルゼブブとの戦いで魔力は尽き、仮にヘラクレスを殺して力を得たとしても、魔族化して戦ったとしても、アジ・ダハーカ(オリオン)に勝てる光景が思い浮かばない。

 

 ロキは拳を強く握り締め、やがてゆっくりと背を向ける。


「ゼーロ、アスモデウス。行くぞ」


「ん?行くとはどこにかのぉ?」


「どこですかぁ~?」


 タッ、タッ。


「さぁな」


 そう言い残し、黒翼の三人は静かにその場を後にした。



 オリオンとクルサは、しばらくの間、言葉もなく抱き合っていた。

 聖なる儀式において、幾度となくこの少女の身体を抱いたはずだというのに――なぜだろう。あのときよりも、今のほうがはるかに温かく感じられた。


 クルサがようやく泣き止んだと判断し、我はそっと身を離そうとする。

 だが、彼女は離れようとしなかった。


 無言のまま胸に顔を押し当て、我が胸元に頭をうずめる。

 我は小さく息を吐き、離すことを諦めたまま、周囲へと視線を巡らせた。


 ――来る。


 魔眼が、遠方から近づく者たちの存在を捉える。

 我が人の姿へと戻ったことで、あれほど世界を満たしていた強大な魔気は、一瞬にして消え失せた。

 生き延びた者たちが、何が起きたのかを確かめようと集まってくるのも無理はない。


 これまでの我であれば、即座に臨戦態勢に入り、すべてを屠っていただろう。

 だが今は――この温もりに、身を委ねていたい。


 やがて、その場に二人の男が姿を現す。

 先に歩み寄ってきたのは、ゼノンだった。


「おい、Gクラス。てめぇ……人間じゃなくて、竜だったのかよ」


 両手をポケットに突っ込み、Aクラスリーダーは軽い口調で言い放つ。

 その言葉を意に介することなく、我は静かに口を開いた。


【ゼノン……貴様に頼みがある】


「あっ?」


【ここに我の抜け殻を残す。貴様が我を討ち取ったことにし、これから来る者どもを説得しろ】


 我は世界を蹂躙した。

 おおよそ三分の一は破壊し尽くしたと言っていい。

 その竜が、理由もなく忽然と姿を消せば、生き残った者たちは恐怖に駆られ、我を探し回るだろう。


 だが――

 「討たれた」となれば話は別だ。

 世界は我が死んだと誤解し、追われることもなくなる。


 遠くから人の気配を感じ取ったのか、ゼノンは舌打ちし、頭を掻きながら言った。


「……チッ、野次馬共が集まってきたのか。それに最底辺の雑魚だと思っていた奴があんな馬鹿でけぇ竜だとか調子狂うぜ。強さは認める。で?メリットはあんのか?」


【メリットは我に貸しができることだ。我の仲間を貴様に一体預ける。可能な限り答えよう。それと貴様が今から英雄となることだ】


「はっ、いいぜ。どうせ今のままじゃ勝てねぇことくらい分かるからな。どっかの都市で数年修行したら一騎討ちを申し込む。その時、テメェは絶対に受けること、これが条件だ」


 ゼノン。こやつは今もなお、無傷。

 分かってはいたことだが、Aクラスリーダーというのは伊達ではないようだ。

 ジークフリートは死に、かつての天敵であったクルサは、今や守るべき存在となった。戦いで心の底から楽しませてくれる強者は、もういないと思っていたが……。


 ――これは、楽しみだ。


【待っているぞ。ゼノン】


 次に、我は隣に立つシリウスへと声をかけた。


【シリウス。貴様にも我の仲間を預ける。約束の手前、黒翼の敵討ちがしたいのであれば協力は惜しまない。だが、数年は待て。我も、時間が欲しいのだ。クルサと共に過ごす時間を】


 シリウスは戸惑いながらも、静かに頷いた。


「オリオン君。君の事情は、僕には到底理解できそうもない。けれど……今の君は、これまでで一番輝いているよ」


 その言葉を聞き、我は自らの爪で皮膚を裂く。

 そこから二体の異形を解き放ち、ゼノンとシリウスに託すと――

 我はクルサを抱いたまま、翼を生やし、その場を後にした。


……



 ヒュ~。



 あれから、数日が経っていた。

 シリウスからの報告によれば、ゼノンはアジ・ダハーカを討ち取った英雄として、生き延びた人々から称えられているという。


 突如現れたジークフリート、そしてGクラス担任であったハルク(ヘラクレス)は命を落とし、すでに埋葬されたらしい。

 ジークフリートに関しては、今なお我にも分からぬ点が多い。

 確かに殺したはずだったが――最後の最後まで、侮れぬ強者だった。


 シリウスとカイザーは合流し、マイラと共に街を転々と移動しているとのこと。

 黒翼を追っているわけではなく、しばらくは三人で旅を続けるらしい。

 復讐に費やしてきた時間を取り戻すように、世界を渡り歩きたいのだという。


 それぞれが、それぞれの道を選ぶ中――。


 我とクルサは、聖都市からも、最後に戦った地からも離れた山に身を置いていた。

 異形たちに近くの木々を伐らせ、小さな小屋を建てさせる。

 そこで、二人だけの静かな時間を過ごしている。


 今は、巨大な岩に並んで腰を下ろし、沈みゆく夕日を眺めていた。

 オレンジ色に染まる空。

 ゆっくりと流れる雲。


 これまでが忙しすぎる日々だったせいか、時の流れさえも、ここでは穏やかに感じられる。


 我はクルサの隣で、久しぶりに弁当を口にしていた。


【やはり、貴様の弁当はうまい】


 この量を作れる料理の腕前は、普段から弁当を用意していたことに加え、父が料理人で、教えを受けていたからだという。


 なお、クルサの家族――父と妹についてだが、二人とも聖都市にはいなかった。

 我が初めてクルサの家を訪れた際、写真を見せられながら説明を受けている。


 我は世界の三分の一を破壊したが、彼女の家族だけは異形たちに守らせていた。

 当時の我に自覚はなかったが、今思えば、その時点ですでに――

 クルサの悲しむ顔を見たくない、失いたくないと考えていたのかもしれん。


 つまり、二人は今も生きている。

 我らがここにいることもすでに報告済みで、いずれ訪れるという。

 もっとも、我が竜であることは話していない。


 クルサが特別なのであって、普通の人間であれば、

 我が竜だと知った瞬間、恐怖して気絶するだろう。


「ありがと」


 クルサは嬉しそうに微笑み、そっと我の肩に頭を預けてくる。

 そして、静かに問いかけた。


「ねぇ……これから、どうするの?」


 我は箸を弁当箱の上に置き、夕日を見つめたまま、言葉を探す。


【……分からん。貴様にとって我はオリオンという人間であろうが、我にとって我は、アンリマユ様に生み出されしアジ・ダハーカだ。これまでは主の願いを叶えるべく世界を破壊するために動いてきたが、今は何も目的がない】


「そっか」


 そう言って、クルサは姿勢を正した。

 我の手を取り、指を絡めながら、再び夕日のほうへと身体を向ける。


「ゆっくりでいいと思う。確かにね、私にとってオリオンはオリオン。千年前の竜だなんて、正直……今でも信じきれてない」


 クルサは、小さく笑った。


「でも、あなたの知らなかった一面を知れたみたいで……今は、嬉しいよ。私はね、オリオン。あなたが人間でも、恐ろしい竜だったとしても――」


 そこで、彼女は顔を横に向けた。

 我はそれに気づき、思わず視線を合わせる。

 彼女の瞳の奥に、我が映っていた。


「私は、あなたの隣に居たい」


 胸が、強く打たれる。


「……呪いに侵されていたとはいえ、あなたを二度も殺そうとした私が言うのも、変なんだけどね」


 それでも、と彼女は続けた。


「私は、あなたと一緒に居たい。いい……かな?」


 首をわずかに右へ傾け、微笑む。

 夕日に照らされたその表情は、息を呑むほどに美しかった。


 その瞬間、我の三つの心臓が、強く、激しく跳ねた。

 クルサを“大切な存在”だと認識してからというもの、

 この少女の顔を見るたび、鼓動は制御を失う。


【あっ……あぁ】


 正面から見つめ続けることができず、

 我はわずかに視線を逸らしながら、そう答えた。


「うん」


 我はこの選択――

 主の願いを叶えず、自分が後悔しない道を選んだ。


 ならば、せめて――。


【……子供が、欲しい】


 アンリマユ様は、我の子を見たがっていた。

 どうやって作るのかは未だに分からぬが、

 我が子を創れば、どこかにいる主が喜ぶやもしれん。


 一瞬、空気が凍る。


 ボンッ! バフッ――。


 次の瞬間、クルサの頭が沸騰したかのように、

 我の胸へと勢いよく押し付けられる。


「……っ!? ちょ、ちょっと待って!! それ……本当?」


【貴様に嘘はつかん。そういう約束だ】


 破れば、また弁当が減ってしまうからな。


 そう考えていると、彼女は我の胸元で小さく身を震わせ、

 やがて、抑えきれない声を零した。


「……うれしい……すごく、うれしい。私も欲しい!」


 ……?

 クルサ……も?


「はぁ~……」


 妙に甘い吐息を吐いている。

 よく分からんが、クルサが嬉しそうなら、それでいいだろう。


【そうだな】


「♡」


 ……。


 再び沈黙。

 我が答えると、クルサは口を小さく開けたまま固まっていた。


 動かぬため、よく見ると――

 両目が、ハートの形になっている。


「ごめん。私、我慢できない」


 彼女は我の手を掴み、その場から立つよう促し、

 そのまま引っ張って歩き出した。


【どこに行くのだ】


「小屋……」


 ……まったく、こやつは。


 それにしても――


 クルサが我を竜だと信じきれないように、

 我もまた、この状況が未だに信じられん。


 世界を破壊しようとしていた我が、

 貴様を壊したくないがために主の願いを退け、

 今や、貴様との未来を望んでいるのだから。

 


 ずっと。

 ずっと。





 ずっと。


 ・

 ・

 ・ 

 ・

 

 この”物語”はこうして、幕を閉じじじじじじじじーーーーーーーー

 

 ♡

 ♡

 ♡

 ♡


 クルサは、我にとって大切な存在だ。

 だからこそ彼女の要望に応え、聖なる儀式を毎日のように執り行っているのだが――。


 最近、どうにも体が重い。


 パン パン パン


「ちゅっ……ちゅ、ちゅちゅちゅ♡」


【クルサ……少し、休ま――】


「まだ、できるでしょ?」


【だが、これで五発――】


「できるよね?」


 彼女は我の上に馬乗りになり、両目は完全に♡。

 大きく揺れる谷間と共に、容赦なく迫ってくる。


【あっ……あぁ】


「♡」


 そこからも続いた。

 長い、長い、聖なる儀式が。


 

 

 アンリマユ様、


 我はクルサの愛が重すぎて困っています。

 


          終



 あとがき


 これにて終焉転生は本当に終了します!

 ここまでお読みくださった読者の皆様、本当にありがとうございました。

 

 ・神話の終わり方、終末。

 ・神話の逆の終わり方、終焉。

 ・そして、今までの出来事があったからこそできた、未来。

 

 この物語の終わり方は、三つあり、どれも最終話という感じです。

 

 ちょうど主人公アジ・ダハーカの頭が三つあったので、

 終わり方も三つあってもいいんじゃないか?いや、なんかいいな!と思い、

 書き始めましたw

 めちゃくちゃなスタートで、最後は決まっているけど、それまでが思いつかない!あぁー!!!どうしよー!!!と考える日々でしたw

 それで投稿するまでに時間が掛かっていたという訳です……。 

 申し訳ございませんでした。


 何はともあれ、大変でしたが、これで二作品目を完結させることができました。

 やはり、物語を作るのは楽しいものです。

 気が向いたら、続きが気になっていそうな人物たちのSSを書こうと思います。

 何度か、完結、連載、完結!みたいな通知があるかもしれませんw

 物語はこれで終わりですのでご安心を!

 まぁ~オリオンとクルサの営みは~永遠ですw 

 何人家族になったのかは読者様の想像にお任せます!


 この物語で読者様に伝えたいことは、この【 未来 】でオリオンとクルサが言っています。

 少しでも伝わって、誰かの胸に届いたら嬉しいです。


 三作品目はこれ以上に面白い作品を、

 これ以上に読者様がなんじゃそりゃー!!!と倒れてしまうような作品を届けます!

 新作作成中!!!フォローして頂けると励みになります!

 改めまして、この作品を読んでくださり、誠にありがとうございました。


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